陽射しにエスケープ

言うような海

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白んだ陽射し

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上京して五年ぐらい経つが、未だに生き急いでいる感じに慣れない。でも今日はなんか良い感じだ。最近言わなくなっていた、「行って来ます」も連呼したい気分だ。ゴミ袋を回しながらアパートのゴミ捨て場へ持って行き、駅へと向かう。いつもなら早足のサラリーマンに抜かされる頃なのになぁ、とぼんやりと思いながら腕時計に目をやると、少しむくんだ腕しかなかった。慌ててスマホで時間を見ると、8時25分。腕時計を取りに帰らなくても多分遅刻だ。すぐに上司に電話した。今までの上司なら腕時計を着けないぐらいなんて事なかったのにと、中々電話に出ない事も相まって苛立ちが募る。「あのぉ、もしもし高梨です。あの、今日」「また何か忘れたんですか。今日で何度目ですか。社会人失格ですよ。前の人は優しかったらしいですが、ほんとしっかりして下さいよ」確かに事実だ。だけどちょっと言い過ぎじゃない。確かにミス多いし、それを愛嬌で何とかしてきた自負はある。だけど前任の杉井さんは、ただ甘かった訳じゃない。その広い懐で小さなミスより、大きな結果へと背中を押してくれる様な人だった。お前みたいに小さな事をネチネチと言ってくる人じゃ、けしてなかった。だからお前が上司になってから、気の良い山田さんも、優しく教えてくれた山岡さんも、みんな辞めたんだろ。「もう辞めます。いや今日辞めます」「え、そそこまでは。しかも今日って」「辞めます」その瞬間電話をぶん投げた。殴りつける様な心臓の音が、力み過ぎた腕が、徐々にニュートラルな自分へと戻って行く。割れそうに痛い奥歯に、半年前に終わった歯列矯正を思い出した。ついでに、たまには感動的な映画でも見て泣いた方がいいわよと言う母の言葉も思い出した。
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