8 / 16
令嬢による支配
※令嬢視点です
☆ ☆ ☆
家に戻った私は、すぐに着替え直し、商店の並ぶ通りに向かった。
金の回収をするためだ。
本来、当主である父上がするべき仕事だけど、私が受け持っている。
私たち、ブレッザ家は、元いた国で事業に失敗し、国外追放されることになった。
なんとかして、そこから遠く離れた国の、この小さな街に、辿りついたのだ。
幸いにも、ブレッザ家の名前は、ある程度通用し、町民たちを支配することができている。
とは言っても、町民から回収できる金は、微々たるもので……。
今は、父上と母上は、どこかの国で、働いてくれている。
この街に来た次の日には、出て行ってしまったから、もう一年間顔を合わせていない。
だけど、私は一人でもやっていける……。
軍人らしく、かつての軍服を模した、戦闘服を着て、気合十分の私は、堂々と胸を張って、道を歩き始めた。
「では、あの家から参りましょう」
回収は、定期的ではなく、いつも突発的に行うことにしている。
そして、毎回その日目に入った店を、ターゲットにしていた。
「そんな! 私たちは、もう三週間連続で、金を払っています! このままでは、生活が……」
「運が悪かったと思いなさい。何も、全財産を出せとは言ってません。生活ができるギリギリになるまで、金を寄越せと言っているのです」
「……明日、娘の誕生日なんです。どうか、お許しを」
「塩でも舐めさせておけばいいでしょう?」
ボディガードに合図して、逆らう男を殴らせた。
「わ、わかりました! 払いますからぁ……」
……最初から、逆らわなければいいのに。
それから次々と店を回り、金を回収していく。
やせ細った街であるせいか、やっぱり今日も、回収できる額は、たかが知れていた。
……悔しいけど、あの小太りのお宝を売った方が、効率が良い。
だけど、町民に、支配されているという意識を植え付けるためには、この仕事は絶対に必要だ。
ブレッザ家は、強くなければいけない。
他国に出向き、必死で仕事をしている父上。
それに付き添う母上。
二人が帰ってくる家を守るためにも、私は……。
「待ちな」
道の途中で、急に呼び止められた。
振り返ると、腕組みをした女性が、こちらを睨んでいる。
酒屋の娘の、ベオリーナだ。
……厄介な奴が来た。
「さっき、レオーラの父ちゃんから聞いたよ。誕生日プレゼントのために、溜めてた金、あんたが取っちまったんだって?」
「……回収しただけですよ」
「一緒じゃねぇか!」
「ベオリーナ。女性らしい言葉遣いをしなさい」
「軍人崩れが。口調のこと言うなよ」
「……」
腹が立つけれど、女性を殴らせるわけにはいかない。
「返してやれよ。どうせ今日も、たんまり儲けたんだろ?」
「うるさいですね……」
「……」
ベオリーナが、無言で睨みつけてくる。
仕方ない……。これ以上話すのも面倒だ。
ボディガードに合図して、少しだけ金を渡させた。
「……これでいいですか?」
ベオリーナは、何も言わずに、走って行ってしまった。
あいつ……。せっかく恵んでやったのに。
ブレッザ家が、これだけ怖さを見せていても、あの女だけは、いつも反抗してくる。
……だけど、本当に、あいつ一人だけだ。
他の町民は、穏やかで……。反撃の、はの字もないような。無害な連中。
「帰りましょう。今日はもう、十分です」
今日は、あんなこともあって、疲れてしまった。
帰って……。ゆっくり休もう。
☆ ☆ ☆
家に戻った私は、すぐに着替え直し、商店の並ぶ通りに向かった。
金の回収をするためだ。
本来、当主である父上がするべき仕事だけど、私が受け持っている。
私たち、ブレッザ家は、元いた国で事業に失敗し、国外追放されることになった。
なんとかして、そこから遠く離れた国の、この小さな街に、辿りついたのだ。
幸いにも、ブレッザ家の名前は、ある程度通用し、町民たちを支配することができている。
とは言っても、町民から回収できる金は、微々たるもので……。
今は、父上と母上は、どこかの国で、働いてくれている。
この街に来た次の日には、出て行ってしまったから、もう一年間顔を合わせていない。
だけど、私は一人でもやっていける……。
軍人らしく、かつての軍服を模した、戦闘服を着て、気合十分の私は、堂々と胸を張って、道を歩き始めた。
「では、あの家から参りましょう」
回収は、定期的ではなく、いつも突発的に行うことにしている。
そして、毎回その日目に入った店を、ターゲットにしていた。
「そんな! 私たちは、もう三週間連続で、金を払っています! このままでは、生活が……」
「運が悪かったと思いなさい。何も、全財産を出せとは言ってません。生活ができるギリギリになるまで、金を寄越せと言っているのです」
「……明日、娘の誕生日なんです。どうか、お許しを」
「塩でも舐めさせておけばいいでしょう?」
ボディガードに合図して、逆らう男を殴らせた。
「わ、わかりました! 払いますからぁ……」
……最初から、逆らわなければいいのに。
それから次々と店を回り、金を回収していく。
やせ細った街であるせいか、やっぱり今日も、回収できる額は、たかが知れていた。
……悔しいけど、あの小太りのお宝を売った方が、効率が良い。
