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はじまり
09 私と新しい生活(3)
しおりを挟む教室の席でも私と里奈は前後で並んでいる。
颯太だけちょっと離れた席だけど、あっちはあっちでバスケ部の友達がいるみたいだった。
気だるげな先生が教室に入って来て自分の簡単な自己紹介と、これからの説明をしてくれた。
「授業は明日からだが何か質問はあるか?なければ一人ずつ自己紹介をして終わりにするぞ。」
新学期はこの瞬間が一番緊張する。
あまり社交的じゃない私は、自分の順番がまだまだ先なのにもう心臓がドキドキしている。
「じゃあ、出席簿順で犬飼颯太」
トップバッターは颯太だった。
「犬飼颯太です、バスケ部に入る予定です!もちろん名前の通り犬を飼ってます!皆さんよろしくお願いします!」
颯太の家の犬は茶色の可愛い柴犬
人懐っこくてすごくお利口なワンちゃん。久しぶりに会いたいなあ。
そんな事を考えてると、近くの女子の話し声が聞こえた。
「ちょっとかっこよくない?」
「わかる。」
ひそひそ話しているのが聞こえてしまった。
ずっと一緒にいるからあまりそう言うのは考えた事なかったけど、背も高いしかっこいい方なのかも?
「颯太はすぐ彼女出来ちゃうかもね。」
「えー!颯太が!?ないない!」
「そこ声デカいぞ。」
声を小さくして里奈に話した帰ってきた返事がデカくてびっくりした。
そのせいで先生に注意されてしまった。
その後も自己紹介は順調に進んで行って
里奈と私の順番になった。
「はーい!佐伯里奈です!こはるんとは大の仲良しでーす!好きな食べ物はいちごとパンケーキ!放課後みんな誘ってくださーい!」
里奈が元気よく自己紹介をした後はちょっとやりずらい。
「紗倉小春です。猫を飼っていたので猫が好きです。色んな人と仲良くなりたいと思っています。よろしくお願いします。」
颯太のをちょっとパクった自己紹介になっちゃった。
ふう、と息をついて席に座ると
「紗倉さん、俺も猫好きだよ。」
「そうなの?えーと、木村くん?」
「そう、よろしく。」
隣の席の木村くんが声をかけてくれた。
猫好きな人に悪い人はいない、きっとこの人はいい人だ。
「山田太郎です。名前でよくイジられます。」
最後は山田くんで自己紹介は終わった。
ちなみにクラスメイト全員の名前は覚えられなかった。
「じゃあ1年間このメンバーで過ごす事になるからな。適当に頑張ってくれ。面倒だから問題だけは起こすなよ?」
そう言って先生が終わりの流れを作った所で、教室のドアが開いた。
「あ、ごめんなさい。学校って朝から行くの僕知らなくて。」
入って来たのは茶髪の男子だった。
「えーと、お前は…猫宮か?なんだその髪の色は?」
「これは生まれた時からずっとこの色なんです。」
「そうか。」
え、それだけ?
猫宮と呼ばれた男子は、悪びれる様子もなく空いている席に座った。
「僕の席はここだよね?よろしく。」
「うん、よろしく。」
彼は隣の女子に声をかけて微笑んだ。
周りの、特に女子のひそひそ声が少し大きくなる。
「えー!すっごいかっこよくない!?」
「ちょっと里奈声デカい。」
里奈のよく通るボリュームが大きい声は、しっかり猫宮くんに届いていたみたいで、私達に向かって笑って手を振っていた。
決してこのクラスの男子がレベル低いとかではなくて
それ以上のイケメンがクラスに現れてしまった。
童話の世界の王子様のような少し大人びたイケメン。
それはクラスの女子の視線を独り占めしちゃうよね。
というか、入学式にいなかったから
もっとこう……すごい不良なのかと思ったら……。
こっそり猫宮くんを見てみる。
(え……?)
目があってしまった。
というか、ずっとこっちを見てる気がする。
「え、なんかこっちずっと見てない?」
里奈も気づいたらしい。
イケメンからの視線はあまり居心地のいいものではなく、ちょっとソワソワしてしまう。
「じゃあ、猫宮。最後お前自己紹介して終わりだ。」
「自己紹介っていうのは、何言えばいいの?」
「名前と…そうだな好きな女子のタイプとか言えば皆喜ぶんじゃねえかな。」
その瞬間女子のひそひそ声が止んだ。
しんとした教室の中で、猫宮くんが立ち上がり発言する。
「猫宮玲央です。好きな女の子は小春ちゃんです。よろしくね。」
え?
猫宮くんが席について、一瞬間を置いてから
ひそひそからザワザワと教室が騒がしくなった。
「え、小春って誰?」
「うそ彼女いるって事……?」
私は静かに頭の中を整理していた。
「こはるん、知り合いなの?」
「ううん、知らない。違う小春さんじゃないか、な……?」
ちらりと猫宮くんの方を見るとやっぱりこっちを見ている
絶対初対面だと思うし、多分人違いの同じ名前の人だ。
「こはるんいつのまに、あんなイケメンと!」
「本当に知らないんだってば!」
自己紹介したばかりでクラスの女子達に、小春ってどこのどいつだよ?と探されている。
本当にどう言う事なの?
私の頭はパニックを起こしていた。
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