オーシャンエッジプロジェクト プロミネンス 

sin art

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11話 アゴが落ちるほどの店

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「こ、ここが、アゴが落ちるほど美味い店ですか?」
 
 

マリアは心なしかぷるぷると身体を震わせながら店を指さした。


「まあ、見た目はな。でも味は一級品だぞ。保証する。前来た時よりも少しボロくなってる気はするが」
 
 
店の外見は所々窓ガラスが割れ、「咸陽亭」と書かれた看板は傾き、営業しているかどうかも定かでない店構えの中華料屋だった。

マリアは期待していた豪華な料理の数々が裏切られ、がっくりと肩を落とした。



「こんなボロの店のご飯が美味しいの?」
 
 ユウキは皆が思っていることを素直にエドガーに伝える。


「違う意味でアゴが落ちそう」
 
 セリアもボソッと呟く。


 海輝はとにかくお腹が空いていたので、何でもいいから口にしたかった。

 ぐぅ~。

 あまりの空腹に海輝のお腹が大きく返事をする。


「と、とりあえず入ってみませんか?」

「お、おう。そうだな。大将、元気にしてるかな~」




 エドガーは傾いた暖簾をくぐり、ガラガラと昔ながらの音を立てる引き戸を開けた。

「大将ー。お久しぶり。エドガーです」
 

 店内の様子は案の定お昼時にもかかわらず閑散としていた。

「あ、エドガーさん。お久しぶりです!」
 
 エドガーの声で厨房から出てきたのは若い少年だった。

「お、君は大将の息子さんだったね。えーと名前は…」

「リ・リュウです」

「おお、そうだった。リュウ君、大きくなったな。親父さんは?」

 エドガーが店の大将の話をすると途端にリュウの顔が曇った。

「それが……。」



 リュウは、父親が去年病気で倒れてしまったこと。

自分が父の代わりに厨房に立ったが、お客さんを満足させることができず客足が遠のいてしまったこと。

さらに店の借金の取り立てが来るようになり、その度にお金を払えないと店のあちこちを破壊され、直す費用もなく店がこんなにボロボロになってしまったことを悔し涙を流しながらに話した。



「僕の力不足です。。僕がもっと父の味を再現できていればこんなことには…ヒック」

「あまり自分を責めるな。親父さんは大丈夫なのか?」

「はい。命に別状はないそうです。ただ、手に麻痺が残ってしまっていて…もう料理は作れないだろうと医者は言ってました」

「そうか…若い頃、親父さんにはずいぶんと世話になったからな。なんとかしてあげたいが…」



 店を見渡すと、借金の取り立て屋が壊された椅子とテーブルが端に寄せられていた。

「うーん。リュウ、とりあえず、昼飯を出してくれないか?腹いっぱいにしてから今後のことも考えてみようじゃないか」

「はい。ありがとうございます!ご注文は何になさいますか?」

「そうだな。俺はやっぱりホイコーローだな」

「私もホイコーローで」
 
 マリアが隣で答えた。

「私も」

「ホイコーロー美味しそう~」

「ぼ、僕もホイコーローでお願いします」

「全員ホイコーローですね!承知いたしました。少々お待ちください」




 リュウはそう言うと足早に厨房に入っていった。久しぶりのお客に袖をまくり気合を入れるリュウ。
 
しばらくするとジュージューと炒め物の音が店内に響き、ホイコーローの香ばしい匂いが店中に充満していく。



「おお、いい匂い。ここのホイコーローは天下一品なんだよな~」
 
 エドガーの顔が綻び始める。

「本当に美味しそうな匂いですね」

 マリアも同調する。

「でも、大将の味じゃないんでしょ?お客さんも全然来てないし、本当に美味しいの?」

 セリアは少し訝しげに店内を見渡す。

「絶対美味しいよぉ。こんなにいい匂いしてるもん。ああ、早く食べたい。早く食べたい」

 ユウキは呪文のようにブツブツと呟き始めた。余程お腹が空いているんだろうと海輝は隣で哀れみの目でユウキを見る。


 ぐぅー。

 いい匂いに誘われてか海輝のお腹の虫がまたも鳴いた。

「お、お腹空いた」


 朝ご飯はマリアが海輝たちの体調を考えてお粥とスープしか出さなかったので育ち盛りの子供にとって当然といえば当然だった。


「そ、そういえばさっきカプセルに入っている時聞こえたんですが、エドガーさんが言っていたパープルって何ですか?」
 
 海輝は空腹を紛らわせる為、先ほどのエドガーと医師との会話の疑問を聞いてみた。

「ああ、パープルサークルのことか。パープルってのはオーシャンエッジの居住サークルの名前さ」


エドガーはテーブルに配られたおしぼりで顔を拭きながら海輝の質問に答える。

「サークルは全部で6つある。今俺たちがいるのがブラックサークル。ここは基本的に港湾が中心のサークルだ。サークルはそれぞれ色の名前が付けられていて、外側からブラック、ホワイト、イエロー、レッド、ブルー、そして一番中心がパープルサークルってわけだ」

「なるほど。な、なぜそれぞれ色の名前が付いてるんですか?」


「うーん、それはだな。カラーごとに担当の仕事が違うんだ。ブラックサークルは港湾機能。ホワイトサークルは島内の治安維持。イエローは情報管理。レッドは防衛関連の開発部門。ブルーでは農作物を育てている。パープルはオーシャンエッジの中枢機関がある」


「ここは第3エリアのブラックサークルだからスリーブラックと言えば大体通じるわね」

マリアも話に加わる。

セリアと海輝は初めて来たオーシャンエッジの話に興味津々だった。セリアの隣にいるユウキはまだブツブツと何かを呟いていた。

「それじゃあエドガーさんはパープルサークルに勤務してるんですか?」

「勤務というか、生まれたのがパープルなだけだよ。ミスしたときにはパープル生まれは頭パープリンか!ってキャプテンによくどやされてたもんさ」
 
 エドガーはその時のことを思い出して苦笑いを浮かべる。

「それとサークルはインサイドとアウトサイドに分かれてるわ。中心部に近いインサイドが居住区、アウトサイドが職場ね。インサイドとアウトサイドの間には商店街があって色んなものが売ってるのよ。落ち着いたら皆で見に行きましょう」
 



 エドガーたちが話をしていると、乱暴に引き戸の開ける音が響き、数名の男達が店の中に入ってきた。

「まーだ、この辛気臭い店やってるんか?」
 

 男たちの中でも特に筋肉隆々な男は凶悪な雰囲気を漂わせて店に入ってきた。

「エドガー艦長、子供たちを」
 
 マリアは本能で男の危険を察知し、海輝たちをエドガーに任せる。



「失礼ですが、何の用ですか?」
 
 マリアは男の眼の前に立ちはだかり見上げて睨みつける。



「ああ?誰だお前は?」
 


 二人の睨み合いで店内の空気が一気に張り詰めはじめた。
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