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三話 『神の審判』3
しおりを挟む執務室を後にしたリオは、王宮内にある自室に引き取り、やり残した事などを確認しつつ、よくよく考えてみれば自分が豚になる訳ではないので、引き継ぎ作業は明日も出来るのではないかと気がつき、意外にも平静になった。
明日は正装をして神殿に出向かねばならない。
儀式なので忙しい。
リオは豚を抱えて神の神託を受けるのだろう。
朝一に王子宮に豚を迎えに行かねば。
そんなことを考えながら、眠りについた。
◇ ◇ ◇
朝の日差しは眩しかった。
カーテンを引き忘れたのだろうか?
リオがゆっくりと目を覚ますと、隣に誰か人がいる感触がした。
よくよく見るとそれはアシュリーである。
子供の頃は、よくリオのベッドに潜り込んで来たが、さすがにこの歳になってからは珍しい。
まあ、母親、いわゆる第七側妃殿下が、出産と同時に亡くなっているので、彼も寂しかったのだろう。
「豚になってないな」
リオは首を傾げる。
蛙でももちろんない。
猫でもない。
人のままである。
審判は確かに下ったはずなのに?
掛けていた毛布をめくり、細部まで確認するが、下半身が馬という事もない。
そうこうしている内にアシュリーが目を覚ます。
「おはよう、リオ」
「おはよう?」
アシュリーはリオを見て、蕩けるような視線を送って来る。
なんだ気持ち悪いぞ。
とっとと起きて準備でもするか。
「お前、豚になってないな?」
「そうだね」
「蛙でもないな?」
「そうみたい」
「調子はどうだ?」
「至って健康そのものだよ」
リオは首を捻る。
こんなポンコツ王子でも見逃された?
まあ、人畜無害ではあるが……。
しかし神託の間には行かねばならない。
立ち上がると、用意された衣装に身を包もうとして異変に気が付いた。
袖が長い。
裾が合わない。
総じて大きい。
何だ?
コレ?
こんなのセレモニーには着られないレベルだ。
そう言えば?
髪の毛が?
リオは視界に掛かる自らの髪の毛に違和感を憶える。
長い……。
なんなんだこの長さは?
昨日まで成人男子の平均的、つまりは襟足にも届かないくらいの長さだったよな?
オルコット王国は十七歳で成人。
そしてリオは十九歳。
成人男子とは思えぬ華奢な手足を目の当たりにして、リオの体は小刻みに震えた。
ヤバイ。
何かリオの身に途轍もなく恐ろしい事態が起こっているようにしか見えない。
「アシュリー」
小さく震えながらリオはアシュリーを振り返る。
彼は小さく笑っていた。
そうして言ったのだ。
「リオが女になってる」
と。
確認して見れば、髪は腰まで届く程に伸びていて、腰は矢鱈に細い。
怖々胸に手を当ててみると、柔らかい膨らみがやけにリアルにーー
「俺が女になってる!?」
王子が豚になる訳でも、蛙になる訳でもなく、王宮魔導師次官が女!?
そんな事は聞いた事がない。
「ひっ」
小さく悲鳴を上げたリオはそのまま気を失うという失態をしでかした。
気を失ったが故に、事態は取り返しのつかないものになっていただなんて、この時は知る由もなかった。
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