オーシャンエッジプロジェクト プロミネンス 

sin art

文字の大きさ
9 / 30

9話 オーシャンエッジ

しおりを挟む
 セリア、ユーキ、そして海輝は緊張しながらもお互いに挨拶を交わし、おそろいのアロハシャツを着てマリアが運転する後部座席に並んで座っていた。


初対面の挨拶、というより人との接触が苦手だった海輝はマリアの後ろに隠れながらも必死に自己紹介したつもりだったが、今思えばもっとしっかり挨拶すればよかったと後悔していた。


海輝はセリアとユーキの間に座って、ちらりと横を見るとセリアは無言のまま窓の外を眺め、ユーキは初めて見る光景に興奮して楽しげな様子だった。



「あ、あの…」
 
 海輝はボソリとセリアに向かって話しかけた。しかし、セリアは窓を少し開け、海輝の声など聞こえなかったように外を見続けていた。



「あ、あの、セリアさん」

 海輝は勇気を出してもう一度声を掛けた。セリアは名前を呼ばれてようやく気づいたのか、海輝の方に目線を向ける。

「何?」


「あ、あの、さっきはちゃんと挨拶できなくて、ごめんなさい」

「挨拶?ああ、さっきの?全然気にしてないから大丈夫」


「あ、ありがとう。僕、人と話すのが少し苦手で、あまり上手く話せなくて…」
 
 海輝はセリアに目線を合わせず、うつむきながら話した。

「ユウキも全然気にしてないよ~」
 

 右側に座っていたユウキは向日葵のような笑顔を海輝に向けた。


「あ、ありがとう、ユウキちゃん」
「えへへ」
 
 ユウキは少し照れたようにおでこを掻いた。

「少しずつね、海輝君。あなたたちは同じ運命を辿った仲間よ。お互い助け合っていきましょう」
 
 マリアは車を運転しながらルームミラー越しに後ろの三人に話しかけた。

「さあ、この角を曲がるとこのエリア3で一番景色のいいところよ!」
 


 マリアはアクセルをふかし、スピードを上げながら海岸線のカーブをドリフトで駆け抜ける。

「おいおい、マリア、運転はもう少しお手柔らかに頼むぞ」
 
 助手席に乗ったエドガーは、想像以上の横Gで被っていた帽子が落ちそうになったのを必死に被り直す。

「うわー!マリアさんすごい!」
 
 ユーキはまん丸の目をさらに丸くして、マリアの運転捌きを見ていた。

海輝はドキドキしすぎて言葉を失っていた。

メインストリートに入った瞬間、別の意味で言葉を失った。整然と整備された街並み、内陸の方には居住用のビル群。

そのさらに奥には居住用のビルよりも更に高い塔がそびえ立っていた。

各所に水路が通っていてそこには小型の船や個人用の水上バイクが行き交い、海岸線には植樹されたヤシの木が先の方まで並び、南の島のような雰囲気を醸し出していた。





「ここが…オーシャンエッジ?」
 
 海輝はとても海の上にあるとは思えない光景に息を飲んだ。

「ええ、そうよ。オーシャンエッジは三人とも初めて?」


 三人はこくりと頷いた。


「綺麗な景色でしょ?この海岸線は私のお気に入りの場所なの。ここはエリア3。あなたたちの国を含めた数カ国の貨物を担当してるエリアよ」

「エリア3ってことは他のエリアもあるんですか?」
 
 セリアは素朴な疑問をマリアにぶつけた。

「ええ、あるわ。オーシャンエッジのエリアは全部で12エリア。各エリアで加盟各国の海運をサポートしているの」

「へぇー。ここみたいなところが12もあるんだね。行ってみたいなあ」
 
 ユウキはマリアの話を興味津々に聞いていた。

「そうね。今度時間があったらオーシャンエッジ一周をドライブしてみましょう。各エリアは特徴があってきっと楽しめるわよ。んー、今日は天気が良くていい風も吹いてるわね。上、開けていいかな?」

「どうぞ」

「屋根?開くの?開けて、開けて~」

 ユウキはびっくりした顔でルーフを見つめた。

「オッケー、開けるわね。バディ、ルーフオープン!」
 
 

マリアはハンドルに内蔵されている車内AIに向かって話しかけると、ルーフがスルスルと開き後部に収納され、代わりに眩しい太陽が車内を照らす。


「おおー、すごい、マリアの車。カッコイイ!」
 
 ユウキは初めてオープンカーに興奮が冷めやらぬ様子だった。


「ふふ、でしょ?」
 
 車内に爽やかな潮風が吹き抜け、マリアの髪がたなびき手でかきあげる。マリアはさらにアクセルを踏み込み、スピードを上げた。

「お、おい。マリア、少しスピード上げすぎじゃないか?」

「そうですか?私はいつもこれくらいですよ」

「いつも?まったく、いつか警備隊に捕まるぞ」

 エドガーは呆れ顔でマリアを見た。


「ハンドルを握ると性格が変わる人なんですね」

 セリアが後ろでボソッと呟いた。



 五人が乗ったオープンカーは海岸線を颯爽と駆け抜け、エリア3の中央病院へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

『総理になった男』

KAORUwithAI
現代文学
この国の未来を、誰かに任せたままでいいのか。 将来に希望を持てず、社会に埋もれていた一人の凡人――坂本健人(31歳)。 政治家でもなければ、有名人でもない。 それでも彼は決意した。 「自分が変えなきゃ、何も変わらない」と。 無所属で立候補し、泡沫候補と嘲笑されながらも、 一つひとつの握手、一つひとつの言葉が、やがて国を揺らす波になる。 腐敗した政界、動かぬ官僚、報道を操るメディア、利権に群がる財界。 立ちはだかる巨大な壁に、彼はたった一人で挑む。 味方は、心を動かされた国民たち。 言葉と覚悟だけを武器に、坂本健人は“凡人のまま”総理へと駆け上がる――。 希望は、諦めなかった者の手の中に生まれる。 すべての“変わらない”に立ち向かう これは、「総理になった男」の物語である。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...