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【百五十四話】閑話5 王族を嵌める罠。
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海洋王国フィラル第一王女視点です。
×××××××××××××××
父から託された膨大な資料を一枚一枚丁寧に確認していた。
父の婚約の儀に反対した貴族の面々。
賛成した貴族の面万。
賛成した貴族の親族。
具体的に言うと、婚姻者の出生国や兄弟姉妹の婚姻先。
妻が自国出身者か他国の貴族かで、かなり立ち位置が変わってくる。
血縁が出来た以上は影響がある筈だ。
恐妻家なら尚のこと。
自分の出自国、領地に有利に働きかける筈。
良妻賢母でも、強かに夫をコントロールする事がある。
知らず知らずに他国に有利な行いをしてしまうのだ。
人間という者は、自分自身の価値観を有している。
けれどーー
立場に寄って意見は変わる。
変わらないと思っている人間がいたら、その人は何にも属していないのだろう。
私がアッシュベリー王国の姫に生まれていたら……。
王国の姫としてアッシュベリーの国益優先だ。
手元に転がって来た『精霊の御子』等という最強カードは決して手放さない。
先ずは国防が違う。
精霊が守る国というのは、攻める事が大変困難な訳だ。
それはもう自然物を敵に回さなければいけないのだから。
フィラルで言えば、敵兵の水の補給線を絶ったりする。
つまり、攻めに加わっている兵士に水が回らない。
水がなければ生きていられない。
兵士は引き返すしかないのだ。
地味だか大変効果的な作戦だ。
なんといってもフィラルの兵士は無傷で済むのだから。
そして豊穣。
明らかに水の精霊ウンディーネによるものだろう。
いつでも毎年毎年豊かに実る麦や果物。
飢饉の恐怖がないなんて、通常の人間の力では考えられない。
もちろん地の精霊の守護を受けし国ほどではないにしても、水の精霊の力も素晴らしいものだ。
ウンディーネは今、どこにいるのだろうと考える。
アッシュベリー国に精霊の御子が生まれて十六年経ったが、彼の国が精霊の加護下に入った訳ではない。
それは見れば分かる。
完全にウンディーネは国替えを行った訳じゃない。
彼女は何百年も共に過ごしたフィラル国を愛している。
国をそうそう変えられるものじゃない。
精霊とは不変の存在だ。
それが故に心変わりを起こさない。
きっとフィラル国の海洋深くに沈んでいる気がする。
そこでずっとずっと泣いているのだ。
建国の時に愛し合った王。
王は死んでしまったけれど、ずっとずっと子供の中に王を見ていた。
人と精霊とでは時間の流れが違う。
無限の命を有する者と。
有限の命を精一杯生きる者。
愛しい人が先に逝ってしまい。
精霊は、愛しい人が大切にしていたものを守り続ける。
ウンディーネは国付きの精霊になりたいのではない。
王と精霊が結んだ絆を信じているのだ。
まさか自分の力を顕現させられない相手と婚姻を結ぶなんて夢にも思っていなかった。
いつだってーー
ウンディーネの祝福を受けてから、婚約するものだから。
いつだってーー
水は王に優しかった。
あんな風にーー
血の中に怒りを込めてーー
愛し子を攻撃する事などなかった。
私がアッシュベリー王国の姫だったら、決して精霊の申し子を手放さないけれどーー
私は海洋国フィラルの王女だからーー
何が何でも取り戻す。
フィラルの持っているカードを慎重に切って、私は私の国の為に、最善を尽くすのだ。
そうして海の底に迎えに行くのよ?
「ごめんね。一緒に帰ろう」って。
×××××××××××××××
父から託された膨大な資料を一枚一枚丁寧に確認していた。
父の婚約の儀に反対した貴族の面々。
賛成した貴族の面万。
賛成した貴族の親族。
具体的に言うと、婚姻者の出生国や兄弟姉妹の婚姻先。
妻が自国出身者か他国の貴族かで、かなり立ち位置が変わってくる。
血縁が出来た以上は影響がある筈だ。
恐妻家なら尚のこと。
自分の出自国、領地に有利に働きかける筈。
良妻賢母でも、強かに夫をコントロールする事がある。
知らず知らずに他国に有利な行いをしてしまうのだ。
人間という者は、自分自身の価値観を有している。
けれどーー
立場に寄って意見は変わる。
変わらないと思っている人間がいたら、その人は何にも属していないのだろう。
私がアッシュベリー王国の姫に生まれていたら……。
王国の姫としてアッシュベリーの国益優先だ。
手元に転がって来た『精霊の御子』等という最強カードは決して手放さない。
先ずは国防が違う。
精霊が守る国というのは、攻める事が大変困難な訳だ。
それはもう自然物を敵に回さなければいけないのだから。
フィラルで言えば、敵兵の水の補給線を絶ったりする。
つまり、攻めに加わっている兵士に水が回らない。
水がなければ生きていられない。
兵士は引き返すしかないのだ。
地味だか大変効果的な作戦だ。
なんといってもフィラルの兵士は無傷で済むのだから。
そして豊穣。
明らかに水の精霊ウンディーネによるものだろう。
いつでも毎年毎年豊かに実る麦や果物。
飢饉の恐怖がないなんて、通常の人間の力では考えられない。
もちろん地の精霊の守護を受けし国ほどではないにしても、水の精霊の力も素晴らしいものだ。
ウンディーネは今、どこにいるのだろうと考える。
アッシュベリー国に精霊の御子が生まれて十六年経ったが、彼の国が精霊の加護下に入った訳ではない。
それは見れば分かる。
完全にウンディーネは国替えを行った訳じゃない。
彼女は何百年も共に過ごしたフィラル国を愛している。
国をそうそう変えられるものじゃない。
精霊とは不変の存在だ。
それが故に心変わりを起こさない。
きっとフィラル国の海洋深くに沈んでいる気がする。
そこでずっとずっと泣いているのだ。
建国の時に愛し合った王。
王は死んでしまったけれど、ずっとずっと子供の中に王を見ていた。
人と精霊とでは時間の流れが違う。
無限の命を有する者と。
有限の命を精一杯生きる者。
愛しい人が先に逝ってしまい。
精霊は、愛しい人が大切にしていたものを守り続ける。
ウンディーネは国付きの精霊になりたいのではない。
王と精霊が結んだ絆を信じているのだ。
まさか自分の力を顕現させられない相手と婚姻を結ぶなんて夢にも思っていなかった。
いつだってーー
ウンディーネの祝福を受けてから、婚約するものだから。
いつだってーー
水は王に優しかった。
あんな風にーー
血の中に怒りを込めてーー
愛し子を攻撃する事などなかった。
私がアッシュベリー王国の姫だったら、決して精霊の申し子を手放さないけれどーー
私は海洋国フィラルの王女だからーー
何が何でも取り戻す。
フィラルの持っているカードを慎重に切って、私は私の国の為に、最善を尽くすのだ。
そうして海の底に迎えに行くのよ?
「ごめんね。一緒に帰ろう」って。
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