悪役令嬢は桜色の初恋に手を伸ばす

夜摘

文字の大きさ
26 / 33

第26話 新ルート突入!?~お城暮らし編~

しおりを挟む
 ――――――――――どうしてこうなった。


 ある意味で、波佐間悠子としての記憶を取り戻した瞬間から"それ"の連続だった気もするけれど、今回のこれは本当の本当に"そう"だった。
 夢魔に取り憑かれたことからして、ゲームにないイベントだし、イレギュラーな出来事でびっくりしたんだけど…、それも夢魔を(アリシアたちが)倒して一件落着チャンチャン♪では終わらなかった。

 如何わしいことをされたされないはプライバシーの関係上伏せられたらしいけれど、事実として"王子の次期婚約者候補の一人であるエリスレアが魔物に襲われた"というのは発覚すると国としても大事なことだった。(…だから私も出来るだけ内密にことを済ませたかったんだけど…。)
 だから、この話がどこからか王様の耳に入ってしまったとかで、王様やその重臣たちの間では大ごとになってしまっていたのだ。
 私はもちろんアリシアだって誰かに話すはずがない。マーニャだってそうだ。
…と…なれば…と、私はメイドのマリエッタを締め上げたけれど、そもそもマリエッタはあの夜にマーニャを部屋に招き入れた後、さっさと部屋に戻るように命令したし、実際戻ってきたのは朝になってからだったから、詳細を知るはずがなかった。(朝、アリシアが部屋にいたことでびっくりされたくらいだ。)

 じゃあ一体誰が…?と訝しむ私だったが、ふと思い当たる人物の顔が浮かんできて、あー…と納得してしまった。 
 ―――そう、この国には敵国の敏腕スパイで密偵という優秀な人材がね…いらっしゃいましたのよね…。
 私がうっかり好感度を上げすぎたせいでちょっと変な感じになってしまっているゲームでの攻略対象キャラの一人・王子クルーゼの従者ジェイドである。

 そして、あの件のことが王様に知られてしまってから、私とアリシアは城へと呼び出され、これから私や王室関係者の周囲で夢魔が取り付いている者がいないかどうかの調査が行われることになったと言う話を聞いた。
 そこで私とアリシアについては、もしもの時に備えた一時避難ということで、これから暫くは城で寝泊まりをすることになってしまったのである。
 もともと城にはなんだかんだと顔を出す機会は多かったし、別段大騒ぎすることではないのだけれど……気がかりなことがあるとすれば、先のジェイドのこと。
 彼は設定的には敵国のスパイだ。
 魔物が私――…王族の関係者にまで近づいてきていたという事実を王様に話すことは、彼の仕事的にはメリット足りえることだろうか?自分の身に危険が及ぶことを危惧して早めの対策を、というのならまだわからないでもないが、頭の良い彼ならもっと他にやりようがある気もするのだ。
 例えば国の悪い噂を立てるためなら、王様に伝えるより先に、もっと――――――――――…

「…なんて、考えても仕方がないことですわね…」

 はふんと、息を吐きながら呟いた。
 色々考えることは出来ても答え合わせは難しい相手だ。少なくともゲームにおいては、その答え合わせをしようとする行為は彼の告白イベントに直結してしまう。
(自惚れみたいなことを言うのに抵抗があるけど)好感度が上がり過ぎたことで彼が私を心配して王様に密告したとするなら、さすがに私への感情が高まり過ぎている気がする…。
 …と、なれば私のやるべきことは一つ。

 彼の私への好感度を、下げる――――――――――!!!

 本当はもっと早くやらなければ行けないことだとわかっていたけれど、わざわざ自分から嫌われる為の行動をするというのはやはり気が進まなかったのと、単純にアリシアがここに来てから彼女に夢中になり過ぎていたことで疎かになっていた好感度調整(下げる方)…。
 アリシアと私が二人とも幸せになる未来のためには何をしたらいいのか、何を目指せばいいのか…まだ結論が出しきれない私だったが、それはそれとして、この調整はやらなければならないことだ。

 お城でのお泊りイベントなんて、ゲームではなかったルートへの突入だ。
 アリシアは勿論ジェイド自身とも生活場所が近くなる。この機会を逃す手はないだろう。

 …と言うことで、始まった私のお城暮らし。
 基本的に、生活のすべてを城の中で行うということ以外は普段の暮らしと変わらない。
 王妃になるための様々な知識や作法を学ぶ時間だったり、魔法や楽器、歌、ダンスのレッスン等々…。
 これを私は幼いころからやっているわけだから特別に思わないだけで、急にお妃候補となったアリシアはそれを0から1年間でやらなければいけない分、相当ハードスケジュールだと思う。
 私と比べて、彼女はだいぶ世話しなくあちこち走り回って勉強や訓練に勤しんでいるようだった。

「あ、エリス!良かったら晩御飯一緒に食べない?お城のお部屋ってすごく広いし…部屋で一人で食べるのって、なんだかちょっと寂しくって…!」

 しかしそんな風に忙しい中でも、私の顔を見るとこんな風に人懐こく駆け寄って来てくれる。
 私は、その度についつい表情が緩んでしまうのだ…。
 …とは言え、彼女の顔を見ると"あの夜のこと"を思い出して、ついつい意識してしまうのだけど、彼女の様子は変わらない。
 それにちょっとやきもきしてしまったりもするんだけど…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

前世では地味なOLだった私が、異世界転生したので今度こそ恋愛して結婚して見せます

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 異世界の伯爵令嬢として生まれたフィオーレ・アメリア。美しい容姿と温かな家族に恵まれ、何不自由なく過ごしていた。しかし、十歳のある日——彼女は突然、前世の記憶を取り戻す。 「私……交通事故で亡くなったはず……。」 前世では地味な容姿と控えめな性格のため、人付き合いを苦手とし、恋愛を経験することなく人生を終えた。しかし、今世では違う。ここでは幸せな人生を歩むために、彼女は決意する。 幼い頃から勉学に励み、運動にも力を入れるフィオーレ。社交界デビューを目指し、誰からも称賛される女性へと成長していく。そして迎えた初めての舞踏会——。 煌めく広間の中、彼女は一人の男に視線を奪われる。 漆黒の短髪、深いネイビーの瞳。凛とした立ち姿と鋭い眼差し——騎士団長、レオナード・ヴェルシウス。 その瞬間、世界が静止したように思えた。 彼の瞳もまた、フィオーレを捉えて離さない。 まるで、お互いが何かに気付いたかのように——。 これは運命なのか、それとも偶然か。 孤独な前世とは違い、今度こそ本当の愛を掴むことができるのか。 騎士団長との恋、社交界での人間関係、そして自ら切り開く未来——フィオーレの物語が、今始まる。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

悪役令嬢だけど、男主人公の様子がおかしい

真咲
恋愛
主人公ライナスを学生時代にいびる悪役令嬢、フェリシアに転生した。 原作通り、ライナスに嫌味を言っていたはずだけど。 「俺、貴族らしくなるから。お前が認めるくらい、立派な貴族になる。そして、勿論、この学園を卒業して実力のある騎士にもなる」 「だから、俺を見ていてほしい。……今は、それで十分だから」 こんなシーン、原作にあったっけ? 私は上手く、悪役令嬢をやれてるわよね?

処理中です...