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呪いの始まり
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「全く! なんてことはありませんね!」
「ふふっ。その通りだよ」
サイモンがクレアとの婚約を破棄した翌日の夕方。
二人は王宮の食堂で食事をしていた。
「呪いなんて、やっぱり嘘です。あの不気味な魔女の嫌がらせだったのでしょう」
今のところ、二人に目だった呪いの効果は表れていなかった。
……昨日のように、よく躓く程度である。
しかし、食事を進めていたところ――事件は起きた。
「うぅ……」
「どうしたんだいレオナ。顔色が悪いみたいだけど……」
「い、いえ。大丈夫です」
「そうかい……?」
レオナの様子は、明らかにおかしかった。
びっしょりと油汗をかき、顔色は青ざめている。
(どうしてかしら……。酷い腹痛が……)
突然、腹痛が襲い掛かってきたのだ。
しかし、王宮の食堂にて振る舞われた料理で食あたりを起こしたなど、恥ずかしくて言えるはずがない。
元よりプライドの高いレオナは、誰かを頼ることができなかった。
「もしかして……。口に合わなかったとか?」
「全くそのようなことはございません。とっても美味しいです」
「う~ん……」
サイモンの疑いを晴らすために、レオナは必死で食事を続けた。
すでに、腹痛は限界を超えそうなレベルに達している。
「うぅ……ふっ……」
とうとう歯を食いしばり始めたので、サイモンは執事を呼んだ。
薬草などに詳しい、王家専属の治療師が現れ、レオナの症状を目視。
……調べるまでもなく、見るからに腹痛を起こしていることは明らかだ。
腹を抑え、苦しんでいるのだから。
治療師は無言で、レオナに薬草を溶かした飲み物を手渡した。
「……ありがとうございます」
さすがに耐え切れなかったのか、レオナはすぐにそれを飲み干した。
それで楽になるかと思ったが……。
これは『魔女の呪い』の効果である。
薬草の効果など、ほとんど無いと言ってよかった。
「くぅううう……!」
「レ、レオナ。もういいから。部屋で休んでくれ」
「だい、大丈夫……っですっ……」
テーブルの上のフォークに必死で手を伸ばし、肉を切り分ける。
その時だった――。
ぴちゃぴちゃと、水の音が響く。
床に……茶色の何かが垂れていた。
「……」
「あっ……ひぅ……」
レオナは顔を真っ赤にして、俯いている。
サイモンは再び執事に耳打ちをした。
数人のメイドが現れて、顔をしかめながら掃除を始める。
顔を伏せたままのレオナを連れて……部屋を出た。
「驚いたよ……」
執事と二人きりになったところで、サイモンは呟いた。
「ここまで酷くなる前に、言ってくれれば良かったのに」
サイモンは自室に戻ろうとした。
しかしそこに、血相を変えた別の執事がやってきた。
「どうしたんだい? そんなに慌てて」
「……工場が崩れました!」
「……え?」
魔女の呪いは、まだ始まったばかりである。
「ふふっ。その通りだよ」
サイモンがクレアとの婚約を破棄した翌日の夕方。
二人は王宮の食堂で食事をしていた。
「呪いなんて、やっぱり嘘です。あの不気味な魔女の嫌がらせだったのでしょう」
今のところ、二人に目だった呪いの効果は表れていなかった。
……昨日のように、よく躓く程度である。
しかし、食事を進めていたところ――事件は起きた。
「うぅ……」
「どうしたんだいレオナ。顔色が悪いみたいだけど……」
「い、いえ。大丈夫です」
「そうかい……?」
レオナの様子は、明らかにおかしかった。
びっしょりと油汗をかき、顔色は青ざめている。
(どうしてかしら……。酷い腹痛が……)
突然、腹痛が襲い掛かってきたのだ。
しかし、王宮の食堂にて振る舞われた料理で食あたりを起こしたなど、恥ずかしくて言えるはずがない。
元よりプライドの高いレオナは、誰かを頼ることができなかった。
「もしかして……。口に合わなかったとか?」
「全くそのようなことはございません。とっても美味しいです」
「う~ん……」
サイモンの疑いを晴らすために、レオナは必死で食事を続けた。
すでに、腹痛は限界を超えそうなレベルに達している。
「うぅ……ふっ……」
とうとう歯を食いしばり始めたので、サイモンは執事を呼んだ。
薬草などに詳しい、王家専属の治療師が現れ、レオナの症状を目視。
……調べるまでもなく、見るからに腹痛を起こしていることは明らかだ。
腹を抑え、苦しんでいるのだから。
治療師は無言で、レオナに薬草を溶かした飲み物を手渡した。
「……ありがとうございます」
さすがに耐え切れなかったのか、レオナはすぐにそれを飲み干した。
それで楽になるかと思ったが……。
これは『魔女の呪い』の効果である。
薬草の効果など、ほとんど無いと言ってよかった。
「くぅううう……!」
「レ、レオナ。もういいから。部屋で休んでくれ」
「だい、大丈夫……っですっ……」
テーブルの上のフォークに必死で手を伸ばし、肉を切り分ける。
その時だった――。
ぴちゃぴちゃと、水の音が響く。
床に……茶色の何かが垂れていた。
「……」
「あっ……ひぅ……」
レオナは顔を真っ赤にして、俯いている。
サイモンは再び執事に耳打ちをした。
数人のメイドが現れて、顔をしかめながら掃除を始める。
顔を伏せたままのレオナを連れて……部屋を出た。
「驚いたよ……」
執事と二人きりになったところで、サイモンは呟いた。
「ここまで酷くなる前に、言ってくれれば良かったのに」
サイモンは自室に戻ろうとした。
しかしそこに、血相を変えた別の執事がやってきた。
「どうしたんだい? そんなに慌てて」
「……工場が崩れました!」
「……え?」
魔女の呪いは、まだ始まったばかりである。
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