飼い主と結婚したい猫は人間になる

Ryo

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1年目夏

58 僕と海水浴(1)

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願わくば、忘れていて計画は白紙になってくれてたらよかった。僕は届いたメッセージを見て落胆する。スマホの画面には中川からのメッセージ。夏休みの最初に話した海水浴の日程が決まってしまった。

「はぁ……。」

小春ちゃんも行くなら僕も行くしかない。誕生日から何度か小春ちゃんと会ってるけど、水着まで新しく買ってすごく楽しみにしていた。僕も小春ちゃんの水着は見たい。ただそれだけのために行きたくない海に行くんだ。

できれば他の人に見せたくないのに、よりにもよって颯太を誘ってしまうなんて。

小春ちゃんは里奈と颯太を海に誘っていて、2人とも参加する事になっている。こういう時に限って部活は役に立たない。大会とかの時期と被ってたりしてほしかった。

僕は神様に来週海に行く事を伝えると、なぜか妙に張り切って水着を用意してくれた。

「海は恋愛イベントの定番だからね!気をつけて行ってくるんだよ!」
「どうしてそんな嬉しそうなの。」

嬉しそうな神様を不審に思いながら一応水着を確認する。神様の事だから恥ずかしい水着を用意してくるかもしれない。一番最初の弁当の事を僕は忘れていないからね。変なの用意されて小春ちゃんに笑われるとか最悪だから。用意してくれた水着は普通の短パンみたいなもので、おかしな点はなかった。

「あと日差しも強いからね、ラッシュガードも持っていきなよ。」
「うん、ありがとう。」
「楽しんできてね!帰ってきたら感想教えてね。」

神様は僕の行動を逐一聞いてくる。心配してくれているのは嬉しいけど、なんでも聞かれるのは少し恥ずかしい時もある。こないだの誕生日の事も小春ちゃんとの色々はあまり話していない。簡単にだけ答えると神様は満足そうにうんうん頷いて仕事をするからとどこかへ消えた。

半年ぐらい一緒に生活しているけど、いまだに神様の仕事が何かは分からない。まあ、神様は神様で色々忙しいんだろう。今は僕自身の事を考えないといけない。海に入らずに海水浴を乗り切れるのか。

僕が入れる水は風呂場で精一杯だった。プールの授業も休んだ。どうして人間は大きな水たまりが好きなのか理解できなかった。


そして来る海の日になった。
駅で待ち合わせして、みんなで海に電車で向かう。

「見てみて、下に水着着てきた!」
「あ、私も!」

小春ちゃんが首元を引っ張って里奈に水着を見せている。僕も見たいけど、我慢した。木村くんの隣に座って心を落ち着かせて海に備える。

「猫宮くん珍しいね、紗倉さんの近くにいないなんて。」
「うん。おとといにも会ってるし。小春ちゃんだって里奈と喋ったりしたいかなって。」

テスト勉強を一緒にしてから僕は里奈に猫を被るのをやめた。そもそも里奈にいい格好しても意味がない事に気づいた。小春ちゃんは僕を好きになってくれたし、他の人に気を使うのは疲れるからね。どうでもよくなったと言うのが正しいかな。

「猫宮くんならもっと紗倉さんを独占したいって思うのかなって。」
「本当はそうだけど、小春ちゃんの負担になりたくないからね。」
「そうなんだね。」

やっぱり木村くんと話すのは落ち着く。ゆっくり静かな声で喋ってくれるから、どこかの颯太と違って離しててすごく気持ちが安らいだ。

「やべえ!海だ海!海が見えた!」
「すっげー!広い!」

たかが海が見えただけで、颯太と中川がすごいはしゃぎ始める。前から思ってたけどあの2人は似ている気がする。スマートフォンのカメラでぱしゃぱしゃと海の写真と撮る2人。

「野村さんは写真撮らないの?」
「いや、うちそんな海好きじゃないし。焼けるのやだし。暑いし。」

今日集まった時から野村のテンションはずっと低いままだった。僕もあまり楽しみじゃないけど、野村がこういうイベントを楽しまないのは意外だった。


駅について、僕たちは着替えるために更衣室へ向かう。神様に水着は着て行くのが楽だよって教えてもらってたから、そのまま下に履いてきたのは正解だった。木村くんも颯太も同じ感じで混み合う更衣室の中準備をすませてすぐ外に出ることが出来た。

