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第一章
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しおりを挟む「あ、あの!ここ、一体どこなんですか?というか私、あんなドレスなんて着られないんですけどなにか他に……って、ああそうだった言葉通じないんだっけ」
焦りのあまり、言葉が通じないこともすっかり忘れて、目の前の少年に向けて矢継ぎ早に言葉を吐き出す。
そんな琉璃の勢いに押されたのか、それとも琉璃の口から流れ出す未知の言語に驚いたからかは分からなかったが、少年はそのブラウンの瞳をギョッと大きく見開くと琉璃の顔をじっと見つめた。そしてその視線が少し下へ落ちると途端に目を伏せて、オドオドとし始めた。
身振り手振りを駆使して、なんとか状況と自分の意思を伝えようとして頑張る琉璃だったが、その頑張りは丁度通りかかった少し妙齢の女性によって止められた。彼女の服装は、映画とかで見るメイド服に似ていて少し前に部屋で話した少女の服ともよく似ていた。
彼女は慌てたような表情を浮かべると、両手を開いて仁王立ちで琉璃と少年の間に立ち塞がった。
「え?……な、なに?」
なんで邪魔されているのかも分からないまま、女性の腕の下の隙間から首を突き出し、少年の方を見やると、彼はジリジリと後退りして琉璃達から離れようとしていた。
(このままじゃ、逃げられる!私はこのヒラヒラした服じゃなくて、あの子が着てるようなもっと普通の服が着たい!)
「あのこ!あの男の子の服!」
琉璃は少しずつ逃げる体制になってきている少年の方を何回も指差しながら叫んだ。
通じないとわかっていても焦る思いから言葉は溢れ出し続ける。どんなにジェスチャーを駆使しても目の前の女性にはまったく伝わっていないらしく、ひどく戸惑ったような表情を浮かべられるばかりだった。
あっ、でも国によってはジェスチャーも逆の意味になったりするらしいと聞いたことがあった。こんな時にそんな余裕なんてまったくないはずなのにふと余計な事が頭をよぎってしまい、いけないと頭を振りながら、
「あー、もう、不便だな~。どうしたらいいの?」
とため息混じりの声が出る。
その時、後ろから鈴の音のような軽やかな声が聞こえた。自分に呼びかけられた気がして振り向くと、さっき部屋で会った少女が慌てて駆け寄ってきていた。
「あ、さっきの……」
(この子なら、わかってくれる?)
琉璃は一縷の望みをかけ、近づいてくるその少女に伝わるように手首を激しく上下させて、少年の方を何度も指差した。どうやら彼女はそれで少年を引き止めてほしいようだと察してくれたらしく、彼に向かって声をかけた。
琉璃と少年の間に立ちはだかっていた女性も少女と少し会話を交わした後、琉璃に軽く頭を下げるとその場から離れて行った。
少女に呼び止められた少年は、互いを隔てていた壁がなくなったことに一瞬不安そうな表情をみせたが、とりあえずここに留まってはくれるようだ。しかし、相も変わらず不審な目で琉璃を見つめている。
ようやく現れた自分の思いを理解してくれそうな少女の存在に、琉璃は心が軽くなるのを感じながら、大きなジェスチャーで、ヒラヒラのドレスは嫌。この子が来てるみたいな服が着たいと、少年の服を差し示しながら伝えた。
少女はその様子をじっくり眺めた後でゆっくりと頷くと、近くの椅子へと琉璃を誘導し、ここでお待ちくださいというような仕草をした後、少年と一緒に屋敷の外へと出て行った。
しばらくして戻ってきた彼女が、少年が着ていたような簡素で動きやすい服を抱えて戻ってきた時には、喜びのあまり友達にするような自然さで彼女に抱きつこうとしてしまい栗毛色の髪の彼女をびっくりさせてしまった琉璃だった。
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