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農民サンダルシア 隣国に嫁ぐ。
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「サンダルシア様。ようこそおいでくださいました」
「い、いえ」
あまり言葉を喋りすぎると、偽物であることがバレてしまう。私は必死で笑顔を作り、背筋を伸ばすことで、聖女らしく振舞おうと努めた。
「聖女様が我が国に嫁いでくださるとは……。ありがたき限りでございます。我が国は、長年の局地的な不作のせいで、大変困窮しております。聖女様の祈りがなければ、すぐにでも滅びてしまうでしょう……」
ダントレイの国王、バンディ・ルーカス様が、今にも泣き出しそうな表情で言った。私は胸が痛くなった。聖女の力なんて、農民の私にあるわけないのに。
発言で矛盾を起こさないために、私はこれまでの経緯を、自分の頭の中でもう一度整理することにした。
私が嫁ぐことになったこの国、ダントレイは、隣国のサンティーカ。エルモバルアと共に、長年の間、友好関係を築いてきた。
しかし、ある日突然、私の生まれ育った国、エルモバルアの国王の娘、シーシアが、聖女の力を授かったという。この一報で、ダントレイとサンティーカは、どちらの国に聖女を嫁がせるかという話題で、かなり揉め始めてしまった。
ダントレイは、今国王も言ったとおり、局地的な不作で、とにかく食料不足に陥っている。聖女の力がなんとしても欲しいだろう。
対するサンティーカは、資源や作物に関しては全く問題を抱えていなかったが、国を大きくし、他の大国を攻めるためには、イマイチ戦力不足だった。それを補うため、聖女に嫁いでもらい、兵士の士気を高めたかったのだろう。国全体で戦意が向上すれば、多少軍事費が増えてしまっても、民に許されるからだ。
両国はそれぞれ、違った理由で聖女を求めており、等しく真剣だった。そのせいで、ついに戦争が始まってしまったのだ。困窮しているとはいえ、ダントレイには熟練の兵士が多数おり、戦争は長期化した。
またある日のことだ。エルモバルアの国王が、二人目の聖女が生まれたなどと言い出した。それが……。私。平凡な農民、サンダルシアである。
国王に呼び出された私は、驚愕の真相を、国王自らの口から聞かされた。
シーシアが聖女として目覚めたこと自体が嘘で、サンティーカとダントレイ。より金を出した方に、シーシアを嫁がせるつもりだった。と。
驚く私に対して、国王はさらに続けた。しかし、戦争に発展してしまったので、私を聖女として、もう片方の国に嫁がせたいと……。
正直、信じられなかった、国王が自ら、隣国に罠を仕掛け、大金を奪い取ろうとした事実も、私がその作戦の聖女として選ばれたことも……。
断れば、両親を殺す。そう言われた私は、首を縦に振ることしかできなかった。
「これは、私の息子、リルビー・ルーカスです。リルビー。聖女様にご挨拶を」
「こんにちは。僕はリルビーです。気軽に、リルと呼んでください」
リルは……。美少年だった。
青色の髪が美しい、瞳の綺麗な王子。絵本の世界で見るような姿に、思わず私は、息を飲んだ。
嫁がされるのが、ダントレイの方で良かったと思う。サンティーカは貴族が多く住んでおり、国も豊かで、生まれながらにして貧乏生活の私にとっては、過ごしづらそうだったからだ。
対するダントレイは、困窮してはいるが、優しい人が多い印象だった、戦争にも乗り気ではなく、サンティーカが先に攻めてきたので、仕方なく応戦したのだと言う。
「よろしくお願いします。リル」
「はいっ」
リルの笑顔は、はじけるように眩しかった。こんな人の嫁になれるのなら、聖女も悪くない。そう思った。
「い、いえ」
あまり言葉を喋りすぎると、偽物であることがバレてしまう。私は必死で笑顔を作り、背筋を伸ばすことで、聖女らしく振舞おうと努めた。
「聖女様が我が国に嫁いでくださるとは……。ありがたき限りでございます。我が国は、長年の局地的な不作のせいで、大変困窮しております。聖女様の祈りがなければ、すぐにでも滅びてしまうでしょう……」
ダントレイの国王、バンディ・ルーカス様が、今にも泣き出しそうな表情で言った。私は胸が痛くなった。聖女の力なんて、農民の私にあるわけないのに。
発言で矛盾を起こさないために、私はこれまでの経緯を、自分の頭の中でもう一度整理することにした。
私が嫁ぐことになったこの国、ダントレイは、隣国のサンティーカ。エルモバルアと共に、長年の間、友好関係を築いてきた。
しかし、ある日突然、私の生まれ育った国、エルモバルアの国王の娘、シーシアが、聖女の力を授かったという。この一報で、ダントレイとサンティーカは、どちらの国に聖女を嫁がせるかという話題で、かなり揉め始めてしまった。
ダントレイは、今国王も言ったとおり、局地的な不作で、とにかく食料不足に陥っている。聖女の力がなんとしても欲しいだろう。
対するサンティーカは、資源や作物に関しては全く問題を抱えていなかったが、国を大きくし、他の大国を攻めるためには、イマイチ戦力不足だった。それを補うため、聖女に嫁いでもらい、兵士の士気を高めたかったのだろう。国全体で戦意が向上すれば、多少軍事費が増えてしまっても、民に許されるからだ。
両国はそれぞれ、違った理由で聖女を求めており、等しく真剣だった。そのせいで、ついに戦争が始まってしまったのだ。困窮しているとはいえ、ダントレイには熟練の兵士が多数おり、戦争は長期化した。
またある日のことだ。エルモバルアの国王が、二人目の聖女が生まれたなどと言い出した。それが……。私。平凡な農民、サンダルシアである。
国王に呼び出された私は、驚愕の真相を、国王自らの口から聞かされた。
シーシアが聖女として目覚めたこと自体が嘘で、サンティーカとダントレイ。より金を出した方に、シーシアを嫁がせるつもりだった。と。
驚く私に対して、国王はさらに続けた。しかし、戦争に発展してしまったので、私を聖女として、もう片方の国に嫁がせたいと……。
正直、信じられなかった、国王が自ら、隣国に罠を仕掛け、大金を奪い取ろうとした事実も、私がその作戦の聖女として選ばれたことも……。
断れば、両親を殺す。そう言われた私は、首を縦に振ることしかできなかった。
「これは、私の息子、リルビー・ルーカスです。リルビー。聖女様にご挨拶を」
「こんにちは。僕はリルビーです。気軽に、リルと呼んでください」
リルは……。美少年だった。
青色の髪が美しい、瞳の綺麗な王子。絵本の世界で見るような姿に、思わず私は、息を飲んだ。
嫁がされるのが、ダントレイの方で良かったと思う。サンティーカは貴族が多く住んでおり、国も豊かで、生まれながらにして貧乏生活の私にとっては、過ごしづらそうだったからだ。
対するダントレイは、困窮してはいるが、優しい人が多い印象だった、戦争にも乗り気ではなく、サンティーカが先に攻めてきたので、仕方なく応戦したのだと言う。
「よろしくお願いします。リル」
「はいっ」
リルの笑顔は、はじけるように眩しかった。こんな人の嫁になれるのなら、聖女も悪くない。そう思った。
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