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侯爵令嬢の末路
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「な、なんだって……!?」
愕然とするサイモン。
しかし、すぐに同じように立ち上がり、パルメスに指を差した。
「しかし! これは僕のサインだ! 父上のサインでなければ、効力は発揮されないはず!」
「ふふっ。どうやら文字をまともに習っていないというのは本当みたいですね」
「なにぃ?」
「ここには、国王の代わりに王子がサインをする……。と、書いてあります。よってこの紙は有力です」
「……まぁいい。そこまではわかった。しかしその程度の紙で、国が動くと思うのか?」
「動きますよ。――工場が潰れた今であればね」
サイモンは悔しそうに唇をかみしめた。
「呪いを解いてくれるのではなかったのか!」
「騙されるバカが悪いのです! これでこの国は我が公爵家のもの! あなたたちバークレオ家は、とっとと王宮から出ていくのです!」
「くそぉおお!!!」
サイモンの叫び声が、公爵家に響き渡った。
◇
「……この状況は、一体」
それから少しして、クレアとリスターが国に到着した。
大きな工場が潰れている上、街中では伯爵家崩壊の噂がちらほらと広まっている。
「どうやら、呪いの力は偉大みたいだ」
自身の幸せと照らし合わせて、相当きつい不幸が両家に襲いかかっていることは、多少予測していたクレアだったが……。
まさかこんなに短時間で、ここまでの被害が出るとは思っていなかった。
「とりあえず、王家に向かった方がいいでしょうね。挨拶もしなければいけないので」
「そうですね……」
「おっと。しまったなぁ。突然だったから、何も渡すものを持ち合わせていない……。せめてフルーツか何か持っていくものを買わないと」
クレアとリスターは、商店が並ぶ通りへと向かった。
「……え」
その道中、牛舎が目に入る。
こんな街中に牛舎があるというのも、リスターには見せたくない事実だったが、そこはしょうがない。
問題は――そこにいた人物。
「……レ、レオナ様?」
顔を真っ赤にして、脂汗をかきながら泣き叫んでいるため、別人に見えるが……。
よく見るとそれは、レオナだったのだ。
「お手上げだよ。何も答えちゃくれない」
牛舎を管理している男が、両手を挙げて降参の意を示した。
「さっきここにやってきたんだ。牛の糞を捨てる場所に……ね。そこでず~っと糞尿を垂れ流してる。見ての通り、泣き叫びながら」
「おおおおぉっ! ううぉおお!」
「……リスター様。申し訳ございません。うっかり足を止めてしまって」
「あ、あぁ……」
リスターは、この泣き叫んでいる女が、件の令嬢であることを理解して、すぐに目を背けた
愕然とするサイモン。
しかし、すぐに同じように立ち上がり、パルメスに指を差した。
「しかし! これは僕のサインだ! 父上のサインでなければ、効力は発揮されないはず!」
「ふふっ。どうやら文字をまともに習っていないというのは本当みたいですね」
「なにぃ?」
「ここには、国王の代わりに王子がサインをする……。と、書いてあります。よってこの紙は有力です」
「……まぁいい。そこまではわかった。しかしその程度の紙で、国が動くと思うのか?」
「動きますよ。――工場が潰れた今であればね」
サイモンは悔しそうに唇をかみしめた。
「呪いを解いてくれるのではなかったのか!」
「騙されるバカが悪いのです! これでこの国は我が公爵家のもの! あなたたちバークレオ家は、とっとと王宮から出ていくのです!」
「くそぉおお!!!」
サイモンの叫び声が、公爵家に響き渡った。
◇
「……この状況は、一体」
それから少しして、クレアとリスターが国に到着した。
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まさかこんなに短時間で、ここまでの被害が出るとは思っていなかった。
「とりあえず、王家に向かった方がいいでしょうね。挨拶もしなければいけないので」
「そうですね……」
「おっと。しまったなぁ。突然だったから、何も渡すものを持ち合わせていない……。せめてフルーツか何か持っていくものを買わないと」
クレアとリスターは、商店が並ぶ通りへと向かった。
「……え」
その道中、牛舎が目に入る。
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問題は――そこにいた人物。
「……レ、レオナ様?」
顔を真っ赤にして、脂汗をかきながら泣き叫んでいるため、別人に見えるが……。
よく見るとそれは、レオナだったのだ。
「お手上げだよ。何も答えちゃくれない」
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「さっきここにやってきたんだ。牛の糞を捨てる場所に……ね。そこでず~っと糞尿を垂れ流してる。見ての通り、泣き叫びながら」
「おおおおぉっ! ううぉおお!」
「……リスター様。申し訳ございません。うっかり足を止めてしまって」
「あ、あぁ……」
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