オーシャンエッジプロジェクト プロミネンス 

sin art

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12話 凶悪な臭いのする男

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 マリアと大柄な男は店の入口で睨み合っていた。

 一歩も引かないマリアの姿勢を見て、男の方が口火を切った。



「何者だお前?」

「私ですか?私はただの客ですよ」

「お前なんかには用はない!そこの厨房にいるガキに用があるんだ。どけ!」

「どきません」

「どけ!どうなっても知らんぞ!!」



 再び両者は睨み合う。

「女だからって下手に出てれば。おい、お前ら、この女を縛り上げろ!」

 男は取り巻きのチンピラに命令した。

「へい。おい、女。痛い目にあ、いぐぁぁ!!」



 チンピラAはマリアの蹴りの一撃で店の外に飛ばされる。

「なっ!?おい、お前ら、一気に取りかかれ!」


 大柄な男の指示で残り3人のチンピラBCDの男がマリアに同時に襲いかかる。

「うげぇあ!」
「あべばぁ!」
「ぼぐぁあ!」

 常人には目で追うことも困難なスピードで蹴り飛ばされ、最初に蹴り飛ばされたチンピラAに覆いかぶさるように順番に積み重なる。



「さあ、あなたもサンドイッチになります?ああなりたくなければ今のうちに帰ったほうが利口ですよ」

 蹴り上げた片足を下げずに男に対して警告の構えを取るマリア。

「ほう、ちったぁ出来るみたいだな。俺は女だからって手加減はしねぇぞ?」

「お好きにどうぞ」

 


 マリアが言い終わらぬ間に瞬時に間合いを詰め、マリアの首を掴みにかかる。

 マリアは男の腕を海老反りで避け、そのまま床に手をつき、その反動を利用して男の顎に向けて鋭い蹴りを入れる。が、間一髪男も身体を反らせて躱した。


「ひゅー。いい蹴りしやがるな」

 男はそう言いながら顎を擦ると、当たっていないにもかかわらず擦った手には血がついていた。

「て、てめえぇ!」



 男は避けたと思っていた蹴りが自身にかすり傷をつけたという事実にプライドを傷つけられ激昂する。マリアの顔もいつの間にか狩人のような鋭い目つきになっていた。

「これ以上やるというなら貴方の命の保証はできません。早々に立ち去りなさい」

 マリアは男に警告を与える。が、男はニヤリと笑い返した。



「命の保証?この俺のか?ハーッハッハッハ。こいつはおもしれぇ。俺が殺られるって?」

「ええ、そうよ。そんなに可笑しい?」

「ハッハッハ、これが可笑しくなくて何が可笑しいってんだよ。えぇ?」

 次の瞬間、男は低い姿勢でマリアの足元にタックルを仕掛ける。マリアはそのタックルをヒラリと空中に舞って躱した。そしてそのまま一回転して男の延髄へと蹴りを叩き込む。



「ウゲェェ!」


 男はその蹴りの衝撃で客席のテーブルに飛ばされ、テーブルは真っ二つになる。

 額にテーブルの木の破片が突き刺さり、鮮血が額から顎へ滴る。男はあまりの打撃のダメージでふらつきながら立ち上がる。

「もう、許さねぇ。てめぇ覚悟しろ!!」

「弱いやつほど口数が多いんですね。四の五の言わずかかってきなさい!」

 

 マリアの煽りに男は血管が浮き出る代わりに傷口から血が吹き出す。

 男は真っ二つになったテーブルをマリアに向かい投げつけてきた。

 もちろんそんな攻撃は当たるはずもなく、マリアは必要最小限の動きで投げられたテーブルを躱す。そのテーブルで視界を遮られた一瞬で男の姿が消えていた。

 

