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平原の遺跡編
野営(意味深)
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「だいぶ日が沈んできたな」
時計というものが存在しないので何時くらいなのかは分からないが、西の方は既にオレンジ色になり始め、反対に東は紫がかっていた。平原は遮るものが何もないから空がプラネタリウムのドームみたいに見える。
「ここいらで野営することにするかね」
「え、もう止まるのか」
暗くなってきたとはいえまだ地形ははっきりと見える。進もうと思えば進めるんじゃないか?
「あんまり暗くなるとテントを張るのに苦労するだろう。……別に地べたで寝るってなら先へ進んでやるよ」
「わ、悪かったよ」
今のに関してはバプラスが正しい。街灯も懐中電灯もない平原で夜になったらろうそくを灯したってたかがしれてるだろう。このあたりは転生してきた俺よりこっちの世界の人の方が詳しいに決まっている。
「おー? ついたのかー?」
「違いますよ、ガル。今日はここでキャンプだそうです」
「きゃんぷ? 何それウマいのか?」
ガルに関しては日ごろここで暮らしているんだからテントとかいらないんだろうか。あんまり動物も見かけないこの平原で普段何を食べて暮らしているんだか。
「勇者様! 私が火を起こしておきます!!」
「待て!! お前だけはやるな!!」
スピカにやらせると大火事になるのは目に見えているので火打石と枯れ木を奪い取って火付けする。スピカはしょぼんとしているが、可哀想だけど仕方ない。
「バプラスさんと二人でテントを張ってきましたよ!」
「おー」
アナが呼びに来たので見に行ってみると、背丈ほどの気が生えているところのわきに二つのテントが張ってあるのが見えた。どちらも二人くらい寝られそうな大きさだし、ガルに外で寝てもらえば四人は収まりそうだ。
「じゃ、こっちは私のテントだからね。踏み入れたら殺すよ」
「……は?」
バプラスはそれだけ言い残すと片方のテントに入り込んでさっさと入り口を閉めてしまった。しかも殺すってそんな物騒な。
「一応バプラスさんに協力してもらっている身ですからあまり無理は言えませんね……」
「そうは言ってもなあ……」
三人であのテントか……。絶対に無理とは言わないがさすがにきつそうだ。
「寝るときのことは寝るときに考えるとして……先にご飯にしませんか? 火も起こせたことですし」
「うーん……まあそうするしかないか」
朝に村を出発してから、きのみや干した肉くらいしか食べていない。そうは言っても途中まで歩いてきたのだからもうそろそろ何か食べないと背と腹が一体化しそうだ。
「とはいえ、食うものなんてあるのか? 村から持ち出した食糧じゃあたかが知れてるし」
「その点は安心してください。さきほどバプラスさんから鹿のお肉をいただきましたから」
「バプラスから?」
あんなにケチなあいつが食料をよこすなんて。何か裏があるんじゃなかろうか。まああったからといって何かができるわけでもないんだが。
「おい! 俺は腹減ったぞー!」
「なんだか炎が美味しそうに見えてきました~」
空腹だと騒ぐガルをなだめて炎に向かっていくスピカを制止しつつ、アナが持ってきた鹿肉を焼き始める。なかなかのボリュームだからこればかりは全員分足りるだろう。
「俺はナマでいいっつーの!」
まあ普段はそうなんだろうが、生肉を食べている絵面を見るのに抵抗感があるので少なくとも表面を焼いてから食べてくれ……。数分も焼けば肉汁とともにいい匂いがあたりに漂ってきた。
「美味そうに焼けてるじゃあないか」
「うわっ」
いつの間にテントから出てきたのか俺の真後ろにバプラスが立っていて頭上から焚火の方を見下ろしていた。そんな真上に出てこられたらこえぇよ。
「バプラスさんの分もありますよ」
「私は熱いものが大の苦手なんだ。そこの岩にでも置いて冷ましておいてくれ」
バプラスはそれだけ言い残すとフラリと闇の中へ消えてゆく。確かに今も焚火には近付かなかったな。つまりあいつ自身は料理ができなくてアナに頼んだわけか。
「おいひーです! アナさん!」
「がぶがぶ……も一本よこせ!」
「そんな焦らなくてもまだありますよ~」
スピカとガルの二人もご飯の時はおとなしく(?)食べている。美味しいものは偉大だ。
「そうだ、ヒロキ様とガルに提案があるのですけど」
「ん?」「あー?」
「一緒に行動しているのですし、契りを結んだらどうでしょう?」
「ブッッッ!!? こいつとか!??」
驚いて貴重な水を噴き出しちまった。いや、別にガルが嫌いだとかそういうわけではない。見た目でいえばただのコスプレしたロリだし、えっちするなら万々歳である。見た目でいえば。
ただこいつは基本的に俺になついていない上にへたすると俺がケガをする危険性がある。そんな危険を冒してまで契るべきなのか……?
