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1年目春
16 僕と学校生活(1)
しおりを挟むピピピピ……
人間の姿で迎える朝。
スマホのアラームを止めて、布団の中でまどろんでしまう。
いけない、学校に行くために起きなきゃ。
朝は苦手だ。
どうして人間はこんなにも朝早く起きて学校や仕事に行くことが出来るのか。
猫だった頃が懐かしい。
好きなだけ寝て起きて、食事をして、また寝て。
そんな事を考えながらも顔を洗うために洗面台へ向かう。
顔を洗って、歯を磨く。
「おはよう、ご飯食べるよね?」
「うん。着替えてくる。」
神様は僕より遅く寝るくせに、僕より早起きだ。
そもそも睡眠が必要なのかも分からない。
寝ている所を見た事がない。
制服に着替えて、また洗面台へ戻る。
雑誌を見て覚えた髪のセットをする。
少しでも小春ちゃんに好きになってもらえるように、かっこよくならなきゃ。
「はい、これお弁当。」
「ありがとう。」
今日は一日学校に居なきゃいけないらしい。
神様は僕に包みを渡してくれる。
「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
なんというか、全然神様らしくないなあの人。
神様らしいもあまり分からないけど、あれじゃただの世話好きのお父さんだ。
この今の姿も若い頃の自分だって言っていたけど、
元々は人間だったって事だよね。
考えながら学校までの道を歩く。
学校までは徒歩で行けるように、家は近くに用意してくれていた。歩いて20分ほどの距離だ。
電車やバスはまだ乗った事がない。
小春ちゃんの家に行くためには乗らなきゃ行けないらしいから、そのうち練習しておかないと。
僕は学校にそのまま向かわずに駅の方へ歩く。
同じ制服の人間が多くなってきた。
神様が教えてくれた、小春ちゃんは大体この時間の電車に乗ってくるって。
スマホの時計を見ると神様が教えてくれた時間だった。
僕は少し周りを見渡してみた。
「いた。」
小春ちゃんの姿を見つけた。
けれど隣にあの颯太がいる。
僕は近くのガラスで自分の姿を確かめてから、小春ちゃんの元へ向かった。
「おはよう、小春ちゃん。」
「あ、おはよう、猫宮くん。」
颯太と反対側の小春ちゃんの隣に立つ。
「おはよう猫宮、俺もいるからな!」
「ごめん、僕、小春ちゃんしか見えてないから。」
僕は小春ちゃんと一緒に歩きたいから、颯太は邪魔。
どっかいってくれないかな?
「今日あの子は?」
今日はあの里奈の姿が見えない。
居たらまた邪魔してくるだろうし、居なくてもいいんだけど。
「あぁ、里奈は……寝坊してて。」
「だから置いてきた。」
「そっか、じゃあ僕はせっかくの2人きりの通学時間を邪魔しちゃったかな?」
「私達そんな仲じゃないよ?ただの友達!」
「そ、そうだな。」
ちらりと颯太を見ると、ちょっとだけ落ち込んでる様子だった。
颯太はきっと男として見てもらえてない。
その点小春ちゃんに好意を伝えてる僕の方が優位だ。
「ならよかった。昨日も言ったけど、僕は小春ちゃんの事が大好きだから。こうやってちょっとでも一緒の時間があると嬉しいんだ。」
「猫宮お前……。」
「猫宮くん、そういうの私恥ずかしいから……。」
赤くなる小春ちゃんが可愛い。なぜか颯太も赤くなってるけど無視した。
人間になって良かった事は、こうやって言葉にして想いを伝える事ができる事。
「こはるんに、ちょっかいかけるなあ!!」
「うわっ」
突然後ろから押されて、前に転びかける。
振り返ると小春ちゃんの腕を組む憎たらしい女がいた。
「ちょっと颯太!ちゃんとこはるんの事守ってよね!」
「俺はこんな正統派にイケメンに太刀打ちできねえ……。」
「何言ってんの!颯太もそこそこイケメンだよ!」
「そこそこ…。」
僕は体勢を立て直して里奈に向かい合う。
「何か勘違いしてると思うんだけど、僕は小春ちゃんが好きで好きになってもらいたいだけ。危害を加えるつもりはないし、嫌な思いをさせる事もない。」
「どうだか、なんか猫宮くんって猫被ってる感じがして信用できない!」
そりゃ猫だから。と言う事も出来ずにどうしようかと考える。
「ねえ、あの。とりあえず学校いこうよ?遅刻しちゃうから。」
「うん、そうだね。行こうか?」
小春ちゃんの言うことはなんでも聞くよ。
困ってることはしない。
「ほら犬飼くんも行こう。」
さりげなく小春ちゃんの隣から颯太を引き離して歩く。
僕以外の男が隣を歩くなんて許せないからね。
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