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文化祭当日の朝。祐のスマートフォンから通知音が止まることなく鳴り続けている。あまりの不快さにスマートフォンを手探りで探しあてると電源ボタンを押して画面を点灯させた。時刻を見ればアラームが鳴る1時間前だった。欠伸をしながら鳴り止まないグループメッセージを見れば何十件ものメッセージが届いていた。佐々原、波多野、木戸は今日の文化祭を心待にしていたようで、『眠れなかった!』『私服で行く?』『緊張して飯食えねぇ!』等とまるで遠足の前日のようなやり取りをしている。祐は返信せずスマートフォンをシーツの上に投げて枕に顔を埋めた。その間もスマートフォンは鳴り止む事はなく、通知音が耳に届く。あまりのしつこさに根負けして渋々ベッドから起き上がると仕方なく支度を始めた。
吏都の学校の校門前で待ち合わせの約束をしていたが、祐が5分前に到着するとすでに4人は到着していた。
「祐、おせぇよ!」
「はあ?まだ約束の時間前だろ?」
「俺は1時間前に来ちゃった!」
「お前ははえーよ!」
「いいのかな?神聖な聖域に足を踏み入れても?」
「お前は落ち着け!」
「はい!集合!」
佐々原が集合を掛けると波多野と木戸が祐と蜂谷の肩を掴み円陣を組む。
「いいか、お前ら!抜け駆けは無しだ!タイプの子を見つけたら報・連・相を忘れるな!」
「(波多野・木戸)おぉー!!!」
「行くぞー!!!」
「(波多野・木戸)おぉー!!!!!」
気合いを入れる掛け声が終わり円陣が散らばると佐々原、波多野、木戸は校門の前で「お願いします!」と試合前のように大声で挨拶をし、一礼してから敷地内に足を踏み入れた。その後ろを祐と蜂谷が少し距離を置いて歩く。
「あいつら、試合でもしにきてんの?」
「さすが元サッカー部だね。」
「脳筋共が。」
「はは。数ヶ月前までサッカー三昧だったからな。せっかく来たんだし、楽しもうよ。」
浮かれた3人とは反対に祐はため息をついている。蜂谷は3人と祐の間の中和を取ろうと祐に前向きな声を掛ける。祐は校門を入ってすぐに模擬面の地図が書かれた看板に気付いて立ち止まり眺めていると、茶道部の文字に目が止まる。
「茶道部どこか分かった?」
「は?知らねぇ。」
「茶道部って着物でお点前してくれるのかな?」
「あいつが着物着たら七五三になるな。」
「そう?似合いそうだけど。吏都ちゃんの着物姿可愛いだろうな。」
「はあ?」
蜂谷が吏都を誉めるのが引っ掛かり思わず蜂谷の顔を見た。すると「顔怖い。」と蜂谷に笑われた。祐はまた看板に視線を戻すが、からかわれているようで苛立つ。そこへ3人が血相を変えて小走りで祐の元へ戻ってきた。
「祐、女子高怖い。」
「は?さっきの勢いどこ行った?」
「だって俺ら空気みたいでさ。」
「俺らに誰もチラシすらくれないんだもん。」
「はしゃぎ過ぎなんだよ。ほら、祐の幼馴染みの子の模擬店見つけたから行こう。」
「ジョシコワイ。イエカエル。」
「大丈夫、吏都ちゃん優しいから。僕らが来るの待ってるって言ってたし。」
「マジかっ!!」
「早く行こうぜ!」
「どこっ?!吏都ちゃんがいる所どこっ!?」
「おい!」
蜂谷の一声ですっかり機嫌を直した3人を連れて茶道部へと足を向けた。蜂谷は塩顔というのか、つぶらな瞳の奥に何か秘めているようなミステリアスなオーラを放ち、物腰の柔らかく人当たりの良さも見受けられる佇まいに女子は弱いのだろう。茶道部へ向かう道中、女子生徒が通り様に蜂谷の方を振り返ったり、チラシを渡す口実に話しかけたりしている。祐の目に映る女子生徒のように吏都も蜂谷に胸を頬を赤らめるのだろうかと妄想すると胸を衝かれたようにチクリと痛んだ。蜂谷達から少し遅れて歩いていると、茶道部の看板が見えてきた。佐々原、波多野、木戸は茶道部の入り口から中を覗き込んで「吏都ちゃんはどこ?」と部屋の中を見渡している。そこへ着物姿の部員が3人に気付きやって来た。
