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第2話

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「ここは.....どこだ?」

ノアは見知らぬ家の中にいた。家具や飾り
などからみても、相当上級の家主だろう。

「おかあさま!ただいまもどりました!」

ノアの背後から声が聞こえて来た。見れば
まだ幼い子供が母親らしき女性に抱きついて
いる。

「あらあら、甘えん坊ね。あなたは将来勇者になる男の子なのよ?人に頼るのではなくて
人に頼られる人になりなさい。」

女性は子供に優しく言い聞かせる。

「はい!おかあさま!」

子供は威勢の良い返事をすると、ニッコリと
笑った。

「どうなってるんだ......?」

ノアがいるにも関わらず、彼女達はノアに
気づかない。まるでノアが存在していない
ようだった。

「まさか........これは夢.......?......う!?」

ノアがそう思った時、視界が歪んだ。
意識が朦朧とする。





「...アさ....!ノアさん!」

オリヴィアの声が聞こえて来た。

「....オリヴィアか?」

意識がはっきりとしないが、返事くらいは
出来た。どうやらここは医務室のようだ。

「良かった....!てっきり死んでしまったのか
と思いました!」

オリヴィアはさりげなく怖いことを言う。

「勇者は......どこにいる?」

ノアは辺りを見回すが、それらしい姿は見えない。

「勇者様は.......死にました。」

オリヴィアは気の毒そうに言った。

「......は?....どういうことだ?」

オリヴィアの言葉が信じられなかった。

「勇者様は儀式の後すぐに起きたんですが、
事態を見たら半狂乱になって崖から飛び降りたんです。」

オリヴィアは勇者の死を語った。

「勇者はすぐにって事は、俺は一体.....?
それに事態って.....?」

ノアは疑問をぶつけた。

「ノアさん.......あなたはあの日から4カ月も
昏睡状態だったんです。そして、あなたは....
勇者になっているんです。」

事態.....それはノアと勇者の職業《ジョブ》が
入れ替わってしまった事だった。









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