「チギリ、ってなんだー?」
「それはですね、勇者の精液を体内に宿すことで仲間の冒険者の能力が上げることができるすごい儀式のことですよ」
「つまり、交尾か?」
いや、そうだけども。そうだけども言い方。あるいは獣人ではそっちが普通の言い方なのか。
「俺あいつキライ」
「だろうな」
「でももっと強くなれますよ。そうすれば縄張りに入ってきた淫魔ももっと簡単に倒すことができます」
そうは言ってもどうせ「俺は既に強いからイラネー」とか言って蹴るに決まってんだよ。こういうキャラはそうと相場は決まってんだ。
「わかった。交尾してやるよ」
ほらな。だから最初からそんなことを考えるだけ無
「へ?」
「交尾すりゃいいだけだろ? 減るもんじゃねえし。お前らが淫魔ならその時切り刻めばいいだけだからな。交尾くれーしてやる」
お、おう。ありがたいんだかムカつくんだかよく分からない感情だが……。そんな話をしているうちに焚火の前の肉はすべてなくなっていたのであった。
時計というものが存在しないので何時くらいなのかは分からないが、西の方は既にオレンジ色になり始め、反対に東は紫がかっていた。平原は遮るものが何もないから空がプラネタリウムのドームみたいに見える。
「ここいらで野営することにするかね」
「え、もう止まるのか」
暗くなってきたとはいえまだ地形ははっきりと見える。進もうと思えば進めるんじゃないか?
「あんまり暗くなるとテントを張るのに苦労するだろう。……別に地べたで寝るってなら先へ進んでやるよ」
「わ、悪かったよ」
今のに関してはバプラスが正しい。街灯も懐中電灯もない平原で夜になったらろうそくを灯したってたかがしれてるだろう。このあたりは転生してきた俺よりこっちの世界の人の方が詳しいに決まっている。
「おー? ついたのかー?」
「違いますよ、ガル。今日はここでキャンプだそうです」
「きゃんぷ? 何それウマいのか?」
ガルに関しては日ごろここで暮らしているんだからテントとかいらないんだろうか。あんまり動物も見かけないこの平原で普段何を食べて暮らしているんだか。
「勇者様! 私が火を起こしておきます!!」
「待て!! お前だけはやるな!!」
スピカにやらせると大火事になるのは目に見えているので火打石と枯れ木を奪い取って火付けする。スピカはしょぼんとしているが、可哀想だけど仕方ない。
「バプラスさんと二人でテントを張ってきましたよ!」
「おー」
アナが呼びに来たので見に行ってみると、背丈ほどの気が生えているところのわきに二つのテントが張ってあるのが見えた。どちらも二人くらい寝られそうな大きさだし、ガルに外で寝てもらえば四人は収まりそうだ。
「じゃ、こっちは私のテントだからね。踏み入れたら殺すよ」
「……は?」
バプラスはそれだけ言い残すと片方のテントに入り込んでさっさと入り口を閉めてしまった。しかも殺すってそんな物騒な。
「一応バプラスさんに協力してもらっている身ですからあまり無理は言えませんね……」
「そうは言ってもなあ……」
三人であのテントか……。絶対に無理とは言わないがさすがにきつそうだ。
「寝るときのことは寝るときに考えるとして……先にご飯にしませんか? 火も起こせたことですし」
「うーん……まあそうするしかないか」
