転生したらシンデレラの義理の姉でした!? ~悪役令嬢まっしぐらです~

日向雪

文字の大きさ
47 / 158

【四十六話】影は表裏一体

しおりを挟む




「うるさいバカ令嬢」









 私が影さんに呼びかけ続けること百回目。

 とうとう。

 とうとう。





 返事を頂きましたよ!

 私は心の中で小さくガッツポーズをした。







 酷い文句でしたが……。

 やった!





 だってさ、よく人の気配? という曖昧なものの存在について、どうこう言うけど、実際問題どうなの?





 確かに、誰もいない部屋の筈なのに、何かがいる感じがする……。

 そういうものが、気配と呼ばれているものなのだろう。







 しかし…ーー

 影はプロですから(笑)





 気配なんてしねーー。

 って話ですよね。





 これ、第二王子様に言われなかったら、存在に気付いていなかったわね!

確実だわ。





 私は浮かれてわくわくしています。

 初めての生影。





 前世の私の興味が、前面に出て来ちゃっているのね?

 憧れの三大世界の一つが隠密と言っても過言では無い。





 少女漫画でも少年漫画でも一定量あるわよね?

 忍者的な世界観の物語。







 あのラーメンの具みたいなやつとかさー。

 写す瞳みたいなねー。

 同じですけども。







 天井裏の人は男性だったわ。





「うるさい、バカ令嬢」とか言ったし。





 女の子じゃなかった。

 オジサンでもなかった。

 若い男の子だった。







 どんな服を着ているのかしら?

 私の希望だと忍び装束なのだけど。





 この世界は和風ではないから、それはないわよね。

 洋風の影ってどんな格好が定番なのかしら?





 話してはいけないルールなら、百回話し掛けたところで、返事は返って来ない筈だ。

 返事をしてくれたのだから、話して良いルールなのよね?





 そう理解するわ。





 プロ中のプロですものね。

 そうと決まったら話さない手はないわ。





「ねえ、影さん。降りて来てよ。お話しましょう」





 私は唯一の私物、バスケットを振った。

 中には干からびたローストビーフのサンドイッチが入っている。





「これね、今から食べようと思うのだけど、毒が入ってるのかも知れないの? どうしたら良いと思う?」





 しーん。





 返事なしかい。

 食べちゃうわよ?





「朝、公爵家のシェフに言って作ってもらったのよ? でもユルい家だから、いつ毒が混入するか分からないじゃない? 私、命狙われてるし? 毒って有り得るわよね?」





 しーん。





 むむむ。

 なかなかしぶといわね?





 私はバスケットを開けて、ローストビーフのサンドイッチを天井に向かって振ってみる。





 これでどうよ?

 私はアーンと口を開けて見せる。







 しーん。





 降りて来ないわね?

 食べるわけないって思ってる?





 まあ、食べるわけないけど……。

 でもお腹は空いてるのよ?





 そして暇なんだけど?





「ねえ、何で私、命を狙われてるの? そこが分かった方が対策の立てようがあると思うんだけど? 知ってたら教えてよ?」





 しーん。





 無視ですか、そうですか。

 うーん。

 どうしようね?





 何かさ?

 人がそこに確実にいるはずなのに、気配がしないというのは、違和感を受けるわけ。





 いるのかいないのか。

 ふとした瞬間に存在を忘れてしまう。





 私はローストビーフのサンドイッチを見つめる。

 テーブルに肘をついて、サンドイッチを見つめ続ける。





 実は、私にとってかなり切実になって来ているのが、食物摂取だ。

 朝から水分しか取っていない。





 ちょっとした後遺症よね。

 コレって。





 死にかけた後遺症。

 殺されかけた後遺症。





 怖いわけだ。

 生死を彷徨うのが。





 怖いのよ。

 飼い葉に入れられた何かが。







 エポルに何の罪があったのだろう?

 有りはしない。

 動物なのだから。





 いつもの餌を食べただけよね。

 くれる人を信じて。





 もっと突き詰めると、飼い主である私を信じていた。

 私にもっと注意力があったら、結果は違っていただろう。





 ローストビーフのサンドイッチは朝作ったもので。

 お昼に食べようと思っていたから、夜の今ではもう食べ時を逃している。







 やりきれないわよね?

 動物を攻撃されるのって。





 人を殺そうと思う人って、必死なのね?

 何をやっても許されると思っているのかしら?

 動物の命なんて、どうでも良くなるの?





 それはそうよね?

 だって人間を殺そうと思っているのだもの。





 倫理観なんて失ってる。

 そんな人間と、どうやって戦うのかしら?







 正気を失った人間と、正気を保った人間。

 どっちが強いと聞かれたら、それは自ずと答えが出るわ。







 影さん。

 私もあなたも、きっと縛りが多いのでしょうね?







 私はローストビーフのサンドイッチを口に入れて一口噛む。



 パンから水分が抜けてパサパサなんですけど?











しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました

タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。 ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」 目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。 破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。 今度こそ、泣くのは私じゃない。 破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。

処理中です...