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道標の遺産
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広く、薄暗い会議室に4つの青白い大きなクリスタルがその場に存在していた。
そのクリスタルの中心に星蘭月学園の現生徒会長唯月弦はいた。
唯月は資料を片手に言葉を綴ていく。
クリスタル……いや、正確にはクリスタルのホログラムの向こう側にいる自分の上司達へと。
「─────以上。これが彼らが我々に対する成果をもたらした結果になります」
「なるほどな……この提示された資料を見る限り、彼らはまだこの学園にとって有益な存在になり得ると言うところか……」
「だが今は有益な存在をもたらしているとしても彼はあの事件を追っている。全てを知った後本当の意味で彼は我々の計画に必要な人間になり得るのなのか?」
「たが、だからと言って彼らに何も関与せず、野放しにしておくのは今後我々の計画に支障が出るのではないでしょうか」
クリスタルの向こう側にいる議論を交わす上司達へと唯月はふっと笑った。
「なら試してみてはどうでしょうか?」
静まり返る室内に唯月は面白そうに気軽な声音で話を言った。
「少なからず彼らはこの先、様々な試練が待っています。それは彼らが望む、望まないにしろ。そこで彼らを見極めてみてはいかがでしょうか?本当に彼、種原悟が我々の計画に相応しい人間か、本当に彼が種原夫妻が研究していたものに深く関わっている人物かどうかを」
暫しの沈黙が流れる。
そして厳格そうな声の主は小さく鼻を鳴らし、言った。
「その方が多少面白みがあるな。分かった。お前の案に乗ってやろう。だがこの学園、我々の組織に不要だと判断した場合即刻切り捨てろいいな」
「勿論心得ています」
そう告げるとそれが了承なのかすぐに4つのクリスタルはその場から薄暗い闇の中に溶けるように消え去った。
それを見やり、唯月は短い息を吐き出した。
「やれやれ、上から命令するだけの奴らは気楽でいいねぇ」
そう言いながら唯月は手にした資料を近くの机の上に置いた。
二年前。
二人の科学者はある研究をしていた。
その研究は世間から大いに注目され、学会でも話題になっていた。
今の世界をひっくり返す事が出来る研究。
当日詳しい研究内容は世間に発表されていない為、噂と推測だけが飛び通い一部では必要な情報だけを引き出すAIの研究だと実しやかに囁かれていた。
それが信実ならば今の現代社会での警察、《道標の遺産》が管理する《情報》を《道標の遺産》を介しなく、一般市民誰もが必要な《情報》のみを手に入れられる事が可能となるだろう。
だがそれと同時に重要な《情報》は制限、または手に入らない場合が存在するが、誰もが必要な《情報》をいつでも手に出来ると言う事はそれだけ人々の生活が楽になれる反面、犯罪が増えると言う事だ。
良くも悪くも世界が変わってしまう。
その研究によって全てが一変する。
そう言われていた。
だが実際はそんな生易しいものではなかった。
真実は違っていた。
”悪魔の研究"
真実を知る研究者、関係者の科学者達からそう呼ばれていた。
それは到底言葉で言い表せない程の残虐なものに近く。
また想像を絶するものだった。
それは二年前二人の研究者も含まれ、大勢の科学者達が殺された残虐な《エンブレム事件》よりも。
唯月はスっと目を細め、
「まだあの狸ジジィ共に簡単に潰されては困るしな。それに彼らには俺の為にも働いてもらわないと……」
そう小さく呟いた。
その時。コンコンと小さくノックが鳴った後、急にガラッと会議室のドアが開けられ唯月は視線を向けた。
そこには一人の女子生徒がいた。
背まで届く艶のある長い黒髪に、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるモデルのような体型。腕には副会長と書かれた腕章。整った顔立ちに妖艶な雰囲気を持つ少女だった。
「会長もう会議は終わられたのですか?」
「終わったよ。君さ、いつも言っているだろう。ノックした後返事があってから開けろって」
「時間の無駄なのでとっとと開けます。大丈夫です。他の方には絶対にしませんので会長だけです」
「俺だけにするって事は……副会長さては君俺の事を……」
「あなたが仕事をほっぽり出して逃げ出さない為にです。会議が終わったのならさっさと生徒会室に戻って下さい。それとも縄を付けて引き摺りながら戻るのが御所望でしょうか?」
唯月の軽口に副会長はにこやかな微笑みを浮かべてキッパリと言った。
それに対して唯月は苦笑いを浮かべた。
「冗談だよ。それより例の案件はどうなっているんだい?」
「順調に事は進んでいます」
その言葉に唯月は「そうか」と答えると、先程の表情から真剣な表情へと変え、彼女に言った。
「君にお願いしたい案件があるんだけど良いかな?」
「案件ですか……」
彼女は暫く考えるようにし、そして薄く笑った。
「いいですよ。会長が今日の分の仕事を全て処理して下さるのならば」
今日の分の仕事と言うのは自分の机の上に山積みにされた資料の事だ。
それに彼女の性格を思えば今までサボって仕事を溜め込んでしまっていた分それも上積みにされる事になるかもしれない。
おそらく今日は徹夜で作業をしなければならない。でないと到底終わらないだろう……。