「お茶して行きませんか?今なら席が空いてますよ。」
「はい!」
「飲みます!飲ませて下さい!」
「お、おねしゃすっ!!!」
「5人だけど大丈夫かな?」
「ふふ。大丈夫ですよ。こちらにどうぞ。」
「祐、早く。」
「‥おう。」
祐が合流してから中に入る。学校机を6つくっ付けて準備したテーブルへ案内され腰を降ろした。案内した部員がメニュー表をテーブルの真ん中へ置く。
「お決まりになりましたら、手を上げてお知らせくださいね。」
「(佐々原・波多野・木戸)はいっ!」
「へぇ、珈琲もジュースもあるんだね。お茶だけかと思ってた。」
「俺、ケーキセットのアイス珈琲にしよう!」
「俺は‥ケーキセットのオレンジジュース!」
「俺もケーキセット!アイスティーで!」
「祐は決まった?」
「‥これ。」
祐はメニュー表に書かれたお抹茶セットのマカロンを指差した。「いいね。僕もそれにしよう。」と蜂谷も同意すると、手を上げて部員を呼び注文をした。佐々原、波多野、木戸は茶道部員らをチラチラ見ては「着物姿ヤバ!」「目の保養になるわ。」「天使!」等と再びボルテージを上げていった。祐も頬杖をつきながらチラチラと吏都の姿を探した。
「吏都ちゃん居ないね。」
「別に。」
「あーあ、吏都ちゃんの着物姿見たかったな。ね、祐。」
「はあ!?」
蜂谷が祐のそわそわする様子に気付くと耳打ちをした。祐は慌てて蜂谷の顔を見るが蜂谷はせせら笑いをしている。すると、遠くで「吏都、お願い!」と誰かが吏都を呼ぶ声がして「はーい!」と返事をする吏都の声が聞こえた。祐が吏都の声の方へ目を向けると畳の上に正座をしてお茶を点てる吏都が居た。白色の生地にピンクと紺色の撫子の柄の着物がとても似合っていた。いつも見る吏都とは違い華やかで少し大人びて見える姿に祐は胸を熱くした。吏都はお茶を点て終えると小さなお盆に乗せて祐の元まで運んで来る。テーブルに着く寸前で祐に気付くと満面の笑みでこちらへ足を進めた。
「来てくれたんだ!」
「‥無理矢理な。」
「吏都ちゃん着物姿綺麗だね、似合ってるよ。」
「蜂谷君ありがとう。今日は暑いから浴衣にしたんだ!」
「えー!噂の吏都ちゃん!」
「マカロン作ってくださった神だ!」
「美味しかったよ!」
「たす君の友達も食べてくれたんだ。口に合って良かった。」
「馬子にも衣装だな。」
「もう、たす君!」
「他の子達の浴衣はピンクとか水色とか可愛いけど、吏都ちゃんのは渋いね。」
「そうなのー!たす君、これ見覚えない?」
「は?」
「明日香さんがくれたの!」
「祐のお母さん?吏都ちゃんと仲良しなんだね。」
「うん。あっ!抹茶セットお待たせ。」
お盆を祐の前に置くと茶葉の爽やかな香りが鼻をくすぐった。その後を「お待たせしました。」と佐々原達が頼んだケーキセットを他の部員らが運んでくる。「美味そう!」と喜んでいると蜂谷の元へ「お待たせしました。」とまた別の部員が抹茶セットを運んできた。蜂谷の元に運んできた部員を見ると佐々原達は手に持ったフォークを落としたり、口が開いたまま固まっている。その部員は背がスラリと高く肌も透き通るように白い。切れ長の目が印象的で凛々しい顔立ちをしている。浴衣を着ているせいか同じ高校生とは思えないくらい大人びた容姿をしていた。
「こちらは部長の津雲尋那だよ。」
「吏都、自己紹介はいいから。そろそろお客さん増えるだろうし先に戻る。吏都も早くね。」
「うん。」
尋那は蜂谷の前にお盆を置くと会釈をしてから戻って行った。
「あの子めっちゃ美人!」
「どんな徳を積んだらあんな姿になれんの?」
「モテそうー!」
「祐とあの子、お似合いじゃない?」
「は?」
「確かに!」
「祐は背でかいしシュッとしてるからな!」
「何気に女子人気高いし!」
「ねっ!僕の姉さんのお気に入りだし。」
「くだらねぇ事いってねぇでさっさと食おうぜ!」
「(佐々原・波多野・木戸)頂きまーす!」
