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【五十三話】それで犯人は?
しおりを挟む「セイの母親が誰なのかというのは、この際置いておくわ」
「お前、何の話してるんだ? バカなの」
影は呆れたように溜息をつく。
もう「眠れ」とは言わなくなったわね?
諦めたのかしら。
もちろん第二王子様を狙っていた令嬢となると、何人かは名前を挙げられる。
何と言っても学園が同じなのだから。
私はセイに向かって令嬢を二三人挙げでみた。
うんともすんとも言わないわね。
「違うの?」
「違うとは言ってないダロ」
ふーん。
違う訳ね。
取り敢えず、顔が浮かぶ限り言ってみたが、どれも反応なしだ。
影に取ってポーカーフェイスは造作もないことだろうが、ポーカーフェイスすら必要なしという塩梅。
もっとドロっとしてそうなのよね?
出所。
私の毎日の散歩コースを知っていたりさ。
粘着質な感じがするの。
「ねえ、第二王子様にストーカーはいなかったの?」
「いないとは言えない」
いたのか……。
ストーカーはなー。
学園ではおくびにも出していない可能性が高い。
いやもう、学園の同級生の洗い出しは終わっているか。
ストーカーらしき存在も押さえてるとなると。
それ以外、影でも想像出来ない意外な場所から考えて行く方が良いのかも。
後手、後手ってイヤよね。
インセンティブを取りたいって事。
「ねえ、セイ」
「却下」
「まだ何も言ってないわよ」
「言わなくても分かるんだよ」
「じゃあ、話は早いわ。やりましょう」
「やらないし。お前、俺が殺されてもいいのかよ」
「殺されるのは私でしょ?」
まあ、第二王子様にという意味なのだろうけど。
殺すわけないし。
「ものは試しよ、何でもやってみましょう?」
「カールトン家のミシェール様? 憶えておいて下さいね。物事には取り返しの付く事と、付かない事、二種類あるんですよ。理解出来ますか?」
「もちろん理解しているわよ?」
でも、待っていたって死ぬだけなら、有意義に行きたいじゃないの。
性に合わないのよね。
「私ね、やりたい事をやる主義なの」
「……知ってます」
「あなたってなんでも知ってるのね?」
「嬉しくない褒め言葉だね」
私はセイをみながらニコニコと笑った。
やるわよ。
良いこと思い付いたんだから。
やらずに死ぬなら、やって死ねよ。
やらなかったら死ななかったのになんて可能性は考えないわ。
死んでるんだから、考えられないしね!
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