オーシャンエッジプロジェクト プロミネンス 

sin art

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8話 疑惑

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 マーチャントは数名の隊員と共に貨物船襲撃事件で収容された兵士との面会のため船底へと歩いていた。

 

廊下に甲高い靴音が鳴り響く。

 しばらく階段を降りていくと収容されている部屋の前に着く。マーチャントは扉の小窓を開け中の様子を伺った。


「おい、お前ら!」


 部屋の中の兵士たちは一瞬ビクッとし扉の小窓を見上げる。



「私はオーシャンエッジ護衛艦隊総責任者のマーチャントだ」

 マーチャントはギロリと中の兵士たちを睨みつける。



「お前たちの罪は重いぞ。オーシャンエッジの貨物船を沈めた者はその場で射殺してもいいことになっている。だが、優しい私はお前たちに一つチャンスをやろうと思っている。お前たちが所属していた潜水艦の情報を洗いざらい話すのなら、処刑だけは無しにしてくれと上層部とかけあってもいい」



「ほ、本当ですか!?」

 兵士の一人が縋るような声を出す。


「私は護衛艦総責任者だぞ?私の言葉に二言はない。どうだ、どっちにする?話すか、今すぐ処刑か」

 兵士たちはお互いに顔を見あい、大きく頷いた。



「わかりました!全て話します!ですから、命だけは!」

 マリアに肩を脱臼させられた兵士が叫んだ。



「全て嘘のないように話してくれればの話だからな。少しでも嘘が混ざっていると分かればその場で、バンだ」

 マーチャントは冷たい眼差しを兵士たちに浴びせかけ、隣に控えていた隊員たちに目配せをする。



「全員に手錠をかけて表の護送車に連れていけ!オーシャンエッジ執行部へ引き渡す」

「はっ」

 隊員は腰の鍵束から鍵を選び、扉を開ける。
 ガチャリ。
 留置用の重い扉を隊員が二人がかりでゆっくりと開ける。


「ここの部屋だけはまだオートセキュリティを入れとらんからな。執行部へかけあって予算をつけさせるか」

 マーチャントはその様子を見ながらぼやく。



「と、扉そんなに重いんですか?」

 兵士の一人が不思議そうに聞いてきた。

「ん?見ての通りだ。二人がかりでやっとだよ。なんか文句でも?」

「あ、い、いえ、少し前にこの艦の艦長と副艦長を名乗る二人が来た時はそんなに重そうな素振りを見せなかったんで」

「ああ、マリアか。あいつは見かけに依らず馬鹿力だからな」
 

 マーチャントはそうかと言わんばかりに笑みを浮かべた。


「あいつには逆らわない方が身のためだぞ。体術は艦隊随一だ」

「はは、どうりで」
 
 女兵士は肩の外れた兵士を哀れみの目で見た。


「ちっ、早く言えってんだ」

「なんだ、すでにやられてたのか。生きてただけでも大したもんだ。よし、連れて行け!」


 兵士たちはマーチャントの指示で隊員たちに手錠をかけられる。


「ああ、一つ言っておくが、その手錠には爆薬が仕込んである。護送車から一定の距離を離れたら爆発する仕組みだ。1発でお前たちを粉々にできるくらいの爆薬は入ってるからくれぐれも逃げようとはしないことだ」



 そう言うとマーチャントはサディスティックな笑みを浮かべる。


「楽しいなあ、おい。喋るまでお前らに人権などはないと思え。分かったな。分かったらさっさと表に準備してある護送車へ向かえ!」





 兵士たちの護送を見送った後、マーチャントは誰一人いなくなった部屋の中を見ながら今回の事件の違和感に思いを巡らしていた。
 
 
貨物船が襲われたと連絡があった時、なぜか貨物船がレーダーから消失し位置を特定することができなかった。

 そして潜水艦もレーダーに反応しなかった。

 オーシャンエッジの最新鋭のレーダーは海上のみならず水中にも数千基張り巡らされ、近づいてくる移動物体は全て把握している、はずだった。

 にもかかわらず、潜水艦と貨物船がレーダーに反応せず位置の特定に時間がかかってしまい、救助の遅れが生じてしまった。
 


 起こるわけがない事態が二つも起こったというわけだ。
 
 マーチャントはフサフサの白ひげを擦りながら思索に耽る。


「やはり内部か。。」



 マーチャントはぽつりと呟いた。

 伽藍堂の薄暗い部屋がやけに広く見え、物陰に敵が潜んでいそうな気配すらするほどの疑惑。

「やれやれ…。前キャプテンの言う通りになってきたということか。分かっていた事とはいえ難儀だな」
 

 マーチャントは今まで起きた事の流れの整理とこれから起こるであろう事の覚悟を決めるように大きく深呼吸をした。

「おい、誰かいるか!」

 部屋の外に声をかけた。

「は、三名待機しています!」

「そうか、誰でもいい、ユウトとレンを甲板に呼べ。少し話があると伝えろ」

「は、了解しました!」


 隊員の一人が廊下を鳴らしながら小走りに走っていった。ユウトは整備士、レンは通信士で事件の一報を最初に受け取った人物だ。

もしかしたら何か手がかりを知っているのかもしれない。

マーチャントは腕を組み、兵士たちが座っていた場所を凝視した。


この事件の真相は何なのか?必ず突き止め、ナメた真似をしてくれた連中を地獄に叩き落とす。そう心に固く誓ったのだった。
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