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10話 診察
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海輝たちは病院に着くと、待合室で並んで座っていた。
3人がお揃いで着ているアロハシャツは、通りすがる人々の目を引くには充分なほど派手であった。
「あ、あの」
海輝は隣に座っていたエドガーに話しかけた。
「こ、このアロハシャツ、結構目立って恥ずかしいんですけど…」
「そうか?似合ってるぞ。オーシャンエッジも今は温暖地域に停留してるし、丁度いいんじゃないか?」
「て、停留?っていうと動くんですか?オーシャンエッジって」
「ああ、動くぞ。天候に応じてな。台風が来る時とかは海が時化てオーシャンエッジの破損の原因になる。その前に安全な海域に移動するんだ」
「そ、そうなんですか。すごいシステムですね」
「そうだな。どんなに科学が進んでも、自然にはまだ勝てないんだな。10メートルクラスの大波が来たらひとたまりもなく飲み込まれる」
海輝は大波が街を飲み込む様子を想像してぞっとした。
「島田さーん。島田海輝さーん。2番診療室へ来てくださーい」
女性の看護師の透き通った声が待合室に響き渡る。
「お、順番みたいだぞ」
マリア、セリア、ユウキは電光掲示板で呼ばれ、先に診察室へ入っていて姿が見えなかった。
海輝も電光掲示板で呼ばれていたが、話に夢中で気づかなかったため看護師に直接呼び出されたのだ。
海輝はエドガーと共に第2診察室へ入る。
「はい、こんにちは」
診察室に入ると、丸メガネをかけ、小太りな年配の男性医師が座っていた。
「じゃあ、こちらの椅子に座って。君が救助された少年の海輝君かな?今いくつじゃ?」
「じゅ、10歳です」
「10歳か。大変だったのう。でも命が助かっただけでも不幸中の幸いじゃな」
そう言うと年配の医師は一通りの触診を海輝に施し始めた。
「ふむ、瞳孔もしっかりしてるし呼吸も平気そうじゃな。大丈夫だとは思うが、念のためそこのカプセルに入ってくれんか。全身のスキャンと血液検査じゃ。特殊な針だから全然痛くないからのー、わはは」
何が面白いのだろう?
注射が大の苦手な海輝は心の中でつぶやいた。
笑っている医師を尻目に、海輝は鈍い歩みでおそるおそるカプセルに入っていく。
「先生、大丈夫そうですか?」
エドガーは心配そうな声で医師に聞く。
「骨も折れてないし、受け答えもしっかりしておるから大丈夫じゃろ。それより隣にいた長い黒髪の娘はお前のこれか?えらい別嬪じゃのう」
医師は小指を立ててニヤケ顔でエドガーをからかう。
「え?い、いえいえ、そんなんじゃありませんよ。同じ艦のクルーです」
「んー?そうか。あの娘はお前さんにはまんざらでもない感じだと思ったんだがの」
「あはは、それはどうも。しかし、私にはパープルエリアに待ってる人がいますので」
エドガーは指輪を嵌めている薬指を丸メガネの医師の前に差し出した。
「ほう、いい指輪してるな。なんだつまらん、妻帯者か。しかもパープル。それならワシがあの娘にアタックしてみようかの~がはは」
元気なじいさんだ。
エドガーはこめかみをポリポリとかきながら苦笑いをするしかなかった。
チンッ!
