婚約破棄は受け入れますが、呪いが発動しますよ?

冬吹せいら

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伯爵家――崩壊

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「いやぁああ!」

 レオナが自室で、大声で叫んだ。

「いかがされましたか! お嬢様!」

 すぐにメイドがやってきて、ドアを開けると……。

 大きな鏡が、砕け散っていたのだ。

「嘘でしょう……? あんなにお金を出して買ったのに」
「お怪我はありませんか?」
「えぇ……。私が部屋に入った時には、すでに……」
「……侵入者でしょうか」
「まさか。そんなことはありえません。何人護衛のモノが屋敷中を見回っていると?」
「そうですが……」

 レオナは自分で言ったあと、理解した。
 間違いない……。呪いのせいだ。

 腹痛により、サイモンの前で醜態を晒した後、人気の無い川辺で体を洗い、自室に戻ってきた途端この状況。
 どう考えても、呪いの影響としか思えない。

「……あの魔女はどこに?」
「すぐに探します」
「早くしてください!」

 レオナは怒鳴ったあと、部屋にあったカップを思いっきり壁に投げつけた。
 
「痛っ……」

 『不運』なことに、飛び散った破片が、レオナに向かって飛んできたのだ。
 指を軽く切ってしまい、血が滲む。

「おかしい……。あまりにも不運すぎます!」

 ようやく魔女の呪いの恐ろしさを知ったレオナ。
 しかし、すでに手遅れである。

「……レオナ。ちょっと良いかな」
「お、お父様!?」

 レオナの部屋を父である当主が訪れた。
 非常に沈んだ表情をしている。
 まるで――全て失ったかのような。

「どうされたのですか?」
「……伯爵家は、もうダメかもしれない」
「えぇ!? な、なぜですか!」
「不運なことが重なったんだ。説明しきれないほどに、不運なことが……」

 当主は空っぽの布袋を逆さにしてみせた。

「この袋と――。今の伯爵家の財産は、同じ状況だ」
「そんな――」

 レオナはその場に崩れ落ちた。
 
「すまない……。僕にもっと力があれば……」
「大丈夫ですお父様! 私はサイモン様と婚約をしたのですから! きっと助けてもらえます!」
「……どうだろうか」
「きっと大丈夫です!」

 父を勇気付けるため、レオナは部屋を跳び出した。

「馬車は! 馬車は出ないの?」

 大声で叫ぶが、誰も反応しない。
 どうやらすでに、伯爵家がどうにもならないであろうことを察した使用人が、大慌てで逃げ始めたらしい。
 
「ちょっと貴方! 待ちなさい!」
 
 逃げ遅れたメイドを捕まえ、馬車の用意をさせようとする。
 しかし、馬すらもすでに使用人によって奪われていた。

「くっ……。歩いて王宮まで行けって言うんですか!?」

 プライドの高いレオナにとって、歩いて移動するということは苦痛でしかなかった。
 それでも――家を救うためには、自ら動くしかない。

 仕方なく、徒歩で王宮に向かうことにした。
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