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1年目夏
52 私と期末テストと勉強会(2)
しおりを挟む「すげー猫宮、超わかりやすいじゃん!」
「え、じゃあこれはどういうこと!?」
「はぁ……、さっき教えたじゃん。これは……。」
いま猫宮くんは里奈と颯太に囲まれて左右から別々の教科を教えている。
私はそれを見ながら木村くんと、後から参加した中川さんと野村さんと黙々とテスト範囲の復習をする。
「ねえ、この英文の訳ってなんだっけ。」
「あ、それウチわかるわ!」
意外だったのは、いつも授業を寝ている中川さんがすごく勉強できる事。
簡単すぎてつまらなくて寝てしまうらしい。
「野村さんもテスト不安だったの?」
「あー、まあ、ちょっと勉強しとこっかなって。」
木村くんは野村さんと合わせて同じ科目の範囲のすり合わせをしていた。
「小春ちゃんに教えるの僕の役目だったのに……。」
「猫宮お前はそこの小学生2人の面倒みてろ!こはるんはウチがしっかり教えるから!」
「中川さんありがとう。」
中川さんの教え方は先生とは違って堅苦しくなくて、すんなり頭に入ってきた。
「教えるの上手だから、学校の先生とか向いてそうだね。」
「あーだめだめ、ウチ子供嫌いだから!」
「ふふ、それじゃあダメだね。」
私はちらりと猫宮くんの様子を伺う。
あの2人に囲まれて大丈夫なのかなって。今まで私があの立場だったから大変さがすごくわかる。
「颯太話聞いてた?どうしてその式を使ってんの。それはこっちの式を使って。ちょっと里奈はなんで織田信長の絵そんな上手なの。絵じゃなくて名前を書いてくれない?」
まるで保育園の先生みたいな猫宮くんに笑みが溢れる。
それに今まで里奈の事苗字で呼んでたのに、いつの間にか名前になっていた。
「はぁ……、君たちよく入学できたね。」
「まあ、スポーツはできるんで。」
「暗記は得意だからね!」
はぁ、と大きめなため息をつく猫宮くんに申し訳ないけど、2人の事は任せて私は自分の勉強をする。
あの2人と猫宮くんがこれで少しでも仲良くなってくれたらいいなって思う。
放課後の勉強会は有意義な時間になって、テストまでの5日間ほぼ毎日行われた。
2日目からは里奈がおやつを持ち込んで猫宮くんに怒られてたけど。
たまにはこうやってみんなで過ごすのはいいなって思った。
勉強会最終日の5日目、猫宮くんは里奈と颯太に言う。
「最低限これだけ覚えておけば赤点は取らなくて済むはずだから。次からは自分で授業をしっかり聞いて復習してよね。」
「ありがとう猫宮先生!私頑張る!」
「猫宮ありがとな。」
里奈と颯太はやる気に満ちた顔をしていた。あの調子ならテストも大丈夫そうかな?
反対に猫宮くんは少し疲れている感じがした。
「ごめん2人の事任せちゃって。猫宮くん自分の勉強もあるのに……。」
「大丈夫だよ、小春ちゃんの勉強が一番大事だから。」
「私も、中川さんがわからない所は教えてくれたから大丈夫!」
もしかして猫宮くんは私が落ち着いて勉強できるように2人を見てくれてたのかもしれない。
でも、猫宮くん全然自分の勉強出来てなかった気がする……。
2人を丸投げしてしまった事に少し罪悪感を覚える。
「まあ、猫宮くんなら大丈夫だよ。だって学年5位だし。」
「え?」
木村くんが何かすごい事を言った気がする。
「猫宮くん学年で5位?」
「そうだよ。ちなみに中川さんは2位。」
「ええっ?!」
私なんか凄い人に勉強を教えてもらっちゃってた……?
2人とも勉強ができるのに、私達に合わせて勉強会に来てくれてたって事だよね?
「そんなひけらかす事じゃないからね。」
「まー勉強なんて覚えるだけだし?」
「2人とも付き合ってくれてありがとう。」
せっかく教えてくれたんだから、テストの点数前より良くなってないと……!
勉強会が終わって土日はそれぞれ家で復習をしっかりする約束をして解散した。
その夜、今日の復習をしてそろそろお風呂に入ろうかなとノートを閉じた時、ちょうど猫宮くんから電話がかかってきた。
電話がかかってくるなんて、初めての事だった。
メッセージですら用事がある時にしか送ってこないのに。
猫宮くん的には大事なことは全部会って直接話したいタイプらしい。
「もしもし、どうしたの?」
「あぁ、よかった。今大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」
「……、声が聞きたくて。」
電話越しの猫宮くんの声はいつもより少し低く聞こえて新鮮だった。
1週間ずっとテスト勉強してたから、寂しくなったのかな?
「勉強の邪魔したくないから、すぐ切るけど。小春ちゃんの5分僕に貰ってもいい?」
「ふふ、いいよ。」
言い方がすごく猫宮くんっぽくて笑ってしまった。
電話越しで猫宮くんもつられて笑う声が聞こえる。
「最近勉強ばっかで、2人で過ごす時間がなくて寂しいって思ってたんだ。」
「ごめんね、猫宮くん勉強会なんて必要なかったのに。」
「それは気にしないで?小春ちゃんと一緒の時間を過ごしたかったから。」
「猫宮くん教えるの上手だって、颯太も里奈も褒めてたよ?」
「あの2人に教えるのはすごく大変だったんだよ?」
「知ってる。ふふ。」
2人に教えてる時の猫宮くんを思い出して笑う。
電話越しに聞こえる猫宮くんの声が少し拗ねてて、可愛かった。
「もう、本当は僕が小春ちゃんに教えたかったのに。」
「中川さんも教えるの上手だったよ?」
「中川はなんかもう、あたまおかしいから。」
はぁ、とため息が聞こえた。
その吐息に何だかドキッとしてしまう。
「小春ちゃん、テスト終わったら2人の時間作ろうね。」
「うん、そうだね。」
「夏休みも、たまに会いたい。」
「うん、そうだね。一緒にまた出かけようね。」
「小春ちゃん大好きだよ。」
「うん、私も好き。」
通話時間をみると5分を少し過ぎていた。
だけど、もう少し声を聞いていたくて私からは言わないでおく。
「ごめん、もう5分過ぎてたね。」
「ううん、大丈夫。もう寂しくない?」
「……、寂しい。」
いつもは余裕があって同い年なのに年上みたいな猫宮くんが、電話越しだと幼く感じて可愛かった。
「ごめんね困らせちゃうよね。月曜日まで我慢する。」
「私も勉強がんばって、赤点取らないようにするね?」
「うん、頑張ってね。大好き。」
「私も好き。」
そこで電話が切られる。
私は一度閉じたノートを再び開いて、もう少しだけ勉強を続ける事にした。
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