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【百三十四話】吸血鬼の胸に楔を。
しおりを挟む「……ルーファス。私ね胸の奥に楔を打ち込みたいの」
私達は依然としてベッドの上であられもない姿をして、真剣な話し合いを進めていた。
………。
いや、下着姿なのは私だけなのだが……。
これってさ。王子付きのメイドが入って来たらどうするのかしら?
私は凄く恥ずかしいけど……。
ルーファスは涼しい顔で、
「公爵令嬢の着替えを手伝うように」
とか言いそうじゃない?
ああ……。
可能性としては、結構高いから、服を着た方が良いかしら?
いやいやいや。
今、ゲームの最終局面ですから?
ここで着る訳にはいかないのよ?
公爵令嬢としての矜恃ね??
「……ルーファス、私、分からなくってよ?」
下着の裾をひらひらと弄ぶ。
「最後のお願いを聞いてくれたなら、私はこの下着を脱いで、あなたの胸に飛び込んで、身も心もあなたのものになるのよね?」
私は少し小首を傾げる?
「……あなたは、何を躊躇うの?」
私はスリップの肩を少し落として、彼の元に寄る。
「………キスして」
ルーファス唇がチュっと頬に触れる。
「………口にして」
唇に彼の温かい唇が触れる。
「……もっと深くして……」
彼の口づけが深くなる。
私の唇を割って、絡み付く。
彼の手が私の左胸に触れた。
………何かさ……。
触れ合った部分から溶けて行きそうで。
不思議なの……。
なんだか心地良い……。
彼に触られた部分が熱くなる。
私と彼は、七年前に薔薇の温室で出会った。
その頃、私達はお互いに子供で。
こんな大人の関係も。
何も知らない子供だったわね?
あの頃のあなたはとても可愛くて。
私は女の子だと思ってしまったのよ?
私はあの頃の幼かった二人の関係を思い出して、なんだかクスリと笑ってしまった。
子供時代を知っている男女の関係って、こんな感じなのかしらね?
「……ミシェール」
「………?」
「……誘惑してくる理由は?」
「……好きだからよ?」
「違いますね? お願いを聞いて欲しいからですよね?」
「………それもあるけど?」
「これ、オッケーしてないんで無効ですよ」
「!?」
なんですってっ!
無効ダメ。
だってなけなしの体を張ってるんですよ?
そんな意地悪言わないで下さい。
「ルーファス、待って! 無効なら止めて」
「……ここまで来たら、止まりません」
「ダメ。返事をしてからにして」
「返事は駄目と言った筈ですが」
きゃーーー。
止めて。
ストップよ、ストップ!
「待って、お願い」
「小悪魔みたいで、可愛かったねミシェール」
「無理をしてたのよ」
「知ってます」
「じゃあ、止めて」
「ダンスパーティーの後に結ばれるのも、いかにもで良いじゃないですか」
「いかにも過ぎてイヤよ」
「遅かれ早かれ結ばれます」
「早い必要はないわ!」
「どっちでも結果は同じという事ですよ?」
「イヤイヤイヤ。婚約をしてからが良いわ」
「婚約は既に七年前にしています」
「それは内々の口約束っていうのよ」
「それも婚約の一種です」
「私が言う婚約は大々的に国内外に発表されたものを言うの」
「……ふーん」
「会わせてくれる?」
「会わせません」
「勝算はあるわ」
「……ありません」
「あるの。あるの。あるの」
「カールトン公爵家のオリヴィアですか?」
「そうよ」
「オリヴィアはあなたの持っている切り札ではありませんよ」
「妹の為に一肌脱いでくれるわ」
「危険を顧みず一肌脱ぐタイプには見えません」
「…………」
痛いところを突いてくる。
確かに……。次女と三女の為には一肌脱いだりはしない。
でも。
弟の事は可愛がっていたのだ。
「第三王子様の為に一肌脱いでくれるわ」
「第三王子は臣籍降下予定の王子ですよ? 身分が違い過ぎます」
くーっ。
「じゃあ、先にオリヴィアお姉様よ。お姉様に会って確認する。それから考えるわ」
四人で晩餐会が出来ないなら、三人よ。
取り敢えず三人で作戦会議。
その上で最善を導き出すわ。
オリヴィアお姉様さえ味方についてくれれば鬼に金棒よ。
だってメデューサですから。
怖い物なしなんだから。
カールトン公爵家の隠し玉よ?
全然隠れてないけども!
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