祐が会話をピシャリと終わらせるとみんなで食べ始めた。ケーキを1口食べると「美味いっ!」とさらに食べるスピードが上がっていく3人。蜂谷も1口お茶を飲めば「うん。美味しい。」と吏都に言うと「良かった。」と吏都がにこりと笑う。
「お前、油売ってていいのかよ?」
「あ、戻らないと!」
「吏都ちゃん、頑張ってね。」
「ありがとう。じゃあね。」
蜂谷と吏都のやり取りを見ていると祐はむしゃくしゃして吏都に強く当たる。吏都は思い出したかのように自分の持ち場に戻って行った。
「吏都ちゃんっていい子だよね。」
「世話焼きなだけだろ。」
吏都を誉める蜂谷が気に入らない。祐は蜂谷が視界に映らないようにそっぽを向きながらお茶を飲むとほろ苦さの後にほんのりと優しい甘さが口の中に広がった。
自分の持ち場に戻った吏都は文化祭に来てくれた祐に嬉しさと恥ずかしさが入り交じったような心境で頭がフワフワしていた。耳まで赤く染めている吏都に尋那が気付く。
「吏都、顔がニヤニヤしてる。」
「え?嘘!?」
「あの団体に例の幼馴染み君いるんでしょ?」
「うん。まさか来てくれると思わなかったからビックリしちゃった。」
「ふーん。じゃあそのラッピングのマカロンは何?」
「え!これは‥」
「後で渡しておいで。友達と一緒に居る時は渡しにくいでしょ?」
「ありがとう、尋那!」
吏都の祐への想いを察してか尋那が耳打ちすると、吏都は尋那に抱きついてた。無邪気に喜んでいる吏都が愛らしくて尋那は吏都の頭を撫でた。
お茶が済むと佐々原達が「次どこに行く?」と盛り上がっている。「俺疲れたから空き教室で休むわ。」と祐は席を立ち佐々原に自分の食べた分のお金を渡して教室から出ていく。「合流する時連絡しろよ!」と佐々原が祐の背中に声を掛けると「はいはーい。」と手をヒラヒラと振りながら去っていった。次の行き先を決めると4人で会計を済ませる。そこへ吏都が駆け寄ってきた。
「来てくれてありがとうね。」
「ご馳走さま。マカロンも美味しかったよ。」
「良かった。‥あれ?たす君は?」
「ちょっと疲れたから空き教室で休むって言ってたよ。」
「そっか。‥文化祭楽しんでってね!」
「ありがとう。」
「じゃあ、またね。」
「うん。」
蜂谷は吏都の行動を目で追うと、吏都は尋那の元に戻り何か話してから紙袋を持ち教室から出て行った。
「僕トイレ行ってくるから先行ってて。」
「分かった!」
蜂谷は佐々原に声を掛けてから教室を出ると静かに吏都の後を追った。
吏都の学校の校門前で待ち合わせの約束をしていたが、祐が5分前に到着するとすでに4人は到着していた。
「祐、おせぇよ!」
「はあ?まだ約束の時間前だろ?」
「俺は1時間前に来ちゃった!」
「お前ははえーよ!」
「いいのかな?神聖な聖域に足を踏み入れても?」
「お前は落ち着け!」
「はい!集合!」
佐々原が集合を掛けると波多野と木戸が祐と蜂谷の肩を掴み円陣を組む。
「いいか、お前ら!抜け駆けは無しだ!タイプの子を見つけたら報・連・相を忘れるな!」
「(波多野・木戸)おぉー!!!」
「行くぞー!!!」
「(波多野・木戸)おぉー!!!!!」
気合いを入れる掛け声が終わり円陣が散らばると佐々原、波多野、木戸は校門の前で「お願いします!」と試合前のように大声で挨拶をし、一礼してから敷地内に足を踏み入れた。その後ろを祐と蜂谷が少し距離を置いて歩く。
「あいつら、試合でもしにきてんの?」
「さすが元サッカー部だね。」
「脳筋共が。」
「はは。数ヶ月前までサッカー三昧だったからな。せっかく来たんだし、楽しもうよ。」
浮かれた3人とは反対に祐はため息をついている。蜂谷は3人と祐の間の中和を取ろうと祐に前向きな声を掛ける。祐は校門を入ってすぐに模擬面の地図が書かれた看板に気付いて立ち止まり眺めていると、茶道部の文字に目が止まる。
「茶道部どこか分かった?」
「は?知らねぇ。」
「茶道部って着物でお点前してくれるのかな?」
「あいつが着物着たら七五三になるな。」
