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魔族であるということ
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「大丈夫……?」
「……」
私はマルキ―に手を握られながら、ベッドで横になっていた。
食べすぎた胃を癒す魔法は、残念ながら存在しない。
人の四肢が切り離されようと、元の状態に戻すことができる聖女であっても、これにはかなわないのだ。
「ごめんね?久々に張り切って、作りすぎちゃって……」
「あなたのせいではありません。私が……。情けないのです」
「カリアナは、すぐに自分を責める癖があるよ。もっと、周りの人を頼って?」
「人……ですか」
「あ、そっか。今は魔族だよね……。えへへ」
その笑顔は、まるで人間そのものだった。
……思えば、笑顔というものを、真正面から向けられるのも、久しぶりかもしれない。
「あのねカリアナ。デリッサのことについてなんだけど」
「……聞きたくありません」
「いいよ。さっきみたいに、聞き流してくれれば」
この子は……。話すのが好きなのかな。
それとも、私の心をかき乱すため?
なんにせよ、この状態では、身動きが取れない。聞く他ないだろう。
「目覚めた時、私は絶望したの。ネクロマンサーのことなんて知らないし、これから魔族になって、奴隷として働かされるんだって」
マルキ―は静かな口調で話し始めた。
「でも、違った。カリアナもそろそろ気が付いたでしょう?この城には――。私たちしか、いないの」
確かに、言われてみればそうだ。
魔王の幹部の城というくらいなのだから、もっとうじゃうじゃ魔族がいても、おかしくないのに。
「デリッサは、他の魔族とは違う。孤立した勢力なの」
「しかし、彼は言っていました。この私が閉じ込められてしまった体――。エルフの体は、低級魔族のおもちゃとして提供するため、作り出したと。孤立しているとはいえ、魔族は魔族です」
「それは、他の魔族との関係を悪化させないためにやっていることだよ。……デリッサだって、本当はそんなこと、したくない。そもそも、魔王軍の幹部になるような人が……。今更、体を作り間違えるなんてこと、あると思う?」
マルキ―が、真っすぐ視線をぶつけてきた。
「……きっと、聖女の魂を入れるため、その体を作ったんだよ」
「だとすれば、より悪質です。……こんな戦闘能力の高い体で、人間を殺させようだなんて」
魔王軍の兵として、働いてほしい。
彼はそう言っていた。
「結局魔族は、人間を駆逐することしか考えていないのですよ。私たちは、その駒にすぎません。マルキ―、あなたはそれでもかまわないと言いましたが、私はそうではありません。聖女です。魔王軍の兵なんて……。絶対嫌」
「……デリッサから、聞いたよ。人間に、酷い扱いをされたんでしょう?どうしてそれでも、まだ守ろうとするの?」
「それが使命だからです」
「……そっか」
マルキ―が、静かに私の手を離した。
「私は、カリアナのこと、仲間だと思ってる。一緒に――。人間を殺したい」
「あなたは兵に殺された。兵にだけ恨みを持てばいいはず。なぜ人間全体に、恨みを」
「魔族だから」
「……やはり、おかしいです。憎悪に操られています」
「人間だって、等しく魔族を殺すよ。それと何も変わらない。カリアナも――わかる時が来るから」
……わかるわけがない。
確かに私は、兵を衝動的に殺してしまったという事実がある。この恨みは、もはや無視できない。
だけど、他の国の民はどうだろうか。子供たちは……。
そんなことを考えていたら、眠ってしまっていた。
「……」
私はマルキ―に手を握られながら、ベッドで横になっていた。
食べすぎた胃を癒す魔法は、残念ながら存在しない。
人の四肢が切り離されようと、元の状態に戻すことができる聖女であっても、これにはかなわないのだ。
「ごめんね?久々に張り切って、作りすぎちゃって……」
「あなたのせいではありません。私が……。情けないのです」
「カリアナは、すぐに自分を責める癖があるよ。もっと、周りの人を頼って?」
「人……ですか」
「あ、そっか。今は魔族だよね……。えへへ」
その笑顔は、まるで人間そのものだった。
……思えば、笑顔というものを、真正面から向けられるのも、久しぶりかもしれない。
「あのねカリアナ。デリッサのことについてなんだけど」
「……聞きたくありません」
「いいよ。さっきみたいに、聞き流してくれれば」
この子は……。話すのが好きなのかな。
それとも、私の心をかき乱すため?
なんにせよ、この状態では、身動きが取れない。聞く他ないだろう。
「目覚めた時、私は絶望したの。ネクロマンサーのことなんて知らないし、これから魔族になって、奴隷として働かされるんだって」
マルキ―は静かな口調で話し始めた。
「でも、違った。カリアナもそろそろ気が付いたでしょう?この城には――。私たちしか、いないの」
確かに、言われてみればそうだ。
魔王の幹部の城というくらいなのだから、もっとうじゃうじゃ魔族がいても、おかしくないのに。
「デリッサは、他の魔族とは違う。孤立した勢力なの」
「しかし、彼は言っていました。この私が閉じ込められてしまった体――。エルフの体は、低級魔族のおもちゃとして提供するため、作り出したと。孤立しているとはいえ、魔族は魔族です」
「それは、他の魔族との関係を悪化させないためにやっていることだよ。……デリッサだって、本当はそんなこと、したくない。そもそも、魔王軍の幹部になるような人が……。今更、体を作り間違えるなんてこと、あると思う?」
マルキ―が、真っすぐ視線をぶつけてきた。
「……きっと、聖女の魂を入れるため、その体を作ったんだよ」
「だとすれば、より悪質です。……こんな戦闘能力の高い体で、人間を殺させようだなんて」
魔王軍の兵として、働いてほしい。
彼はそう言っていた。
「結局魔族は、人間を駆逐することしか考えていないのですよ。私たちは、その駒にすぎません。マルキ―、あなたはそれでもかまわないと言いましたが、私はそうではありません。聖女です。魔王軍の兵なんて……。絶対嫌」
「……デリッサから、聞いたよ。人間に、酷い扱いをされたんでしょう?どうしてそれでも、まだ守ろうとするの?」
「それが使命だからです」
「……そっか」
マルキ―が、静かに私の手を離した。
「私は、カリアナのこと、仲間だと思ってる。一緒に――。人間を殺したい」
「あなたは兵に殺された。兵にだけ恨みを持てばいいはず。なぜ人間全体に、恨みを」
「魔族だから」
「……やはり、おかしいです。憎悪に操られています」
「人間だって、等しく魔族を殺すよ。それと何も変わらない。カリアナも――わかる時が来るから」
……わかるわけがない。
確かに私は、兵を衝動的に殺してしまったという事実がある。この恨みは、もはや無視できない。
だけど、他の国の民はどうだろうか。子供たちは……。
そんなことを考えていたら、眠ってしまっていた。
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