だけど、町民に、支配されているという意識を植え付けるためには、この仕事は絶対に必要だ。
ブレッザ家は、強くなければいけない。
他国に出向き、必死で仕事をしている父上。
それに付き添う母上。
二人が帰ってくる家を守るためにも、私は……。
「待ちな」
道の途中で、急に呼び止められた。
振り返ると、腕組みをした女性が、こちらを睨んでいる。
酒屋の娘の、ベオリーナだ。
……厄介な奴が来た。
「さっき、レオーラの父ちゃんから聞いたよ。誕生日プレゼントのために、溜めてた金、あんたが取っちまったんだって?」
「……回収しただけですよ」
「一緒じゃねぇか!」
「ベオリーナ。女性らしい言葉遣いをしなさい」
「軍人崩れが。口調のこと言うなよ」
「……」
腹が立つけれど、女性を殴らせるわけにはいかない。
「返してやれよ。どうせ今日も、たんまり儲けたんだろ?」
「うるさいですね……」
「……」
ベオリーナが、無言で睨みつけてくる。
仕方ない……。これ以上話すのも面倒だ。
ボディガードに合図して、少しだけ金を渡させた。
「……これでいいですか?」
ベオリーナは、何も言わずに、走って行ってしまった。
あいつ……。せっかく恵んでやったのに。
ブレッザ家が、これだけ怖さを見せていても、あの女だけは、いつも反抗してくる。
……だけど、本当に、あいつ一人だけだ。
他の町民は、穏やかで……。反撃の、はの字もないような。無害な連中。
「帰りましょう。今日はもう、十分です」
今日は、あんなこともあって、疲れてしまった。
帰って……。ゆっくり休もう。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
婚約者とその幼なじみがいい雰囲気すぎることに不安を覚えていましたが、誤解が解けたあとで、その立ち位置にいたのは私でした
珠宮さくら
恋愛
クレメンティアは、婚約者とその幼なじみの雰囲気が良すぎることに不安を覚えていた。
そんな時に幼なじみから、婚約破棄したがっていると聞かされてしまい……。
※全4話。
ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜
嘉神かろ
恋愛
魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。
妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。
これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。
存在感と取り柄のない私のことを必要ないと思っている人は、母だけではないはずです。でも、兄たちに大事にされているのに気づきませんでした
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれた5人兄弟の真ん中に生まれたルクレツィア・オルランディ。彼女は、存在感と取り柄がないことが悩みの女の子だった。
そんなルクレツィアを必要ないと思っているのは母だけで、父と他の兄弟姉妹は全くそんなことを思っていないのを勘違いして、すれ違い続けることになるとは、誰も思いもしなかった。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~
キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。
その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。
絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。
今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。
それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!?
※カクヨムにも掲載中の作品です。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に
ゆっこ
恋愛
王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。
私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。
「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」
唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。
婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。
「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」
ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。