6 / 12
審査
しおりを挟む
「おはようございます。レンフィア様」
「ん……」
カーテンが開かれ、日光の眩しさを感じました。
いつもより大きなベッド。私は……。
……そうでした!ここは魔王の城です!
「おはようベリーヌ!」
「お、おはようございます……」
「うん……。やっぱり良いわね。ヴィルディ様と、少しでも同じ空気を吸いたいと思っていたの……。くんくん」
「あの。ヴィルディ様はここには」
「わかっています。でも、私のいたつまらない国よりは、よっぽどヴィルディ様に近づけている……。その事実だけで、胸が一杯なの」
「はぁ」
ベリーヌはどうやら理解していないみたいです。仕方ありませんね。愛の強度が違いますから。
「それで……。魔王は、私の生活態度を見ると言っていたけれど、具体的には、何をすれば?」
「主に三つです。が、その内二つは、もう済みました」
「え?そうなの?」
「一つは、レンフィア様の国の状況確認です。混乱しておりました。つまり、レンフィア様をスパイとして、こちらに送りこんだ可能性は低い。そう思われます」
「なるほど……」
混乱……。そういえば、そろそろ婚約者のジナルド様が、遠征から戻っているころかもしれませんね。一言くらい残しておくべきだったでしょうか。それよりも、ヴィルディ様の件で、頭が一杯だったのです。
「二つ目は、自爆です」
「じ、自爆?」
「はい。かなり昔の話になりますが、魔族と人間の関係が悪化した時、人間側が、聖女を魔族の敷地に送り込み、自らの心臓を突きさすことで、癒しの粉を辺り一面に飛び散らせるという……。とんでもない技を仕掛けてきたことがあるそうです」
「惨い話ね……」
聖女でなくても、白魔法をある程度極めた人間なら、同じことができるのかもしれません。白魔法のもたらす癒しは、魔族にとって、なによりの弱点なのです。
「さて、三つ目ですが……。これは、今から審査を行います」
べリーヌから、黒い服を手渡されました。
「これは……。魔女の正装?」
「その通りです。黒魔法を使えるとおっしゃっておりましたが、ヴィルディ様の横に立つ者として……。ふさわしい力をお持ちであるかどうか、それを確かめるのです」
「……良いじゃない。見せてあげるわ。私の力を」
「ですが、その前に朝食をどうぞ。食堂に用意してありますので」
「あっ、ええ。ありがとう」
人間なんかより、魔族の方が優しいかもしれません……。
朝食を食べ終え、私はべリーヌの案内で、荒野へと向かいました。服装もバッチリです。
「ここは見ての通り、何もありません。どれだけ強力な魔法を使おうと、大した被害にはならないでしょう」
「腕が鳴るわね。あれっ、でも、魔王は見てくれないの?」
「魔法の鏡でご覧になられております」
「どうして直接来ないのよ!自分の息子の嫁が決まるかもしれないのに」
「……魔王様が、このような荒野に突然現れたら、万が一人間に見つかったとき、面倒になりますからね」
「あぁなるほど……」
確かに。これから黒魔法をガンガンぶっ放すという時に、三メートル近い魔王がそこで突っ立っていたら、明らかに見過ごせない状況になってしまいます。すぐに大国が遠征部隊を寄越すでしょう。
「特にルールはありません。レンフィア様の得意な黒魔法を、思う存分使ってください」
「じゃあ……。手始めに……。怒りよ!我が矛先に闇の結託を示せ!アルカディミアブレイズ!!!」
私たちを取り囲むように、炎が辺り一面を焼き焦がしました。燃え盛る火の柱が、まるで大きな塔のように、いくつもそびえ立ち、自分で作っておいてなんですが、異常な光景を作り出しています。
そこから飛び散る火の粉が、私やべリーヌにかからないように、魔法を反射するバリアを張りました。
「……ふぅ。どうかしら。ベリッ」
べリーヌが、その場で蹲っています。そうでした。魔族は火属性が苦手なのです。尻尾がかわいそうなくらいへたってしまっています。
「べリーヌ。すいません。水にするべきでしたね。魔族は火の魔法を扱える者が少ないと思って、それが使えることをアピ―ルしたくてつい……」
「……うぅ」
どうやら相当参っている様子です。とりあえず背中を撫でて上げると、少しして、ようやくこちらを向いてくれました。しかし、その瞳には、まだ動揺が見られます。
「こんなの、聞いていないです……」
「えぇ……。他の属性を選ぶべきだったわね」
「違います。属性の問題ではありません」
「え?」
「……このような強力な黒魔法は、見たことがないと申しているのです」
「……マジ?」
どうやら私、結構すごいことを、やってしまったみたいです。
「ん……」
カーテンが開かれ、日光の眩しさを感じました。
いつもより大きなベッド。私は……。
……そうでした!ここは魔王の城です!
