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地獄の言い争い
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アンリカが、少しづつ、ハーリスとの関係性を深めていたころ。
エイリャーン家は、爵位を没収され、多額の借金を抱えることとなっていた。
ビアールは、強いストレスからくる自立神経の不調によって、倒れてしまい、ベッドから起き上がることができない。
そんな中……。またしても、醜い争いが、エイリャーン家の一室で、繰り広げられていた。
「あなたは娼婦になりなさい!」
「お母様が娼婦になるのです!」
貴族の会話とは思えない、酷い内容である。
とはいえ、爵位を没収され、借金を抱えている以上、もはや、没落貴族とすら言えない状況ではあるが。
「良い? 娼婦というのは、若さが一番重要視されるの! あなたこそ、娼婦にふさわしいわ!」
「いいえ! お母様のように、自分の欲を発散するべくして、浮気を繰り返すような女こそ、娼婦がふさわしいはずですわよ!」
「あなたよ!」
「お母様です!」
「あ、あの。お二人とも。あと一時間で、立ち退きなのですが……」
「「メイドは黙ってなさい!」」
「は、はいぃい……」
アンリカがいなくなり、次のメイド長となるはずだった、ミューシーは、すでに隣国の伯爵家で、働くことが決まっていた。
せめて、雇用期間だけでも、職務を全うしようと、わざわざ残ってくれているのに、この仕打ちである。
呆れたように、ミューシーは、去ってしまった。
なので、この醜い争いは……。
立ち退きを宣告する役所の人間が訪れるまで、続くのだろう。
「ミリス。あなたは、体だけは立派な女よ。娼婦になれば、すぐに借金を完済できるほど、稼ぐことができるようになるはずだわ」
「そんなことはございません。令嬢よりも、伯爵家の奥様の方が、きっとネームバリューは強いはずですわ」
「嫌よ。そんなものに惹かれて、指名するような男は」
「それを言うなら、私だってそうです! 未だ経験も無いのに!」
「そうじゃない! あなた、処女なのだから、付加価値が増すわよ! もう絶対あなたがいいわ! さっさと娼婦の館に行きなさい!」
「実の娘に、そんなことを言って、恥ずかしくないのですか!?」
「あなたこそ! 実の母が、娼婦の館で働くことを、許容できるっていうの!?」
聞くに堪えない、酷い会話。
なぜ、頭を下げ、一からやり直すという発想が、彼女たちには、無いのだろうか。
注意してくれるような、執事やメイドは、とっくにこの家を離れている。
「……二人とも、何を騒いでいるんだい?」
ビアールが、数日ぶりに、ベッドから這い出てきた。
二人の声が大きすぎて、我慢ならなかったのだろう。
「ちょうどいいところに来たわ。ねぇビアール。私よりも、ミリスが娼婦になるべきよね?」
「……え?」
「お父様! なんとか言ってください! 絶対に、お母様が、娼婦になるべきだと、私は思いますわ!」
「……」
ビアールは、会話の内容にショックを受け、倒れてしまった。
二人は、そんなビアールを気にすることも無く、罵り合いを再開。
……結果、立ち退きを言い渡すために、やってきた役所の人間が、無理矢理彼女たちを引き剥がすまで、無意味な言い争いは、続いたそうだ。
エイリャーン家は、爵位を没収され、多額の借金を抱えることとなっていた。
ビアールは、強いストレスからくる自立神経の不調によって、倒れてしまい、ベッドから起き上がることができない。
そんな中……。またしても、醜い争いが、エイリャーン家の一室で、繰り広げられていた。
「あなたは娼婦になりなさい!」
「お母様が娼婦になるのです!」
貴族の会話とは思えない、酷い内容である。
とはいえ、爵位を没収され、借金を抱えている以上、もはや、没落貴族とすら言えない状況ではあるが。
「良い? 娼婦というのは、若さが一番重要視されるの! あなたこそ、娼婦にふさわしいわ!」
「いいえ! お母様のように、自分の欲を発散するべくして、浮気を繰り返すような女こそ、娼婦がふさわしいはずですわよ!」
「あなたよ!」
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「あ、あの。お二人とも。あと一時間で、立ち退きなのですが……」
「「メイドは黙ってなさい!」」
「は、はいぃい……」
アンリカがいなくなり、次のメイド長となるはずだった、ミューシーは、すでに隣国の伯爵家で、働くことが決まっていた。
せめて、雇用期間だけでも、職務を全うしようと、わざわざ残ってくれているのに、この仕打ちである。
呆れたように、ミューシーは、去ってしまった。
なので、この醜い争いは……。
立ち退きを宣告する役所の人間が訪れるまで、続くのだろう。
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「そんなことはございません。令嬢よりも、伯爵家の奥様の方が、きっとネームバリューは強いはずですわ」
「嫌よ。そんなものに惹かれて、指名するような男は」
「それを言うなら、私だってそうです! 未だ経験も無いのに!」
「そうじゃない! あなた、処女なのだから、付加価値が増すわよ! もう絶対あなたがいいわ! さっさと娼婦の館に行きなさい!」
「実の娘に、そんなことを言って、恥ずかしくないのですか!?」
「あなたこそ! 実の母が、娼婦の館で働くことを、許容できるっていうの!?」
聞くに堪えない、酷い会話。
なぜ、頭を下げ、一からやり直すという発想が、彼女たちには、無いのだろうか。
注意してくれるような、執事やメイドは、とっくにこの家を離れている。
「……二人とも、何を騒いでいるんだい?」
ビアールが、数日ぶりに、ベッドから這い出てきた。
二人の声が大きすぎて、我慢ならなかったのだろう。
「ちょうどいいところに来たわ。ねぇビアール。私よりも、ミリスが娼婦になるべきよね?」
「……え?」
「お父様! なんとか言ってください! 絶対に、お母様が、娼婦になるべきだと、私は思いますわ!」
「……」
ビアールは、会話の内容にショックを受け、倒れてしまった。
二人は、そんなビアールを気にすることも無く、罵り合いを再開。
……結果、立ち退きを言い渡すために、やってきた役所の人間が、無理矢理彼女たちを引き剥がすまで、無意味な言い争いは、続いたそうだ。
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