朝に村を出発してから、きのみや干した肉くらいしか食べていない。そうは言っても途中まで歩いてきたのだからもうそろそろ何か食べないと背と腹が一体化しそうだ。
「とはいえ、食うものなんてあるのか? 村から持ち出した食糧じゃあたかが知れてるし」
「その点は安心してください。さきほどバプラスさんから鹿のお肉をいただきましたから」
「バプラスから?」
あんなにケチなあいつが食料をよこすなんて。何か裏があるんじゃなかろうか。まああったからといって何かができるわけでもないんだが。
「おい! 俺は腹減ったぞー!」
「なんだか炎が美味しそうに見えてきました~」
空腹だと騒ぐガルをなだめて炎に向かっていくスピカを制止しつつ、アナが持ってきた鹿肉を焼き始める。なかなかのボリュームだからこればかりは全員分足りるだろう。
「俺はナマでいいっつーの!」
まあ普段はそうなんだろうが、生肉を食べている絵面を見るのに抵抗感があるので少なくとも表面を焼いてから食べてくれ……。数分も焼けば肉汁とともにいい匂いがあたりに漂ってきた。
「美味そうに焼けてるじゃあないか」
「うわっ」
いつの間にテントから出てきたのか俺の真後ろにバプラスが立っていて頭上から焚火の方を見下ろしていた。そんな真上に出てこられたらこえぇよ。
「バプラスさんの分もありますよ」
「私は熱いものが大の苦手なんだ。そこの岩にでも置いて冷ましておいてくれ」
バプラスはそれだけ言い残すとフラリと闇の中へ消えてゆく。確かに今も焚火には近付かなかったな。つまりあいつ自身は料理ができなくてアナに頼んだわけか。
「おいひーです! アナさん!」
「がぶがぶ……も一本よこせ!」
「そんな焦らなくてもまだありますよ~」
スピカとガルの二人もご飯の時はおとなしく(?)食べている。美味しいものは偉大だ。
「そうだ、ヒロキ様とガルに提案があるのですけど」
「ん?」「あー?」
「一緒に行動しているのですし、契りを結んだらどうでしょう?」
「ブッッッ!!? こいつとか!??」
驚いて貴重な水を噴き出しちまった。いや、別にガルが嫌いだとかそういうわけではない。見た目でいえばただのコスプレしたロリだし、えっちするなら万々歳である。見た目でいえば。
ただこいつは基本的に俺になついていない上にへたすると俺がケガをする危険性がある。そんな危険を冒してまで契るべきなのか……?
「チギリ、ってなんだー?」
「それはですね、勇者の精液を体内に宿すことで仲間の冒険者の能力が上げることができるすごい儀式のことですよ」
「つまり、交尾か?」
いや、そうだけども。そうだけども言い方。あるいは獣人ではそっちが普通の言い方なのか。
「俺あいつキライ」
「だろうな」
「でももっと強くなれますよ。そうすれば縄張りに入ってきた淫魔ももっと簡単に倒すことができます」
そうは言ってもどうせ「俺は既に強いからイラネー」とか言って蹴るに決まってんだよ。こういうキャラはそうと相場は決まってんだ。
「わかった。交尾してやるよ」
ほらな。だから最初からそんなことを考えるだけ無
「へ?」
「交尾すりゃいいだけだろ? 減るもんじゃねえし。お前らが淫魔ならその時切り刻めばいいだけだからな。交尾くれーしてやる」
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