「おはようベリーヌ!」
「お、おはようございます……」
「うん……。やっぱり良いわね。ヴィルディ様と、少しでも同じ空気を吸いたいと思っていたの……。くんくん」
「あの。ヴィルディ様はここには」
「わかっています。でも、私のいたつまらない国よりは、よっぽどヴィルディ様に近づけている……。その事実だけで、胸が一杯なの」
「はぁ」
ベリーヌはどうやら理解していないみたいです。仕方ありませんね。愛の強度が違いますから。
「それで……。魔王は、私の生活態度を見ると言っていたけれど、具体的には、何をすれば?」
「主に三つです。が、その内二つは、もう済みました」
「え?そうなの?」
「一つは、レンフィア様の国の状況確認です。混乱しておりました。つまり、レンフィア様をスパイとして、こちらに送りこんだ可能性は低い。そう思われます」
「なるほど……」
混乱……。そういえば、そろそろ婚約者のジナルド様が、遠征から戻っているころかもしれませんね。一言くらい残しておくべきだったでしょうか。それよりも、ヴィルディ様の件で、頭が一杯だったのです。
「二つ目は、自爆です」
「じ、自爆?」
「はい。かなり昔の話になりますが、魔族と人間の関係が悪化した時、人間側が、聖女を魔族の敷地に送り込み、自らの心臓を突きさすことで、癒しの粉を辺り一面に飛び散らせるという……。とんでもない技を仕掛けてきたことがあるそうです」
「惨い話ね……」
聖女でなくても、白魔法をある程度極めた人間なら、同じことができるのかもしれません。白魔法のもたらす癒しは、魔族にとって、なによりの弱点なのです。
「さて、三つ目ですが……。これは、今から審査を行います」
べリーヌから、黒い服を手渡されました。
「これは……。魔女の正装?」
「その通りです。黒魔法を使えるとおっしゃっておりましたが、ヴィルディ様の横に立つ者として……。ふさわしい力をお持ちであるかどうか、それを確かめるのです」
「……良いじゃない。見せてあげるわ。私の力を」
「ですが、その前に朝食をどうぞ。食堂に用意してありますので」
「あっ、ええ。ありがとう」
人間なんかより、魔族の方が優しいかもしれません……。
朝食を食べ終え、私はべリーヌの案内で、荒野へと向かいました。服装もバッチリです。
「ここは見ての通り、何もありません。どれだけ強力な魔法を使おうと、大した被害にはならないでしょう」
「腕が鳴るわね。あれっ、でも、魔王は見てくれないの?」
「魔法の鏡でご覧になられております」
「どうして直接来ないのよ!自分の息子の嫁が決まるかもしれないのに」
「……魔王様が、このような荒野に突然現れたら、万が一人間に見つかったとき、面倒になりますからね」
「あぁなるほど……」
確かに。これから黒魔法をガンガンぶっ放すという時に、三メートル近い魔王がそこで突っ立っていたら、明らかに見過ごせない状況になってしまいます。すぐに大国が遠征部隊を寄越すでしょう。
「特にルールはありません。レンフィア様の得意な黒魔法を、思う存分使ってください」
「じゃあ……。手始めに……。怒りよ!我が矛先に闇の結託を示せ!アルカディミアブレイズ!!!」
私たちを取り囲むように、炎が辺り一面を焼き焦がしました。燃え盛る火の柱が、まるで大きな塔のように、いくつもそびえ立ち、自分で作っておいてなんですが、異常な光景を作り出しています。
そこから飛び散る火の粉が、私やべリーヌにかからないように、魔法を反射するバリアを張りました。
「……ふぅ。どうかしら。ベリッ」
べリーヌが、その場で蹲っています。そうでした。魔族は火属性が苦手なのです。尻尾がかわいそうなくらいへたってしまっています。
「べリーヌ。すいません。水にするべきでしたね。魔族は火の魔法を扱える者が少ないと思って、それが使えることをアピ―ルしたくてつい……」
「……うぅ」
どうやら相当参っている様子です。とりあえず背中を撫でて上げると、少しして、ようやくこちらを向いてくれました。しかし、その瞳には、まだ動揺が見られます。
「こんなの、聞いていないです……」
「えぇ……。他の属性を選ぶべきだったわね」
「違います。属性の問題ではありません」
「え?」
「……このような強力な黒魔法は、見たことがないと申しているのです」
「……マジ?」
どうやら私、結構すごいことを、やってしまったみたいです。
10
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
お前が悪役令嬢だと王子が叫ぶ
咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
ガリブルラ王立学園の卒業式。
男爵令嬢のリアは突然、第二王子のオーブリーに断罪されてしまう。
「貴様への嫌がらせなど存在しない。全ては自作自演。自ら本を破り、池に落ち、階段を転がった。さながら喜劇役者のよう。残飯をかぶる様は見事であったが、それも今日まで」
リアを助けてくれた優しいオーブリーの姿はそこにはなく、身に覚えのない罪をリアに着せていく。
理解できないまま国外追放を言い渡され、倒れそうになっていたリアに手を差し伸べたのは――?
*小説家になろう様にも掲載します。
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
もちもちほっぺ
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる