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悪役令嬢を泣かせる
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武器工場を制圧した後は、次々と奴隷を解放していく。兵士を殲滅し、安全な区域を作り上げ、クレスの魔法で氷の壁を作ることで、どこからも攻められないようにバリアを張った。
……いよいよ、王宮へ攻め入る時が来た。
「聖女様……。いよいよですね」
「……うん」
震える私の手を、クレスが握ってくれた。
「大丈夫です。僕がついていますから」
「ありがとう。クレス」
聖女であるはずの私が、子供に勇気を与えられるなんて……。情けない話だ。けど、私一人では、力を手に入れたところで、心が前に進まず、掃除を諦めていたかもしれない。
目の前で、彼が虐待されている場面を見たから――。これだけの憎悪が湧いてきたのだ。
「……見つけたわよ。反逆者共」
王宮に向かって、クレスと歩いていたところ、第一令嬢のセーリアが現れた。
「……」
クレスが無言で、セーリアを睨みつけている。
「あら?誰かと思えば、できそこないのガキじゃない。まだ生きていたのね」
「あなた……。この子に謝りなさい!」
「謝る?あぁそうね。悪かったわ。……もっと強力な黒魔法をかけて、楽に殺してあげるべきだった」
セーリアが高笑いをした。どこまでも救いようのない女だ……。
「随分と仲が良さそうね?手を繋いでいるなんて」
「あなたには関係の無いことです」
「クレスと言ったかしら。半妖のガキ。あなた、もしかして、彼女から力を譲り受けて、あの氷を産み出しているの?」
セーリアは、何か勘違いをしているようだ。呪いさえなければ、クレスは元々、あれだけの魔法を使える存在だった。
「……クレス。見せてあげてよ」
「そうですね」
「内緒話は感心しないわねぇ……。遊びは終わりよ。……死んでもらうわ!」
セーリアが、頭上に両手を挙げると……。そこへ闇がどんどん集まっていき、やがて大きな塊になった。
「くらいなさい!!!」
その闇の塊を、こちらに向け、放り投げてくる。
――この程度か。
私は小さく息を吐いて、その塊を吹き飛ばした。
「……は?」
セーリアが、驚いたように、目を見開いた。
「ま、まぁ……。今のは適当だったから……。次は本当に殺すから」
「いいえ。その必要はありません」
「え?」
クレスが、セーリアに向けて、手をかざした。
その瞬間。
セーリアの体が凍りつき始めた。
「な、なによこれ!?」
どんどん氷が広がっていく。ついに全身を覆うかというところまできて、その進行が止まった。
首より下が完全に凍ってしまったセーリアが、怯えた表情をクレスに向ける。
「この化け物……!お父様に言いつけてやる!」
「それでしたら、魔法を最後まで進行させます。一生溶けることのない氷です」
「……やめて。殺さないで」
「……」
セーリアが泣き始めてしまった。困ったクレスが、私に目を向ける。
「反省、してますか?」
「し、してるわ。ものすごく。私だって、本当はこんなことしたくなかったのよ!」
「誰が信用しますか。その言葉を」
「死ぬのは嫌よ!なんでもするから!助けて!」
「……では、この国から出て行ってください。そして、二度と近づかないと、誓えますか?」
「誓う!誓うからぁ!!!」
私はクレスに目配せした。氷が徐々に溶けていく。セーリアがその場に座り込んだ。放心状態だ。
「それでは……。さようなら」
……邪魔者は、いなくなった。
後は王宮を制圧すれば、掃除完了だ。
……いよいよ、王宮へ攻め入る時が来た。
「聖女様……。いよいよですね」
「……うん」
震える私の手を、クレスが握ってくれた。
「大丈夫です。僕がついていますから」
「ありがとう。クレス」
聖女であるはずの私が、子供に勇気を与えられるなんて……。情けない話だ。けど、私一人では、力を手に入れたところで、心が前に進まず、掃除を諦めていたかもしれない。
目の前で、彼が虐待されている場面を見たから――。これだけの憎悪が湧いてきたのだ。
「……見つけたわよ。反逆者共」
王宮に向かって、クレスと歩いていたところ、第一令嬢のセーリアが現れた。
「……」
クレスが無言で、セーリアを睨みつけている。
「あら?誰かと思えば、できそこないのガキじゃない。まだ生きていたのね」
「あなた……。この子に謝りなさい!」
「謝る?あぁそうね。悪かったわ。……もっと強力な黒魔法をかけて、楽に殺してあげるべきだった」
セーリアが高笑いをした。どこまでも救いようのない女だ……。
「随分と仲が良さそうね?手を繋いでいるなんて」
「あなたには関係の無いことです」
「クレスと言ったかしら。半妖のガキ。あなた、もしかして、彼女から力を譲り受けて、あの氷を産み出しているの?」
セーリアは、何か勘違いをしているようだ。呪いさえなければ、クレスは元々、あれだけの魔法を使える存在だった。
「……クレス。見せてあげてよ」
「そうですね」
「内緒話は感心しないわねぇ……。遊びは終わりよ。……死んでもらうわ!」
セーリアが、頭上に両手を挙げると……。そこへ闇がどんどん集まっていき、やがて大きな塊になった。
「くらいなさい!!!」
その闇の塊を、こちらに向け、放り投げてくる。
――この程度か。
私は小さく息を吐いて、その塊を吹き飛ばした。
「……は?」
セーリアが、驚いたように、目を見開いた。
「ま、まぁ……。今のは適当だったから……。次は本当に殺すから」
「いいえ。その必要はありません」
「え?」
クレスが、セーリアに向けて、手をかざした。
その瞬間。
セーリアの体が凍りつき始めた。
「な、なによこれ!?」
どんどん氷が広がっていく。ついに全身を覆うかというところまできて、その進行が止まった。
首より下が完全に凍ってしまったセーリアが、怯えた表情をクレスに向ける。
「この化け物……!お父様に言いつけてやる!」
「それでしたら、魔法を最後まで進行させます。一生溶けることのない氷です」
「……やめて。殺さないで」
「……」
セーリアが泣き始めてしまった。困ったクレスが、私に目を向ける。
「反省、してますか?」
「し、してるわ。ものすごく。私だって、本当はこんなことしたくなかったのよ!」
「誰が信用しますか。その言葉を」
「死ぬのは嫌よ!なんでもするから!助けて!」
「……では、この国から出て行ってください。そして、二度と近づかないと、誓えますか?」
「誓う!誓うからぁ!!!」
私はクレスに目配せした。氷が徐々に溶けていく。セーリアがその場に座り込んだ。放心状態だ。
「それでは……。さようなら」
……邪魔者は、いなくなった。
後は王宮を制圧すれば、掃除完了だ。
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