そんな事を思い浮かべながら唯月は重いため息を吐き出した。
そのクリスタルの中心に星蘭月学園の現生徒会長唯月弦はいた。
唯月は資料を片手に言葉を綴ていく。
クリスタル……いや、正確にはクリスタルのホログラムの向こう側にいる自分の上司達へと。
「─────以上。これが彼らが我々に対する成果をもたらした結果になります」
「なるほどな……この提示された資料を見る限り、彼らはまだこの学園にとって有益な存在になり得ると言うところか……」
「だが今は有益な存在をもたらしているとしても彼はあの事件を追っている。全てを知った後本当の意味で彼は我々の計画に必要な人間になり得るのなのか?」
「たが、だからと言って彼らに何も関与せず、野放しにしておくのは今後我々の計画に支障が出るのではないでしょうか」
クリスタルの向こう側にいる議論を交わす上司達へと唯月はふっと笑った。
「なら試してみてはどうでしょうか?」
静まり返る室内に唯月は面白そうに気軽な声音で話を言った。
「少なからず彼らはこの先、様々な試練が待っています。それは彼らが望む、望まないにしろ。そこで彼らを見極めてみてはいかがでしょうか?本当に彼、種原悟が我々の計画に相応しい人間か、本当に彼が種原夫妻が研究していたものに深く関わっている人物かどうかを」
暫しの沈黙が流れる。
そして厳格そうな声の主は小さく鼻を鳴らし、言った。
「その方が多少面白みがあるな。分かった。お前の案に乗ってやろう。だがこの学園、我々の組織に不要だと判断した場合即刻切り捨てろいいな」
「勿論心得ています」
そう告げるとそれが了承なのかすぐに4つのクリスタルはその場から薄暗い闇の中に溶けるように消え去った。
それを見やり、唯月は短い息を吐き出した。
「やれやれ、上から命令するだけの奴らは気楽でいいねぇ」
そう言いながら唯月は手にした資料を近くの机の上に置いた。
二年前。
二人の科学者はある研究をしていた。
その研究は世間から大いに注目され、学会でも話題になっていた。
今の世界をひっくり返す事が出来る研究。
当日詳しい研究内容は世間に発表されていない為、噂と推測だけが飛び通い一部では必要な情報だけを引き出すAIの研究だと実しやかに囁かれていた。
それが信実ならば今の現代社会での警察、《道標の遺産》が管理する《情報》を《道標の遺産》を介しなく、一般市民誰もが必要な《情報》のみを手に入れられる事が可能となるだろう。
だがそれと同時に重要な《情報》は制限、または手に入らない場合が存在するが、誰もが必要な《情報》をいつでも手に出来ると言う事はそれだけ人々の生活が楽になれる反面、犯罪が増えると言う事だ。
良くも悪くも世界が変わってしまう。
その研究によって全てが一変する。
そう言われていた。
だが実際はそんな生易しいものではなかった。
真実は違っていた。
”悪魔の研究"
真実を知る研究者、関係者の科学者達からそう呼ばれていた。
それは到底言葉で言い表せない程の残虐なものに近く。
また想像を絶するものだった。
それは二年前二人の研究者も含まれ、大勢の科学者達が殺された残虐な《エンブレム事件》よりも。
唯月はスっと目を細め、
「まだあの狸ジジィ共に簡単に潰されては困るしな。それに彼らには俺の為にも働いてもらわないと……」
そう小さく呟いた。
その時。コンコンと小さくノックが鳴った後、急にガラッと会議室のドアが開けられ唯月は視線を向けた。
そこには一人の女子生徒がいた。
背まで届く艶のある長い黒髪に、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるモデルのような体型。腕には副会長と書かれた腕章。整った顔立ちに妖艶な雰囲気を持つ少女だった。
「会長もう会議は終わられたのですか?」
「終わったよ。君さ、いつも言っているだろう。ノックした後返事があってから開けろって」
「時間の無駄なのでとっとと開けます。大丈夫です。他の方には絶対にしませんので会長だけです」
「俺だけにするって事は……副会長さては君俺の事を……」
「あなたが仕事をほっぽり出して逃げ出さない為にです。会議が終わったのならさっさと生徒会室に戻って下さい。それとも縄を付けて引き摺りながら戻るのが御所望でしょうか?」
唯月の軽口に副会長はにこやかな微笑みを浮かべてキッパリと言った。
それに対して唯月は苦笑いを浮かべた。
「冗談だよ。それより例の案件はどうなっているんだい?」
「順調に事は進んでいます」
その言葉に唯月は「そうか」と答えると、先程の表情から真剣な表情へと変え、彼女に言った。
「君にお願いしたい案件があるんだけど良いかな?」
「案件ですか……」
彼女は暫く考えるようにし、そして薄く笑った。
「いいですよ。会長が今日の分の仕事を全て処理して下さるのならば」
今日の分の仕事と言うのは自分の机の上に山積みにされた資料の事だ。
それに彼女の性格を思えば今までサボって仕事を溜め込んでしまっていた分それも上積みにされる事になるかもしれない。
おそらく今日は徹夜で作業をしなければならない。でないと到底終わらないだろう……。
そんな事を思い浮かべながら唯月は重いため息を吐き出した。
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