転生したらシンデレラの義理の姉でした!? ~悪役令嬢まっしぐらです~

日向雪

文字の大きさ
23 / 158

【二十二話】貴族の令息達

しおりを挟む




 私が座っていた読書スペースのテーブルは、悠に十人くらい座れる大きなものだったので、相席するのは普通の事だと思う。

 実際に市立図書館に勤めている時も、そんな大きなテーブルに一人で座っていた人はいなかったし。







 でも、これは少し不自然。

 最初は好奇の目に晒されているだけだったのだが、遠巻きは段々と近づいて来て、私の隣に座っていた。





 一人が右側に座って、二人目が左側。

 三人目と四人目が正面に座る。





 まあ、ざっと囲まれた形になりましたよね。

 あからさまです。







 ここにいるのは王立学園の同級生達だ。

 もう卒業を目前として休暇に入っていた。

 何か調べごとがあったのか、それとも配属予定の部署のお手伝いか。







「お久し振りですね、ミシェール様。落馬されたそうですか、その後お加減はいかがですか?」

「お久し振りね、アーロン様。私は何とか体力を取り戻そうとしている所よ?」





 右隣に座っていた貴族令息が話し掛けて来た。

 彼はアッカー子爵家四男坊のアーロン。

 クラスメイトなので名前も顔もインプットしている。

 けど、話しかけられたのは初めてです。ちょっと吃驚。







 言わずもがなカールトン公爵家には、長女のオリヴィア、次女の私、そして三女のシンデレラに長男のキースがいる。





 何が言いたいかというと、婿養子は募集していない。

 婿養子の募集をしていない公爵令嬢に、子爵家令息の四男坊はあまり用事がないらしい。





「ご婚約おめでとうございます。さすがミシェール様だと、皆様が噂していますよ? なかなか命懸けの素晴らしい手管を発揮されたとか」







 手管? 手管てくだって言った?

 商売女が使う手練手管てれんてくだの事でオッケー?

 自分で言うのも何だけど、公爵令嬢には使わない言葉よね?





 馬鹿にしてる?

 蔑んでる?

 言葉の端々にトゲが出てますよ?

 子爵令息様。







「まあ、どうもありがとう。手管なんてイヤですわ。私はいつものお散歩中に、愛馬の様子がおかしくなってしまい、落馬してしまったのですよ?」

「またまた。偶然だなんて策士のミシェール様らしくありませんよ?」





 なんだと、アーロン。

 初めて話したけど、大概失礼な男ね。

 策士だなんて、素で落馬した私がアホみたいじゃないか。





 私は笑顔で返事を返していたし、アーロンの笑顔もまた凄い。

 光の中、満面の笑みとはこのことを言うのかと然もあらん。





 しかし、嫌みには嫌みで返すのが私のルール。

 アーロンが突かれてイヤなところってどこなのよ?







「アーロン様こそ、素敵な令嬢とのご婚約はどうされたのですか? 知りたいですわ。何と言っても入学当初から伯爵家の令嬢や侯爵家の令嬢にお声掛けしていたのではありませんか?」





 彼は容姿、剣、学業に置いて平凡。

 どちらかと言うと、その陰鬱とした視線で下から見て来る所が不気味なのだ。





 貴族の令息だからといって、誰でもが見目形に恵まれて生まれてくるわけではない。

 当たり前だが、容姿とはかなりの確率に置いて偶然の産物だったりする。





 悲しいかな? 美男美女から確実に美男美女は生まれない。

 それ故に、身分よりも容姿は下剋上が起こりやすいのだ。

 怖いわー。





 第二王子やシンデレラは美男美女から生まれた美男美女だが、まあ運が良かったんでしょうね?

 遺伝子って不思議ー。







 貴族が婿養子に望むもの。

 それは大概において、非凡な才だ。

 自分の爵位を継がせるわけだからね。

 それこそ、その道を望むのであれば、首席、次席を狙う勢いで行かなければならない。

 そういう意味ではなかなか世知辛いし、学業の才でも下剋上は起こる。



 アーロンの顔を見ながら、とても失礼な事を考えていた。







 しかも近いのよね。

 ひと席開けて座って欲しいわ。

 なんで真横なの?





 男四人で囲むように座るってなくない?

 威圧しているの?





「殿下はミシェール様に夢中だとか? 毎日通っていると王宮中の噂ですよ。それで体力がお落ちになられたのでは? 男を骨抜きにする技術をお持ちだとか? 一度お相手願いたいものですね?」

「………」







 何? これ?

 昼間の王立図書館での会話?

 正面に座った二人がこちらを見ながらニヤニヤ笑っている。





 一度お相手って?

 私、何度も言うけど生娘なんですけど?

 そんなニタニタした目線で、体中を舐め回すように見ないで欲しい。





「ミシェール様のご自慢の妹、シンデレラ様でしたか? 現公爵夫人の継子の妹君。第二王子様は彼女の恋人だったとの噂です。それを力尽くで寝取ったとか? 王子殿下のお子様を妊娠しているとも聞き及んでいますよ?」 





 噂って凄いのね。

 私、昨日まで生死を彷徨っていたのよ?

 どうしたら妊娠するのか教えて欲しい。





 だが、事実を声高に叫ぶには分が悪い。

 四対一のこの状況で、事実が何かなのかが問題な分けじゃ無い。





 彼らは彼らの本能に従って、私への憎しみをぶつけているのだ。

 私が苦しめば苦しむほど彼らは嬉しい。





 前世でも恐ろしい言葉が合ったじゃないか?





『他人の不幸は蜜の味』





 この概念を最大限に利用して視聴率をとっていた番組はワイドショーという。

 離婚会見とか大喜びで見るよね。

 アレね。





 つまり、私はターゲットだ。

 噂の? もしくは虐めの?

 王子妃ロードを手に入れた。上手いことをやった奴。

 このままじゃ済まさない。せめて不幸になれと。





 出世打ち止め系の令息や。

 第二王子を狙っていた令嬢に。

 私はターゲットにされたんだ。





 ヤバー。

 女も男も嫉妬は怖いのよ?







 王家に嫁ぐってマジ大変だね。

 王妃様神。

 あんなに暖かい微笑みを絶やさずに、王妃様のお勤めに勤しんでいるなんて。





「まあ、そんなおめでたいお話があったら、素敵ですね。結婚と同時に王子様のご生誕? どんな風に育てようかしら? 髪はストロベリーブロンドかしら?」







 婚約話なんて全然進んでいないわけだけど?

 何か悔しいじゃない。

 これでダンスパーティーの日に、断罪されたら、一同拍手喝采だわ。







「でも、アーロン様もお分かりになりますよね? 第二王子様にはもっと素敵な御令嬢がいらっしゃいます。噂はただの噂。私は修道院にでも行き、修道女にでもなりますわ?」

「ご冗談を」

「まあ、冗談ではなくてよ?」





 ウフフ。

 私も満面の笑みで返してやるわ。

 悪女顔だから、結構さまになるのよ?











 図書館は特別な場所。

 硝子を通して、昼の日差しが燦々と当たっていて、明るい場所。

 真っ白な大理石が光を含んで柔らかくなる。

 文化そもの。







 そんな中で、私は令息達と微笑み合っていた。

 顔が引き攣りそうね?



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました

タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。 ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」 目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。 破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。 今度こそ、泣くのは私じゃない。 破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。

処理中です...