 マリアは少し狼狽し、前後左右を見渡して男を探す。

「ヘッヘッヘ。ここだよ。こーこ」


 振り返ると男は別のテーブルの影に隠れていた海輝を腕にかかえ人質にしていた。そばでエドガーはぐったりと横たわっている。


「エドガー艦長!海輝君!」

 海輝は男がこちらへ突進してきた時、とっさにセリアとユーキを突き飛ばし逃がしていた。



「海輝君!」

「おにいちゃん!」


「に、逃げて、二人とも…」

「ハッハッハ、形勢逆転だな、ねえちゃんよう」


「ぐっ!…」


「おっと、動くなよ。お前が来るまでにこの子供の首を捻るくらいはわけないんだからな。さあ、この落とし前どうつけてもらおうか?」

 男は床に転がっていたグラスを手に取った。

「一歩でも動いたら分かってるな?」

 男は手に持っていたグラスを近くのテーブルで割り先端を尖らせ、そのグラスをマリアに思い切り投げつけた。
 
 動けないマリアにグラスは直撃し、破片が額に突き刺さり苦痛に顔を歪める。


「う、ぐはぁ!」

「これでおあいこだなぁ」

 
 男はテーブルにあったまだ水の入っているグラスを再び手に取る。

「そして、これは俺のプライドを傷つけた分だ。ありがたく受け取れ!!!」


 男が再びマリアにグラスを投げつけようとした時、海輝が叫んだ。



「や、やめろおぉ!!これ以上マリアさんを傷つけるなぁ!!」


 男はグラスを投げる手がピタッと止まる。


「ほお、いい度胸してるじゃねえか小僧。小便でもチビッてると思ってたけどよ。でもよお、少し大人しくしてろ!」



 男は海輝を抱えた腕に力を込め、さらに圧迫してくる。

「あ、あがぐぁぁ!!」

「海輝君!!」

 海輝は圧迫の苦しみで気が遠のいてくる。


 マリアさんを助けたい。どうにかしないと…海輝は深海に沈んでいくような感覚になり遠ざかる意識の中でもがいていた。
 
 コポッ。コポココポ。
 
 
 ふいに男が持っているグラスの中の水が渦を巻き始めた。

 そしてその遠心力を利用し水は意識を持っているかのようにグラスから飛び出し、男の鼻と口へまとわりつき呼吸を遮る。


「ごぶぉ?ブフォゴボゴボボ」

 男は呼吸器がすべて塞がれ、何が起こったのかが理解できずにいた。

 海輝を床に放り投げ纏わりついている水を両手で払おうと必死になる。

 顔中血だらけになっているマリアだがその隙を逃すはずはなく、一気に間を詰め鳩尾に一撃を食らわせ、男が思わずかがんだ所で顔面にこれでもかと言わんばかりのヒザ蹴りを食らわせた。

 

 バキィ!!

 
 ものすごい音と共に男の目はグリンと白目になり、顔に纏わりついていた水は男の血で赤く染まり、糸が切れたように男の体ごと床に落ちていった。



「まったく、手間かけさせて……」

 マリアは一つ大きくため息をつくと白目を向いて倒れた男を引きずり外でサンドイッチになっているチンピラの上に放り投げる。



「ぐぇ」

 一番下の男からカエルの潰れたような声がかすかに聞こえた。


 店に戻るとコックのリュウがマリアの顔をおそるおそる見ながらホイコーローをテーブルの上に並べていた。

「お、お待たせしました。ホイコーローです」

「あ、良かった。やっぱり美味しそうなホイコーローね。そういえばリュウ君、包帯ってある?」

 顔面血だらけになりながらも息一つ上げていないマリアに、リュウとセリアとユーキの顔はいろんな意味で青ざめていた。



 でもあの瞬間何が起こったのだろう?何か液体が男の顔にかかった途端、苦しみ始めたみたいだったけれど。。
 

 マリアは額に刺さったガラスをメイク用の手鏡を見ながらグラスの欠片を一つ一つ抜き、床に飛び散っている水たまりを見て思索に耽った。
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