飼い主と結婚したい猫は人間になる

Ryo

文字の大きさ
15 / 72
1年目春

15 僕とカレーライス

しおりを挟む


「ただいま。」

帰宅した事を伝えるために声を出す。
するとエプロン姿の神様が出迎える。

「おかえり、どうだった?」

そのどうだった?には色んな事が含まれる。
学校の事とか、コハルちゃんとの事
人間の生活の事とか色々だ。

「うん、問題なしだよ。」

あった事を全部報告するのも面倒だから、問題なしとだけ伝える。

「そっか。手洗っておいでご飯できてるから。」

エプロン姿でキッチンに立つ男を見て、誰が神様だと思うのか。どうして神様が僕の世話をこんなにも焼いてくれるのか不思議だ。

言われた通り手を洗って、着替えるために自分の部屋へ入る。

それにしても久しぶりに小春ちゃんに会えた。
会えなかった時間が長かったから、最後に見た時より恋しく感じた。
最後に会った時は本当の最期。
辛そうに涙を流す小春ちゃんの顔は今も忘れられない。

元気そうでよかった。
ちょっとは僕の事引きずっているかなと期待したけど、そうじゃなさそうで寂しい気持ちもある。

さて、明日からどうやって好きになってもらおうか。

「はぁ、あの里奈って子、本当に意味がわからない。」

よく家にも遊びに来ていて、そんな悪い印象はなかったはずなんだけど…。今日会ったあの子はすごく邪魔だった。

あの子さえいなければもう少し一緒にいられたのに。
ため息ばかり何度も吐いてしまう。

それに、小春ちゃんの向こうに座ってた颯太。
あんなに顔を赤くしてバレバレなんだよね。
だから僕は猫の時から颯太が嫌いだった。一度引っ掻いたこともある。

世界が僕と小春ちゃんの2人だけだったら簡単なのに。
僕は小春ちゃんが好きで、小春ちゃんも僕を好きになる。


「ちょっとレオくんー!ご飯食べようよー!」
「今行くー。」

適当なTシャツを手に取って着る。
そして神様が待つリビングへ向かう。

「今日はカレーライス作ってみたよ。」
「僕が食べてもいいの?」

昔興味本位で匂いを嗅いだ時に小春ちゃんが血相を変えて、僕をカレーライスというものから引き離した事がある。別にあの時は食べようとは思ってなかったんだけど、猫は食べてはいけない物だったらしい。

「今の君は人間だから、食べても大丈夫だよ。熱いから気をつけてね?」
「なら、いただきます。」

今日は箸ではなくスプーンで食べるらしい。
箸はまだ使い慣れてないから助かる。
一口分をすくって冷ましてから口に入れてみる。

「どう?あまり辛すぎないように作ってみたけど」
「……おいしい。」

ちょっと味が濃くて辛い。
ジャガイモやにんじん、肉も大きめに切ってあって食べ応えがある。

「どうして僕に優しくしてくれるの?」

僕はゆっくり食べながら神様に聞いた。

「僕は猫が大好きだからだよ。」
「それだけ?」
「うん、本当にそれだけ。」

神様も同じカレーライスを食べながら話してくれる。
わからない事だらけだ。

本当に猫が好きだからの理由で僕を人間にした?
四六時中家にいて色々してくれてるけど仕事は?
神様も食事は必要なの?

「人間も猫を飼って世話するでしょ?あれと同じ感覚だと思ってくれていい。実際元猫だし。」

「これが神の気まぐれってやつ。」

そう言って笑う神様とはそれ以上の会話はなく、食事は終わった。

「明日は小春ちゃんともっと話せるといいね。」
「うん。明日こそ好きになってもらうよ。」

食器を片付けながら神様は頑張ってねと笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

今度は、私の番です。

宵森みなと
恋愛
『この人生、ようやく私の番。―恋も自由も、取り返します―』 結婚、出産、子育て―― 家族のために我慢し続けた40年の人生は、 ある日、検査結果も聞けないまま、静かに終わった。 だけど、そのとき心に残っていたのは、 「自分だけの自由な時間」 たったそれだけの、小さな夢だった 目を覚ましたら、私は異世界―― 伯爵家の次女、13歳の少女・セレスティアに生まれ変わっていた。 「私は誰にも従いたくないの。誰かの期待通りに生きるなんてまっぴら。自分で、自分の未来を選びたい。だからこそ、特別科での学びを通して、力をつける。選ばれるためじゃない、自分で選ぶために」 自由に生き、素敵な恋だってしてみたい。 そう決めた私は、 だって、もう我慢する理由なんて、どこにもないのだから――。 これは、恋も自由も諦めなかった ある“元・母であり妻だった”女性の、転生リスタート物語。

処理中です...