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第2章
調査開始
しおりを挟む意識の覚醒と共に目を開けると、目の前には鎖骨があった。鎖骨....鎖骨?!バッと顔を上げるとそれはもう眩しいほどに輝いて見えるイケメン、グランが僕を見て微笑んでいた。...この微笑み、既視感があるが、思い出せない。
「狭い狭いと言っていたのに、余白の有り余った寝方だな」
そう。何故こんなに目の前に鎖骨があるくらい近いのか。それは、僕たちが抱き合って寝ていたからだ。
「!?」
驚きと恥ずかしさに勢いをつけてすぐさま離れる。今の僕はきっと、顔がゆでダコ状態だろう。
目覚めの悪い(?)朝であったが、今日から調査が始まる。僕たちが担当するマリーノ王国では主に、マリーノ王国に所在する教会での調査と、国民への市場調査を行う。国が違えど、教会同士の交流と称すればいくらでも繋がることができる。よって、まずは教会に目をつけた。また、今現在の国民のウィール王国や、自国への意識を聞き出すことで、ウィール王国が秘密裏に動いているのか、そうでないのかが大体わかる。
「あとは...メニルについても何か知っているか聞いてみよう」
僕とイルは、メニルがほぼ転生者だと確信していることから、今回の件の根幹にも係っていると推測した。何故なら、今回の件は小説に全く出てこなかったからである。動機が全く分からない今は、取り敢えず情報を収集するしかないのだろう。
「ここが、教会...」
教会には初めて訪れた。前世では、神を信仰していたわけでも、宗教に入っていたわけでもないので、もちろん教会を訪れたことがなかった。
礼拝堂の中は、絵にも描けない美しさを体現したようなつくりで、思わず感嘆の声を漏らしてしまった。
今日訪れた教会は、マリーノ王国の最東端、つまりウィール王国との国境に近い場所に在る。ちなみに、ニアマライア教会とは十数キロしか離れていない。調査のために来たと言えば怪しさMAXになってしまうので、留学中に見学に来た学生と偽り侵入した。教会の責任者、神父には事前に連絡を入れておいたので、怪しまれることはないだろう。
「ようこそお越しくださいました。本日は私自らが案内いたしましょう」
そう言って、優しそうな雰囲気の神父が僕たちを迎えてくれた。
「大変感謝いたします。」
と、グランがニコリと笑う。...グランって、笑えたんだ、という驚きを隠しつつ僕も挨拶をする。
それから、僕たちは教会を一通りまわって、ニアマライア教会や、ウィール王国との繋がりについてさりげなく聞いてみたが、収穫はなかった。
「本当に知らないのか、警戒されていたのか...どちらかだろうな..」
「国がどこまで手を出しているのかが、いまいち分からないですね...」
そんなすぐに何かが見つかるとは思っていなかったが、ひとつも収穫がないと結構落ち込む。が、まだやる事はたくさんあるので切り替えていかなければ。
次に僕たちは、マリーノ王国一の街を訪れた。ちょうどお祭りの時期だったようで、通りには屋台や露天が建ち並んでいて、賑わいが尋常じゃなかった。
「ウィール王国の祭りとは比べものにならないくらい賑わっているな」
グランもこの賑わい具合に驚いたようで、興味深そうに街の様子を見ていた。
通りを抜け、比較的人が少ない広場に出ると、そこにはストリートライブをしている人たちがいた。久しぶりに音楽を聴いたので、思わず楽しくなって聴き入っていると、グランは笑った。
「エウテルは本当に音楽が好きなんだな」
「はい!大好きです。僕の人生に欠かせないものなんです」
「そうか」
何故かすごく優しそうな目でこちらを見てくるが、気にせずライブに夢中になった。
しばらく聴いていると、演奏者の人が僕たちの存在に気づいて、手招きをした。
「そこの綺麗なお兄さんたち!カップルかな?見ない顔だけど、どこから来たんだい?」
「か、カップル...?!いえ..僕たちは、えっと...」
「僕たちは、今留学中なんです」
「ああ、留学生か!通りで綺麗な格好をしていると思ったよ。うちの国の貴族はこんなところには来ないから不思議に思ってね」
グランと顔を見合わせた。ウィール王国では、貴族もよく平民街に赴く。もしかしたら、マリーノ王国は平民に対する差別意識が酷いのかもしれない。
貴族の格好をした僕たちが余程珍しかったのか、広場にいた人たちがゾロゾロ集まってきた。
「なんだなんだ」
「綺麗な格好だ、貴族か?」
「いや、貴族がここに来るわけがないだろう」
いろんな声が聞こえてきたが、1人のある言葉によって、その場が一瞬で静まった。
「おい、1人右の目が赤色だぞ」
誰かがそう言った瞬間に、皆んなの視線は僕に集中した。最近、赤目について言及されることがあまり無かったので、すっかり忘れていた。教会でも、赤目について何か言われることはなかった。
グランが咄嗟に僕を背中に庇ってくれたおかげで、視線を感じなくなったが、グランからなにか殺気のような、圧を感じた。
少し沈黙が続いたが、また1人が口を開いた。
「ああ、申し訳なかった。その殺気を鎮めてくれないか。赤目が珍しいもんで、つい口に出してしまった。」
その人はバツが悪そうに頭を掻いて謝った。
「俺たち平民は貴族ほど差別意識を持ってるわけじゃねえから安心してくれ」
「そうよ、別に赤目の人に何か悪いことをされたわけじゃあるまいしねぇ」
そうだそうだ、とみんな頷く。
グランも警戒を解いたみたいで、殺気は感じられなくなった。
「こちらこそ申し訳ない。我が国では、一部の貴族を除いて、平民の方が赤目に対して差別意識が在るので、警戒しすぎてしまった」
そう言ってグランは軽く頭を下げた。
「そうなのかい...それは本当に申し訳ないことをしたな...君も、済まなかった」
次は僕に謝ってきた。予想していなかった僕は慌てて応えた。
「い、いえ...!!全然大丈夫です!...それよりも皆さんが優しくて嬉しかったです..」
頑張って笑ってみたが、顔が真っ赤になっているだろう。やっぱり人前で話すのは慣れない。
皆んなの様子を伺うと、全員が顔を真っ赤にして惚けていた。グランは、苦笑いしていた。
「....なんで?」
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