12 / 13
完全勝利
しおりを挟む
「ふふっ……。勝利のワインは格別ね」
「そうですわね。お母様」
パーティの前に、大部屋にてパルメスとイア―ナがワインを嗜んでいた。
現在、執事たちがパーティの参加者を集めるために、街を駆け回っている最中である。
「これからは私たちの時代よパルメス。もっと税を上げて、より豊かな暮らしを目指しましょう」
「楽しみですわ。伯爵家も潰してしまえば、もう私たちに逆らう者もきっといないでしょうし……。隣国の王子など、たかが知れています。公爵家の力を恐れ、逃げ出してしまう哀れな男……ふふっ」
愉快そうに会話を楽しむ二人。
そこへ、執事がやってきた。
「あら。もう集まったの? 早いわね」
「すぐにお逃げになってください!」
「え?」
「漁師たちが――。ここへ襲いかかってきます!」
突然の報告に、二人は顔を見合わせる。
そして、大きな声で笑った。
「これから王家になる公爵家に、どうして喧嘩を売ろと思うのよ」
「その通りですわ。あなたの勘違いでは?」
「ふ、不幸なことに……。漁師のうち一人が、魔力に目覚めたのです」
「……なんですって?」
公爵家にとっては不幸だが、社会にとっては間違いなく幸運な出来事だった。
低賃金で働かされている漁師たちに、光が差したのだ。
◇
「没落どころではないみたいです」
公爵家の外にいた、リスターとクレアの二人。
ずしんずしんと、大きな音を立てながら――。
巨人が、公爵家の屋敷に向かう様を見つめている。
「非常に強い魔力を感じます。……まさに、不幸な出来事と呼ぶべきでしょう」
「その通りですね。いやはや、魔女であるあなたでも、アレを止めるのは苦労するのでは?」
「巨人になりたてですから……。対抗策はあると思います。――もっとも、敵が共通していますから、争う必要もないのですが」
「あっ……」
大きな音を立てながら、屋敷が踏みつぶされた。
その場で足踏みをすることで、あっという間に屋敷は崩壊してしまう。
巨人が小さくなったので、二人は様子を見に行くことにした。
「いやあぁあああぁっ!!!」
酷い叫び声がしたので様子を確認すると……。
パルメスが、涙を流して膝をついていた。
どうやら彼女だけは、間一髪逃げることができたらしい。
「わりぃが、これまであんたらに歯向かって殺された仲間たちもいる。女、子供、老人……。容赦なく殺してきたあんたらに、生きる資格なんてない」
漁師が、パルメスを抱えて、どこかに去って行った。
「……一つだけ、言えることがあるのですが」
「なんでしょうか」
「今夜はきっと、眠れないでしょうね」
「夜という時間は、存在しないでしょう」
少なくとも、王子がここにいてくれて良かったと、クレアは思った。
「そうですわね。お母様」
パーティの前に、大部屋にてパルメスとイア―ナがワインを嗜んでいた。
現在、執事たちがパーティの参加者を集めるために、街を駆け回っている最中である。
「これからは私たちの時代よパルメス。もっと税を上げて、より豊かな暮らしを目指しましょう」
「楽しみですわ。伯爵家も潰してしまえば、もう私たちに逆らう者もきっといないでしょうし……。隣国の王子など、たかが知れています。公爵家の力を恐れ、逃げ出してしまう哀れな男……ふふっ」
愉快そうに会話を楽しむ二人。
そこへ、執事がやってきた。
「あら。もう集まったの? 早いわね」
「すぐにお逃げになってください!」
「え?」
「漁師たちが――。ここへ襲いかかってきます!」
突然の報告に、二人は顔を見合わせる。
そして、大きな声で笑った。
「これから王家になる公爵家に、どうして喧嘩を売ろと思うのよ」
「その通りですわ。あなたの勘違いでは?」
「ふ、不幸なことに……。漁師のうち一人が、魔力に目覚めたのです」
「……なんですって?」
公爵家にとっては不幸だが、社会にとっては間違いなく幸運な出来事だった。
低賃金で働かされている漁師たちに、光が差したのだ。
◇
「没落どころではないみたいです」
公爵家の外にいた、リスターとクレアの二人。
ずしんずしんと、大きな音を立てながら――。
巨人が、公爵家の屋敷に向かう様を見つめている。
「非常に強い魔力を感じます。……まさに、不幸な出来事と呼ぶべきでしょう」
「その通りですね。いやはや、魔女であるあなたでも、アレを止めるのは苦労するのでは?」
「巨人になりたてですから……。対抗策はあると思います。――もっとも、敵が共通していますから、争う必要もないのですが」
「あっ……」
大きな音を立てながら、屋敷が踏みつぶされた。
その場で足踏みをすることで、あっという間に屋敷は崩壊してしまう。
巨人が小さくなったので、二人は様子を見に行くことにした。
「いやあぁあああぁっ!!!」
酷い叫び声がしたので様子を確認すると……。
パルメスが、涙を流して膝をついていた。
どうやら彼女だけは、間一髪逃げることができたらしい。
「わりぃが、これまであんたらに歯向かって殺された仲間たちもいる。女、子供、老人……。容赦なく殺してきたあんたらに、生きる資格なんてない」
漁師が、パルメスを抱えて、どこかに去って行った。
「……一つだけ、言えることがあるのですが」
「なんでしょうか」
「今夜はきっと、眠れないでしょうね」
「夜という時間は、存在しないでしょう」
少なくとも、王子がここにいてくれて良かったと、クレアは思った。
67
あなたにおすすめの小説
何でもするって言うと思いました?
糸雨つむぎ
恋愛
ここ(牢屋)を出たければ、何でもするって言うと思いました?
王立学園の卒業式で、第1王子クリストフに婚約破棄を告げられた、'完璧な淑女’と謳われる公爵令嬢レティシア。王子の愛する男爵令嬢ミシェルを虐げたという身に覚えのない罪を突き付けられ、当然否定するも平民用の牢屋に押し込められる。突然起きた断罪の夜から3日後、随分ぼろぼろになった様子の殿下がやってきて…?
※他サイトにも掲載しています。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
ワザと醜い令嬢をしていた令嬢一家華麗に亡命する
satomi
恋愛
醜く自らに魔法をかけてケルリール王国王太子と婚約をしていた侯爵家令嬢のアメリア=キートウェル。フェルナン=ケルリール王太子から醜いという理由で婚約破棄を言い渡されました。
もう王太子は能無しですし、ケルリール王国から一家で亡命してしまう事にしちゃいます!
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
今、婚約破棄宣言した2人に聞きたいことがある!
白雪なこ
恋愛
学園の卒業と成人を祝うパーティ会場に響く、婚約破棄宣言。
婚約破棄された貴族令嬢は現れないが、代わりにパーティの主催者が、婚約破棄を宣言した貴族令息とその恋人という当事者の2名と話をし出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる