転生したらシンデレラの義理の姉でした!? ~悪役令嬢まっしぐらです~

日向雪

文字の大きさ
136 / 158

【百三十五話】吸血鬼の胸に楔を2。

しおりを挟む




 私達はもう、その姿のまま倒れるように眠り、昼下がりまで寝ていた。





 ええ。

 王子様付きのメイドは来ませんでしたよね?





 この時間まで来ないなんて事は有り得ないので、つまりは王子様本人から事前に含みあったと。そういう事です。





 無駄に心配するからさー。

 私にも事前通告して欲しいと切実に思う。





 お昼の暖かい光が差し込む頃、ふわふわのベッドから起き出して、身支度を調え、そこで初めてメイドを呼ぶ。





 ここまで高貴な身分になると、身支度自体メイドがやってくれるものなのだが、身支度という程の身支度ではなく、衣服を整えるだけ。





 その後は部屋に戻り、本格的に身支度を調え、私の部屋で一緒にブランチを取る事にしていた。







 朝昼兼の食事と言えば聞こえが良いが、普通に作戦会議みたいなものだ。





 オリヴィアお姉様は私のお姉様なので、会う事に許可なんかいらない。

 招待状を届けるだけだ。





『今晩、私の婚約者をお姉様にご紹介します。お食事を一緒に致しませんか?』





 それだけ。急も急だが家族にそこまで気を使う必要もないだろう。

 冷静に考えれば、姉と妹がご飯を食べるだけの話。





 運ばれてきたブランチはクロワッサンと紅茶。苺ジャムと生ハムだった。

 前世でも有り得そうな普通にお洒落なランチだ。





 おいしそう。

 クロワッサン。

 この異世界にもあるのね?





 パン生地とバターを平らにして交互に挟んで行くのだが、バターの量が半端ではない為、とても贅沢な食べ物だ。





 その上、この世界には電気オーブンもガスオーブンもないので、直火オーブン。

 直火は当然火力の調整が難しいのだが、善くぞここまで焦げずに出来た! と拍手喝采を贈りたい。





 バターとは油なので大変焦げやすい。

 クロワッサンは、層にして重ねた生地を丸めて焼く訳だが、火が入るとバターの層だけが溶ける。





 その溶けたバターがパンの層と層に空間を作りながらパン生地の表面に付着する。一層一層を油でコーティングすることによってカリカリに仕上げるのだ。





 嬉しい。

 幸せ。





 食文化が高い事って、イコール幸せに繋がるわよね?

 刹那的な幸せなのだけど、大切だと思う。





 これを食べ終わったら、シンデレラに会いに行こう。

 沢山差し入れを用意したから、使用人を一人連れて。

 あの地下牢にまた行こう。





 私もルーファスも、海洋王国フィラルに留学が決まっているから、そんなに悠長にはしていられない。







 私は目の前で綺麗な造作で食べている男の人を見た。

 まるで絵に描いたようなテーブルマナー。





 私も公爵令嬢だから、それなりには優雅に食べられるのだが、彼もまた王族なので子供の頃から厳しく躾けられたのだろうと思う。





 目が合って微笑まれると、私は頬が紅くなる。





 私達ったら、こんな陽射しが降り注ぐ王子宮の一角で、なんで一緒に食事をしているのかしら?

 同じ食卓に着いて、同じ物を食べて、目が合ったら微笑み合う。





 ちょっとくすぐったいわね。

 くすぐったいのよ?





 昨日の夜はあんなことまでしたのに。

 ……あんなに、肌と肌が触れ合ったのに……。





 今はこうして、一緒に食事を取って笑っている。





「ミシェール」



「何?」



「このパンがお好きなら、もっと頼みましょうか?」



「うーん。好きだけど、そこまで沢山は入らないわ」



「そう?」



「うん」



「……ミシェールは痩せてるから」





 確かに。

 私は痩せすぎよね?





 美味しいんだけど。

 一口一口ゆっくり食べて、やっと一個が限界。





 前世で言うところの摂食障害か……。

 そこまでは行っていない気がするけど。





 胸もさー。

 寄せて寄せてグッと上げたい所だけど。





 背中にも脇にも肉ないのよねー。

 シンデレラみたいにふっくらとした丸い胸って柔らかそうで憧れる。





 触ったらマシュマロみたいに蕩けそうで気持ち良さそう。





 一緒に温泉に入って、一緒のベッドで寝てみたい。

 あの胸を枕にしたいわー。





「……ねえ、ルーファス」



「なんですか?」



「ふっくらとした丸みのある胸に憧れはないの?」



「…………」





 なんとなく口を突いて出た質問だったのだが、ルーファスが固まってしまった。





「……女性の胸の話ですか?」



「そうよ? 具体的に好みはないの?」



「…………」



「丸くて、柔らかそうで、ふわふわしてて、私はそういうのに憧れるんだけど」



「……ありません。そんな憧れ」



「ないの!」



「ないです」



「なぜ?」





 私が男だったら丸くてふわふわ派だ。

 もしかしなくとも、私がキースの立場だったらシンデレラ一択だったかも知れない。





 私ってシンデレラ派なんだ?

 見ているだけで眼福だものね。





「……何故と問われても困りますが、ミシェールが好みなので、ミシェールの胸が好きという流れでしょうか?」



「…………」





 私の胸ねー。

 こんなにつるっつるなのに?





「そういう精神的なものではなくて、好みよ好み」



「別に精神論で言っている訳ではありません。ミシェールの胸が好みというのが結論です。ミシェールの胸がふわふわならふわふわ好みになり、慎ましかったら慎ましいのが好みになる。ミシェールの胸というものが基軸になるという事です」





 え……ーー。





 後付けみたいな好みなのね……。





 私達、作戦会議の前に、どうしようもない前話しちゃったわね。

 もう私の胸の事は忘れて下さい。

 昨日触られているので、めちゃくちゃ感触がリアルなのよね?







 私はふわふわ派。

 第二王子様はなんでもオッケー派って事にしておきます。





 しかしーー

 基本、悪役令嬢って胸有るのに………。

 残念よねー………。






 第二王子様。
 あなたの手の感触が、左胸に残っています。




     
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました

タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。 ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」 目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。 破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。 今度こそ、泣くのは私じゃない。 破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。

処理中です...