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1年目春
15 僕とカレーライス
しおりを挟む「ただいま。」
帰宅した事を伝えるために声を出す。
するとエプロン姿の神様が出迎える。
「おかえり、どうだった?」
そのどうだった?には色んな事が含まれる。
学校の事とか、コハルちゃんとの事
人間の生活の事とか色々だ。
「うん、問題なしだよ。」
あった事を全部報告するのも面倒だから、問題なしとだけ伝える。
「そっか。手洗っておいでご飯できてるから。」
エプロン姿でキッチンに立つ男を見て、誰が神様だと思うのか。どうして神様が僕の世話をこんなにも焼いてくれるのか不思議だ。
言われた通り手を洗って、着替えるために自分の部屋へ入る。
それにしても久しぶりに小春ちゃんに会えた。
会えなかった時間が長かったから、最後に見た時より恋しく感じた。
最後に会った時は本当の最期。
辛そうに涙を流す小春ちゃんの顔は今も忘れられない。
元気そうでよかった。
ちょっとは僕の事引きずっているかなと期待したけど、そうじゃなさそうで寂しい気持ちもある。
さて、明日からどうやって好きになってもらおうか。
「はぁ、あの里奈って子、本当に意味がわからない。」
よく家にも遊びに来ていて、そんな悪い印象はなかったはずなんだけど…。今日会ったあの子はすごく邪魔だった。
あの子さえいなければもう少し一緒にいられたのに。
ため息ばかり何度も吐いてしまう。
それに、小春ちゃんの向こうに座ってた颯太。
あんなに顔を赤くしてバレバレなんだよね。
だから僕は猫の時から颯太が嫌いだった。一度引っ掻いたこともある。
世界が僕と小春ちゃんの2人だけだったら簡単なのに。
僕は小春ちゃんが好きで、小春ちゃんも僕を好きになる。
「ちょっとレオくんー!ご飯食べようよー!」
「今行くー。」
適当なTシャツを手に取って着る。
そして神様が待つリビングへ向かう。
「今日はカレーライス作ってみたよ。」
「僕が食べてもいいの?」
昔興味本位で匂いを嗅いだ時に小春ちゃんが血相を変えて、僕をカレーライスというものから引き離した事がある。別にあの時は食べようとは思ってなかったんだけど、猫は食べてはいけない物だったらしい。
「今の君は人間だから、食べても大丈夫だよ。熱いから気をつけてね?」
「なら、いただきます。」
今日は箸ではなくスプーンで食べるらしい。
箸はまだ使い慣れてないから助かる。
一口分をすくって冷ましてから口に入れてみる。
「どう?あまり辛すぎないように作ってみたけど」
「……おいしい。」
ちょっと味が濃くて辛い。
ジャガイモやにんじん、肉も大きめに切ってあって食べ応えがある。
「どうして僕に優しくしてくれるの?」
僕はゆっくり食べながら神様に聞いた。
「僕は猫が大好きだからだよ。」
「それだけ?」
「うん、本当にそれだけ。」
神様も同じカレーライスを食べながら話してくれる。
わからない事だらけだ。
本当に猫が好きだからの理由で僕を人間にした?
四六時中家にいて色々してくれてるけど仕事は?
神様も食事は必要なの?
「人間も猫を飼って世話するでしょ?あれと同じ感覚だと思ってくれていい。実際元猫だし。」
「これが神の気まぐれってやつ。」
そう言って笑う神様とはそれ以上の会話はなく、食事は終わった。
「明日は小春ちゃんともっと話せるといいね。」
「うん。明日こそ好きになってもらうよ。」
食器を片付けながら神様は頑張ってねと笑った。
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