「犬飼くん上着いらないの?」
「俺は焼くつもりで来たからな!」

僕と木村くんはラッシュガードを着て日焼け対策をしていたけど、颯太はアホだから水着1枚の姿でこの日差しの下に立っている。日焼けとかした事ないけど、全身やけどをするようなものだって聞いているから、後からの事を考えるとしっかり対策をした方が賢いはずだ。

「おまたせー!あれ、こはるんたちまだなの?」
「女子更衣室混み合ってたから、はぐれちゃったんだよね。」

中川と野村もしっかり上着を着て更衣室から出てきた。僕は小春ちゃん以外の体に興味はないけど、同級生の水着姿に颯太と木村くんは視線を少し泳がせていた。木村くんのそういう一面は可愛いって思った。

「色々レンタルしたいし、うち先に行くわ!パラソル建てたいから、木村と犬飼一緒に来て!」

中川は木村くんと颯太を連れて行ってしまった。僕は野村と2人更衣室の前で待つ。ちらちらと僕たちを見る視線にどうして野村を残していったのか、中川の考えが分かった。海は女の子だけじゃなくて男もナンパをされる。きっと颯太や木村くんと2人だったら色々絡まれてめんどくさかったと思う。

「こはるんの水着楽しみ?」
「もちろん。」

次々と更衣室に女の子は入っていくけど、出てくる女の子は少ない。男と違って女の子は準備がたくさんあるからかな。磯香りがして落ち着かないなか、まだかなと小春ちゃんを待つ。

「あの、さ。聞いてもいい?」
「何?」
「私の水着、どうかな。」

野村が顔を赤くしてラッシュガードの前を開けて水着を見せてきた。野村の行動の意味がわからず困った。どうって言われても、なんて返せばいいか分からない。ただのビキニを身につけた野村だった。

「普通。」
「いや、そういうんじゃなくて、男から見て、そそるっていうか……。」

どうして僕にそんな事を聞くのか分からなかった。もしかして、僕の事を好き……、とかは絶対ないと思うけど。この顔を赤くして水着を見せてくる行動そのものがそう思わせて仕方ない。

「僕小春ちゃん以外興味ないんだよね。」
「ちが!そう言う意味で聞いたんじゃなくて!男はこうゆう水着好きなのかって聞きたいんだよ!」
「僕に聞くのが間違ってるよ。木村くんとかに聞けば?」
「聞けたら猫宮に聞かねえよ!」

木村くんはちゃんと答えをくれると思うけど、もしかしたら優しすぎて気を遣った事を言われる可能性もあるからかな。確かに僕は野村に気を遣う事はない。しかし、本当に興味がない女の子の水着を見せられても感想がでない。

「ごめん、僕には分からない。」
「役立たずかよ!」
「ひどい事言うなあ。」

そのうち更衣室から小春ちゃんと里奈が出てきた。小春ちゃんは胸元にフリルがついた薄ピンクのビキニを着ていた。実は猫の時に小春ちゃんの裸は見た事あるんだけど、こうやって同じ人間として肌を見るのは初めてだった。いつもは隠れている場所まで見えてしまうのはすごく興奮した。白い肌にピンクの水着が映えてすごく体を綺麗に見せている。髪も海に入るからアップにされていた。

「小春ちゃんすごく可愛い。」
「ありがとう。照れるね。」

恥ずかしそうに目線を下にして顔を赤くする小春ちゃん。うなじまで赤くなっていて可愛いが爆発していた。僕は小春ちゃんが腕にかけてた羽織りをとって肩からかける。

「可愛すぎるから、他の人に見せちゃだめ。」

前もしっかり首元までチャックを上げる。足は隠せないけど、これで小春ちゃんの体は颯太とか颯太とか颯太に見られないで済む。

「うちの時とだいぶ違うじゃん。」
「てか、私の水着こはるんと色違なんだけど感想ないのー!?」

僕は2人を見た。うん、水着。感想も何も出てこないから、そのまま小春ちゃんの腰に手を回して歩く。

「いこっか。中川達が場所作ってくれてるから。」
「あーひど!こはるん以外虫ケラだと思ってる目だったよさっきの!」

2人の事は無視して僕は中川達を探す。馬鹿みたいに騒ぐ2人は遠くからでもすぐ分かった。その2人の近くのパラソルの下で木村くんはレジャーシートの準備とか色々していた。

それをみて僕はため息をついて、木村くんを手伝うために小春ちゃんから離れた。
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