「そう?似合いそうだけど。吏都ちゃんの着物姿可愛いだろうな。」
「はあ?」
蜂谷が吏都を誉めるのが引っ掛かり思わず蜂谷の顔を見た。すると「顔怖い。」と蜂谷に笑われた。祐はまた看板に視線を戻すが、からかわれているようで苛立つ。そこへ3人が血相を変えて小走りで祐の元へ戻ってきた。
「祐、女子高怖い。」
「は?さっきの勢いどこ行った?」
「だって俺ら空気みたいでさ。」
「俺らに誰もチラシすらくれないんだもん。」
「はしゃぎ過ぎなんだよ。ほら、祐の幼馴染みの子の模擬店見つけたから行こう。」
「ジョシコワイ。イエカエル。」
「大丈夫、吏都ちゃん優しいから。僕らが来るの待ってるって言ってたし。」
「マジかっ!!」
「早く行こうぜ!」
「どこっ?!吏都ちゃんがいる所どこっ!?」
「おい!」
蜂谷の一声ですっかり機嫌を直した3人を連れて茶道部へと足を向けた。蜂谷は塩顔というのか、つぶらな瞳の奥に何か秘めているようなミステリアスなオーラを放ち、物腰の柔らかく人当たりの良さも見受けられる佇まいに女子は弱いのだろう。茶道部へ向かう道中、女子生徒が通り様に蜂谷の方を振り返ったり、チラシを渡す口実に話しかけたりしている。祐の目に映る女子生徒のように吏都も蜂谷に胸を頬を赤らめるのだろうかと妄想すると胸を衝かれたようにチクリと痛んだ。蜂谷達から少し遅れて歩いていると、茶道部の看板が見えてきた。佐々原、波多野、木戸は茶道部の入り口から中を覗き込んで「吏都ちゃんはどこ?」と部屋の中を見渡している。そこへ着物姿の部員が3人に気付きやって来た。
「お茶して行きませんか?今なら席が空いてますよ。」
「はい!」
「飲みます!飲ませて下さい!」
「お、おねしゃすっ!!!」
「5人だけど大丈夫かな?」
「ふふ。大丈夫ですよ。こちらにどうぞ。」
「祐、早く。」
「‥おう。」
祐が合流してから中に入る。学校机を6つくっ付けて準備したテーブルへ案内され腰を降ろした。案内した部員がメニュー表をテーブルの真ん中へ置く。
「お決まりになりましたら、手を上げてお知らせくださいね。」
「(佐々原・波多野・木戸)はいっ!」
「へぇ、珈琲もジュースもあるんだね。お茶だけかと思ってた。」
「俺、ケーキセットのアイス珈琲にしよう!」
「俺は‥ケーキセットのオレンジジュース!」
「俺もケーキセット!アイスティーで!」
「祐は決まった?」
「‥これ。」
祐はメニュー表に書かれたお抹茶セットのマカロンを指差した。「いいね。僕もそれにしよう。」と蜂谷も同意すると、手を上げて部員を呼び注文をした。佐々原、波多野、木戸は茶道部員らをチラチラ見ては「着物姿ヤバ!」「目の保養になるわ。」「天使!」等と再びボルテージを上げていった。祐も頬杖をつきながらチラチラと吏都の姿を探した。
「吏都ちゃん居ないね。」
「別に。」
「あーあ、吏都ちゃんの着物姿見たかったな。ね、祐。」
「はあ!?」
蜂谷が祐のそわそわする様子に気付くと耳打ちをした。祐は慌てて蜂谷の顔を見るが蜂谷はせせら笑いをしている。すると、遠くで「吏都、お願い!」と誰かが吏都を呼ぶ声がして「はーい!」と返事をする吏都の声が聞こえた。祐が吏都の声の方へ目を向けると畳の上に正座をしてお茶を点てる吏都が居た。白色の生地にピンクと紺色の撫子の柄の着物がとても似合っていた。いつも見る吏都とは違い華やかで少し大人びて見える姿に祐は胸を熱くした。吏都はお茶を点て終えると小さなお盆に乗せて祐の元まで運んで来る。テーブルに着く寸前で祐に気付くと満面の笑みでこちらへ足を進めた。
「来てくれたんだ!」
「‥無理矢理な。」
「吏都ちゃん着物姿綺麗だね、似合ってるよ。」
「蜂谷君ありがとう。今日は暑いから浴衣にしたんだ!」
「えー!噂の吏都ちゃん!」
「マカロン作ってくださった神だ!」
「美味しかったよ!」
「たす君の友達も食べてくれたんだ。口に合って良かった。」
「馬子にも衣装だな。」
「もう、たす君!」
