8 / 30
8話 疑惑
しおりを挟むマーチャントは数名の隊員と共に貨物船襲撃事件で収容された兵士との面会のため船底へと歩いていた。
廊下に甲高い靴音が鳴り響く。
しばらく階段を降りていくと収容されている部屋の前に着く。マーチャントは扉の小窓を開け中の様子を伺った。
「おい、お前ら!」
部屋の中の兵士たちは一瞬ビクッとし扉の小窓を見上げる。
「私はオーシャンエッジ護衛艦隊総責任者のマーチャントだ」
マーチャントはギロリと中の兵士たちを睨みつける。
「お前たちの罪は重いぞ。オーシャンエッジの貨物船を沈めた者はその場で射殺してもいいことになっている。だが、優しい私はお前たちに一つチャンスをやろうと思っている。お前たちが所属していた潜水艦の情報を洗いざらい話すのなら、処刑だけは無しにしてくれと上層部とかけあってもいい」
「ほ、本当ですか!?」
兵士の一人が縋るような声を出す。
「私は護衛艦総責任者だぞ?私の言葉に二言はない。どうだ、どっちにする?話すか、今すぐ処刑か」
兵士たちはお互いに顔を見あい、大きく頷いた。
「わかりました!全て話します!ですから、命だけは!」
マリアに肩を脱臼させられた兵士が叫んだ。
「全て嘘のないように話してくれればの話だからな。少しでも嘘が混ざっていると分かればその場で、バンだ」
マーチャントは冷たい眼差しを兵士たちに浴びせかけ、隣に控えていた隊員たちに目配せをする。
「全員に手錠をかけて表の護送車に連れていけ!オーシャンエッジ執行部へ引き渡す」
「はっ」
隊員は腰の鍵束から鍵を選び、扉を開ける。
ガチャリ。
留置用の重い扉を隊員が二人がかりでゆっくりと開ける。
「ここの部屋だけはまだオートセキュリティを入れとらんからな。執行部へかけあって予算をつけさせるか」
マーチャントはその様子を見ながらぼやく。
「と、扉そんなに重いんですか?」
兵士の一人が不思議そうに聞いてきた。
「ん?見ての通りだ。二人がかりでやっとだよ。なんか文句でも?」
「あ、い、いえ、少し前にこの艦の艦長と副艦長を名乗る二人が来た時はそんなに重そうな素振りを見せなかったんで」
「ああ、マリアか。あいつは見かけに依らず馬鹿力だからな」
マーチャントはそうかと言わんばかりに笑みを浮かべた。
「あいつには逆らわない方が身のためだぞ。体術は艦隊随一だ」
「はは、どうりで」
女兵士は肩の外れた兵士を哀れみの目で見た。
「ちっ、早く言えってんだ」
「なんだ、すでにやられてたのか。生きてただけでも大したもんだ。よし、連れて行け!」
兵士たちはマーチャントの指示で隊員たちに手錠をかけられる。
「ああ、一つ言っておくが、その手錠には爆薬が仕込んである。護送車から一定の距離を離れたら爆発する仕組みだ。1発でお前たちを粉々にできるくらいの爆薬は入ってるからくれぐれも逃げようとはしないことだ」
そう言うとマーチャントはサディスティックな笑みを浮かべる。
「楽しいなあ、おい。喋るまでお前らに人権などはないと思え。分かったな。分かったらさっさと表に準備してある護送車へ向かえ!」
兵士たちの護送を見送った後、マーチャントは誰一人いなくなった部屋の中を見ながら今回の事件の違和感に思いを巡らしていた。
貨物船が襲われたと連絡があった時、なぜか貨物船がレーダーから消失し位置を特定することができなかった。
そして潜水艦もレーダーに反応しなかった。
オーシャンエッジの最新鋭のレーダーは海上のみならず水中にも数千基張り巡らされ、近づいてくる移動物体は全て把握している、はずだった。
にもかかわらず、潜水艦と貨物船がレーダーに反応せず位置の特定に時間がかかってしまい、救助の遅れが生じてしまった。
起こるわけがない事態が二つも起こったというわけだ。
マーチャントはフサフサの白ひげを擦りながら思索に耽る。
「やはり内部か。。」
マーチャントはぽつりと呟いた。
伽藍堂の薄暗い部屋がやけに広く見え、物陰に敵が潜んでいそうな気配すらするほどの疑惑。
「やれやれ…。前キャプテンの言う通りになってきたということか。分かっていた事とはいえ難儀だな」
マーチャントは今まで起きた事の流れの整理とこれから起こるであろう事の覚悟を決めるように大きく深呼吸をした。
「おい、誰かいるか!」
部屋の外に声をかけた。
「は、三名待機しています!」
「そうか、誰でもいい、ユウトとレンを甲板に呼べ。少し話があると伝えろ」
「は、了解しました!」
隊員の一人が廊下を鳴らしながら小走りに走っていった。ユウトは整備士、レンは通信士で事件の一報を最初に受け取った人物だ。
もしかしたら何か手がかりを知っているのかもしれない。
マーチャントは腕を組み、兵士たちが座っていた場所を凝視した。
この事件の真相は何なのか?必ず突き止め、ナメた真似をしてくれた連中を地獄に叩き落とす。そう心に固く誓ったのだった。
11
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる