寝起きで転生 ~鍋から始める魔王討伐~

べるんご

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鉱山開放、俺達貧乏

誰にでも思い付く、誰にでもはできないこと

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    時は数時間前に遡る。
最後の作戦会議、二人の男は緊張した面持ちで、一人の少女は不機嫌そうだ。


「悪いが、上手く行くとは思えんぞ。同じことを言ってたヤツは、死体になって帰ってきた」


「そう、俺の思い付きなんて誰にでも思い付く。俺はただの高校生、諸葛孔明やオデュッセウスにはなれねぇよ。でも、限られた条件のなかで倒すには、これしかない」


    優馬の考えは至極単純、口の中に爆薬を放り込み、爆破する。
ただこれだけだ。
個人の膂力での破壊は不可能、魔法を使えない、となれば、もう彼にはこの方法しか思い付かないらしい。


「その先駆者がどういう考えで挑んで、負けたかは分からない。でももし、作戦遂行前に即殺されていたとしたら……」


「用意した爆薬がそのまま残ってる、かもしれないってことですか。……希望的観測がすごいですね。楽観もほどほどにしておかないと、二の舞ですよ?」


    優馬自身も、この作戦が最適解だとは思っていない。
だが彼は、勝利に必須なピースを一つ、持っている。


「そのためのお前だ、エル」


    その言葉に、彼女はすぐに言い返す。


「お断りです。言いましたよね、ユーマくんが倒さないといけないって。他の人に協力を求めるのは勝手ですが――」


「別に攻撃しろとはいってない」


「……というと?」


    てっきり、討伐そのものを頼もうとしてきたものと勘違いした彼女は、意外そうな顔をした。


「お前は、囮役だ。攻撃なんてしなくていい、ただ注意を引いてくれればな。倒すのは俺だ、文句無いだろ?と言うか言わせねぇ。お前だって頼める範疇内のだと思っているからな。大体お前は、安請け合いの責任くらち果たせ」

    彼女の能力の全体像を優馬はまだ掴めていないが、自由に空を飛び回れるその特異な能力と、モンスターを前にしてもほとんど怯まない胆力、囮役を頼めるのは彼女しかいないだろう。

    エルはくすくすと笑ってしまう。
無理矢理にでも従わせようとするその姿勢が、彼女には可笑しくて。
だがイヤでイヤでしかたがなくとも、もっと優馬で楽しみたい彼女は――


「分かりましたよ。手伝うだけですからね?女の子に囮をさせようだなんて、チキン野郎にも程がありますけど!」


「……うるせぇな、強くなったらもう頼まねぇよ!」


    そして、現在に至る。
エルは適度に挑発しながら注意を引き、武器屋の主人は残されていた火薬をすぐに加工していく。
そしてその品を、優馬が仕掛けていく。


「そろそろいいですかぁ?私の魔力だって無限じゃないんですよー?」


「あぁ、もういい!……やいムカデ野郎!ガキ臭くって頭悪そうで、泥臭いったらありゃしねぇ!そんな俺の一世一代のギャンブルだ、死ぬまで付き合えッ!!」


    一瞬にして姿を消したエルに代わり、姿を堂々と表した優馬。
もう彼の膝は、笑っていなかった。


「真正面から勝てないなら、泥試合だ泥試合!おら、こいや雑魚ッ!!」


    背を向けて走り出した優馬を、ムカデが追う。
岩と壁の隙間を走り抜けた優馬を追い、その岩を体で砕いていく。
その時、ちょうど口の位置に飛び出してきた人の頭程度の木の玉を、ムカデは飲み込んでしまった。


「いけ、ユウマ!回れ回れ回れ!」


    武器屋の主人が垂れ下がった岩に手投げ弾を投げ付け、ムカデの真上にそれを落とす。
その一撃は、ムカデと言えど無視できない衝撃であったらしく、まるで痛みに悶えるように体を振った。


「さぁ、こいこいこい!ごちそうは目の前だぞ!」


    岩の柱の間を走り抜けた優馬を、そっくりその通りに追いかける、怒りに溺れた大ムカデ。
このモンスターは、自分の状況にまだ気づいていない。

    体に触れたことで、柱が倒壊。
その時に飛び出した木の玉も飲み込み、岩の柱の下敷きとなったムカデの動きが一瞬鈍る。


「ユウマ!こいつでぶっ飛ばしてやれ!」


    武器屋の主人に投げ渡された、最後の手投げ弾。
既に爆発まで秒読みの状態であった。


「ピンを抜くのはァ……ッ」


    幾らかの衝撃にフラつきながらも襲いかかってくるムカデの大口に、優馬は狙いを定め、大きく振りかぶる。


「渡されてからァッ!!」


    最後の最後まで文句を垂れたこの男は、見事にムカデの口内に手投げ弾を放り込む。
そして咄嗟に飛び退くも回避しきれず、体の一部に当たって側方へと吹き飛んでしまった。


「ユーマくん!?」


    様子を伺っていたエルが飛び出し、優馬を抱き起こす。
優馬は頭から血を流しながら、笑っていた。


「プレゼント、大事にしろよな」


    その直後、ムカデの頭部が大爆発。
汚いことこの上ない大輪の花火が、鉱山の中で見事に炸裂する。
直後、辺りにムカデの体液が降り注ぎ、体組織がボタボタと落ち、巨大な体がしばらくもがき、そしてついに地に伏した。
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