「他の子達の浴衣はピンクとか水色とか可愛いけど、吏都ちゃんのは渋いね。」
「そうなのー!たす君、これ見覚えない?」
「は?」
「明日香さんがくれたの!」
「祐のお母さん?吏都ちゃんと仲良しなんだね。」
「うん。あっ!抹茶セットお待たせ。」
お盆を祐の前に置くと茶葉の爽やかな香りが鼻をくすぐった。その後を「お待たせしました。」と佐々原達が頼んだケーキセットを他の部員らが運んでくる。「美味そう!」と喜んでいると蜂谷の元へ「お待たせしました。」とまた別の部員が抹茶セットを運んできた。蜂谷の元に運んできた部員を見ると佐々原達は手に持ったフォークを落としたり、口が開いたまま固まっている。その部員は背がスラリと高く肌も透き通るように白い。切れ長の目が印象的で凛々しい顔立ちをしている。浴衣を着ているせいか同じ高校生とは思えないくらい大人びた容姿をしていた。
「こちらは部長の津雲尋那だよ。」
「吏都、自己紹介はいいから。そろそろお客さん増えるだろうし先に戻る。吏都も早くね。」
「うん。」
尋那は蜂谷の前にお盆を置くと会釈をしてから戻って行った。
「あの子めっちゃ美人!」
「どんな徳を積んだらあんな姿になれんの?」
「モテそうー!」
「祐とあの子、お似合いじゃない?」
「は?」
「確かに!」
「祐は背でかいしシュッとしてるからな!」
「何気に女子人気高いし!」
「ねっ!僕の姉さんのお気に入りだし。」
「くだらねぇ事いってねぇでさっさと食おうぜ!」
「(佐々原・波多野・木戸)頂きまーす!」
祐が会話をピシャリと終わらせるとみんなで食べ始めた。ケーキを1口食べると「美味いっ!」とさらに食べるスピードが上がっていく3人。蜂谷も1口お茶を飲めば「うん。美味しい。」と吏都に言うと「良かった。」と吏都がにこりと笑う。
「お前、油売ってていいのかよ?」
「あ、戻らないと!」
「吏都ちゃん、頑張ってね。」
「ありがとう。じゃあね。」
蜂谷と吏都のやり取りを見ていると祐はむしゃくしゃして吏都に強く当たる。吏都は思い出したかのように自分の持ち場に戻って行った。
「吏都ちゃんっていい子だよね。」
「世話焼きなだけだろ。」
吏都を誉める蜂谷が気に入らない。祐は蜂谷が視界に映らないようにそっぽを向きながらお茶を飲むとほろ苦さの後にほんのりと優しい甘さが口の中に広がった。
自分の持ち場に戻った吏都は文化祭に来てくれた祐に嬉しさと恥ずかしさが入り交じったような心境で頭がフワフワしていた。耳まで赤く染めている吏都に尋那が気付く。
「吏都、顔がニヤニヤしてる。」
「え?嘘!?」
「あの団体に例の幼馴染み君いるんでしょ?」
「うん。まさか来てくれると思わなかったからビックリしちゃった。」
「ふーん。じゃあそのラッピングのマカロンは何?」
「え!これは‥」
「後で渡しておいで。友達と一緒に居る時は渡しにくいでしょ?」
「ありがとう、尋那!」
吏都の祐への想いを察してか尋那が耳打ちすると、吏都は尋那に抱きついてた。無邪気に喜んでいる吏都が愛らしくて尋那は吏都の頭を撫でた。
お茶が済むと佐々原達が「次どこに行く?」と盛り上がっている。「俺疲れたから空き教室で休むわ。」と祐は席を立ち佐々原に自分の食べた分のお金を渡して教室から出ていく。「合流する時連絡しろよ!」と佐々原が祐の背中に声を掛けると「はいはーい。」と手をヒラヒラと振りながら去っていった。次の行き先を決めると4人で会計を済ませる。そこへ吏都が駆け寄ってきた。
「来てくれてありがとうね。」
「ご馳走さま。マカロンも美味しかったよ。」
「良かった。‥あれ?たす君は?」
「ちょっと疲れたから空き教室で休むって言ってたよ。」
「そっか。‥文化祭楽しんでってね!」
「ありがとう。」
「じゃあ、またね。」
「うん。」
蜂谷は吏都の行動を目で追うと、吏都は尋那の元に戻り何か話してから紙袋を持ち教室から出て行った。
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