話をしていると、海輝の入っていた診察カプセルが完了の合図を鳴らした。
プシュー。
外気よりもカプセル内が高圧だったのか、開いた瞬間、中から空気と共に煙が吹き出してきた。
「お疲れさん」
丸メガネの老医師は煙の中で姿がまだ見えない海輝に向かって労いの言葉をかける。
「ケホ、ケホ。す、すごい煙ですね」
「なぁに、最新医療カプセル『楽々診療カプセルくん2号』じゃよ。その煙には麻酔も微量に含まれとる。注射も痛くも痒くもなかったじゃろ?」
医師は最近導入したカプセルを自慢気に語った。
「結果は?」
エドガーは心配になり検査結果が表示されているモニターを見つめる老医師に問い詰める。
「まあ、そう焦るな。エドガー。ふむ。骨、内蔵、脳、共に損傷は無し。体調も良さそうじゃのう。脳波が少し乱れておるが正常の範囲内じゃろ。ほう、和国とアメリアのハーフか。カラーは2カラーじゃな」
エドガーはそれを聞きホッと息をついた。
「先に第1診療室で診察を受けた女の子たちも異常は無さそうじゃ。よかったな」
どうやらモニターで情報を共有しているようで、医師はしばらく診察データに見入っていた。
「よし海輝、これで晴れてオーシャンエッジの一員だな。オーシャンエッジに入るためには必ず診察を受ける義務があるんだ。どんな病気を持ったやつが入ってくるか分からないからな」
エドガーは海輝の肩をポンと叩く。
「な、なるほど。そうなんですね」
「第3エリアはここにいるダニエル先生のお墨付きが無いと入れないというわけさ。それともう一つ、オーシャンエッジ入島の誓いのサインだ」
「ち、誓いのサイン?」
「ああ、このオーシャンエッジにはあらゆる人々が望みを求めやってくる。国や人種、宗教問わずな。その連中が共存するための宣誓、といったところかな」
「は、はい。どんな誓いなんですか?」
「それは、『この宇宙に生きる生命として自覚する』という誓いだ」
「この宇宙に生きる生命として自覚する、ですか?…」
「ああ、これはオーシャンエッジ設立当初からの理念であり覚悟の誓いなんだ」
「うぉっほん」
医師は長くなりそうなエドガーの話を咳払いで遮った。
「海輝君もそろそろお腹も空いた頃だろう。エドガー、お前さんの御託はいいから、早よ誓約書にサインさせてお昼にでも連れていってあげなさい」
診察室の机の上の置き時計はすでに12時を回っていた。ダニエルは机の引き出しから誓約書を取り出し、エドガーに渡す。
「海輝、これにサインすればオーシャンエッジ入島手続きは完了だ」
「は、はい」
海輝は誓約書にサラサラと自分の名前を書き、エドガーに渡した。
「こ、これでいいですか?」
「うん、オッケーだ。ダニエル先生、それではよろしくお願いします」
「了解した」
ぐぅ~。
海輝は安心したのか、お腹の虫が大きく鳴り、エドガーとダニエルは大声で笑った。
二人はダニエルに感謝を伝え、待合室に戻ると先に診察に行ったマリア、セリア、ユーキが座って待っていた。
「よし、皆で入島祝いも兼ねて食事に行こう!近くに美味い店があるんだ」
それを聞いて嬉しがるマリア、セリア、ユーキ。
五人は病院を後にし、エドガーおすすめの美味い店へと車を走らせた。
3人がお揃いで着ているアロハシャツは、通りすがる人々の目を引くには充分なほど派手であった。
「あ、あの」
海輝は隣に座っていたエドガーに話しかけた。
「こ、このアロハシャツ、結構目立って恥ずかしいんですけど…」
「そうか?似合ってるぞ。オーシャンエッジも今は温暖地域に停留してるし、丁度いいんじゃないか?」
「て、停留?っていうと動くんですか?オーシャンエッジって」
「ああ、動くぞ。天候に応じてな。台風が来る時とかは海が時化てオーシャンエッジの破損の原因になる。その前に安全な海域に移動するんだ」
「そ、そうなんですか。すごいシステムですね」
「そうだな。どんなに科学が進んでも、自然にはまだ勝てないんだな。10メートルクラスの大波が来たらひとたまりもなく飲み込まれる」
海輝は大波が街を飲み込む様子を想像してぞっとした。
「島田さーん。島田海輝さーん。2番診療室へ来てくださーい」
女性の看護師の透き通った声が待合室に響き渡る。
「お、順番みたいだぞ」
マリア、セリア、ユウキは電光掲示板で呼ばれ、先に診察室へ入っていて姿が見えなかった。
海輝も電光掲示板で呼ばれていたが、話に夢中で気づかなかったため看護師に直接呼び出されたのだ。
海輝はエドガーと共に第2診察室へ入る。
「はい、こんにちは」
診察室に入ると、丸メガネをかけ、小太りな年配の男性医師が座っていた。
「じゃあ、こちらの椅子に座って。君が救助された少年の海輝君かな?今いくつじゃ?」
「じゅ、10歳です」
「10歳か。大変だったのう。でも命が助かっただけでも不幸中の幸いじゃな」
そう言うと年配の医師は一通りの触診を海輝に施し始めた。
「ふむ、瞳孔もしっかりしてるし呼吸も平気そうじゃな。大丈夫だとは思うが、念のためそこのカプセルに入ってくれんか。全身のスキャンと血液検査じゃ。特殊な針だから全然痛くないからのー、わはは」
何が面白いのだろう?
注射が大の苦手な海輝は心の中でつぶやいた。
笑っている医師を尻目に、海輝は鈍い歩みでおそるおそるカプセルに入っていく。
「先生、大丈夫そうですか?」
エドガーは心配そうな声で医師に聞く。
「骨も折れてないし、受け答えもしっかりしておるから大丈夫じゃろ。それより隣にいた長い黒髪の娘はお前のこれか?えらい別嬪じゃのう」
医師は小指を立ててニヤケ顔でエドガーをからかう。
「え?い、いえいえ、そんなんじゃありませんよ。同じ艦のクルーです」
「んー?そうか。あの娘はお前さんにはまんざらでもない感じだと思ったんだがの」
「あはは、それはどうも。しかし、私にはパープルエリアに待ってる人がいますので」
エドガーは指輪を嵌めている薬指を丸メガネの医師の前に差し出した。
「ほう、いい指輪してるな。なんだつまらん、妻帯者か。しかもパープル。それならワシがあの娘にアタックしてみようかの~がはは」
元気なじいさんだ。
エドガーはこめかみをポリポリとかきながら苦笑いをするしかなかった。
チンッ!
話をしていると、海輝の入っていた診察カプセルが完了の合図を鳴らした。
プシュー。
外気よりもカプセル内が高圧だったのか、開いた瞬間、中から空気と共に煙が吹き出してきた。
「お疲れさん」
丸メガネの老医師は煙の中で姿がまだ見えない海輝に向かって労いの言葉をかける。
「ケホ、ケホ。す、すごい煙ですね」
「なぁに、最新医療カプセル『楽々診療カプセルくん2号』じゃよ。その煙には麻酔も微量に含まれとる。注射も痛くも痒くもなかったじゃろ?」
医師は最近導入したカプセルを自慢気に語った。
「結果は?」
エドガーは心配になり検査結果が表示されているモニターを見つめる老医師に問い詰める。
「まあ、そう焦るな。エドガー。ふむ。骨、内蔵、脳、共に損傷は無し。体調も良さそうじゃのう。脳波が少し乱れておるが正常の範囲内じゃろ。ほう、和国とアメリアのハーフか。カラーは2カラーじゃな」
エドガーはそれを聞きホッと息をついた。
「先に第1診療室で診察を受けた女の子たちも異常は無さそうじゃ。よかったな」
どうやらモニターで情報を共有しているようで、医師はしばらく診察データに見入っていた。
「よし海輝、これで晴れてオーシャンエッジの一員だな。オーシャンエッジに入るためには必ず診察を受ける義務があるんだ。どんな病気を持ったやつが入ってくるか分からないからな」
エドガーは海輝の肩をポンと叩く。
「な、なるほど。そうなんですね」
「第3エリアはここにいるダニエル先生のお墨付きが無いと入れないというわけさ。それともう一つ、オーシャンエッジ入島の誓いのサインだ」
「ち、誓いのサイン?」
「ああ、このオーシャンエッジにはあらゆる人々が望みを求めやってくる。国や人種、宗教問わずな。その連中が共存するための宣誓、といったところかな」
「は、はい。どんな誓いなんですか?」
「それは、『この宇宙に生きる生命として自覚する』という誓いだ」
「この宇宙に生きる生命として自覚する、ですか?…」
「ああ、これはオーシャンエッジ設立当初からの理念であり覚悟の誓いなんだ」
「うぉっほん」
医師は長くなりそうなエドガーの話を咳払いで遮った。
「海輝君もそろそろお腹も空いた頃だろう。エドガー、お前さんの御託はいいから、早よ誓約書にサインさせてお昼にでも連れていってあげなさい」
診察室の机の上の置き時計はすでに12時を回っていた。ダニエルは机の引き出しから誓約書を取り出し、エドガーに渡す。
「海輝、これにサインすればオーシャンエッジ入島手続きは完了だ」
「は、はい」
海輝は誓約書にサラサラと自分の名前を書き、エドガーに渡した。
「こ、これでいいですか?」
「うん、オッケーだ。ダニエル先生、それではよろしくお願いします」
「了解した」
ぐぅ~。
海輝は安心したのか、お腹の虫が大きく鳴り、エドガーとダニエルは大声で笑った。
二人はダニエルに感謝を伝え、待合室に戻ると先に診察に行ったマリア、セリア、ユーキが座って待っていた。
「よし、皆で入島祝いも兼ねて食事に行こう!近くに美味い店があるんだ」
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