寝起きで転生 ~鍋から始める魔王討伐~

べるんご

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迷子の迷子のDK譚

攻略本がなければ自力でやるしか道はない

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どちゃくそ臭いのは何が原因だろう。
そう興味を示してしまったのが良くなかった。


「えぇ……いやいや、なにこれぇ……」


辺りに転がっているのは、見覚えのある装備の兵士達の遺体。
元々毒々しい色の巨大植物は、返り血を浴びてイキイキしてるように見える。


「ユーマくん、下がってッ!!」


「のうおっ!?」


鎧の襟首を捕まれ、後ろに引き倒される。
すると、さっきまで頭があった位置に高速で何かが横切ったのが分かった。


「し、触手ぅ……?」


真ん中ら辺でぐねんぐねんしてる、気色の悪い触手。
エルが居なければ即死だった。


「下から来ます、飛び退いて!」


「ちょまぁっ!?」


慌てて飛び退くと、地中からも触手のようなものが飛び出した。
こんな初見殺しばかり用意されていれば、そりゃあ兵隊さんも殺されていくだろうよ。


「なぁエル、アイツはなんなんだ?アレは倒さなきゃいけないのか?」


「私にも分かりません!でも、まともな生物でないのは明らかです」


エルは俺を掴んで空を舞い、あの化け物から離れていく。
マジな表情で本気で助けてくれる辺り、本当にあの化け物がヤバイというのがよく分かる。

手頃な樹上に降り立ち、遠くからあの化け物を観察する。
大体100mも離れれば、ヤツの射程からは離れられるようだ。


「ありがとな、エル。本当に死ぬとこだった……」


「ホントは助けたくなかったですけどね。でも死なせるわけにいかないので」


「お前その正直さでいつか大失敗するぞ」


ライフル銃でもあれば一方的に撃てたかもしれないが、そんなお手軽殺戮兵器は手元にはない。


「改めて聞くが、あれは……倒さなきゃいけない相手か?そうじゃないなら避けてもいいんじゃないのか?」


エルは難しい顔で何事かを考えている。
恐らく、いつぞやのムカデと違い、エルは全くヤツのことを知らなかったらしい。


「アレを倒せたら、もちろんそれはユーマくんの成長に繋がります。だから、私としては倒して欲しい」


「ンなこと言っても、周りに――」


「あの惨状を作り出した相手を、ユーマくんは許せるんですか?」


あの惨状、すなわち散っていった兵士達。
もしかしたら、もっと殺された人が居るのかもしれない。
もちろん、俺だってそれなりに憤りはする。
だからといって、勝ち目の無い戦いに行くのは勇者気取りのバカのすることだ。


「それに、かの魔王はあんなのくらい素手で倒します。触手をむしりとり、花柱かちゅうを引きちぎり、中に手ェ突っ込んで直接燃やします!……ユーマくん、ここで逃げたら……一生魔王には勝てませんよ?」


ここで死んだら魔王も何もないだろうが。
……と、言いそうになったがここで一考。


「……今の、攻略のヒントだったりする?」


「それはどうでしょう。でも、地べたから飛び出す槍みたいなものは、そんなに使っていないと思います。……遺体をチラ見しただけなので必ずそうとも言えませんが」


コイツ、あんな中でよく遺体に注視が出来たな。
どんな修羅場を潜ってきたんだろうか。


「なので、それを私が見切ってユーマくんに伝えます。ユーマくんは触手のお相手をして、無力化したら急所を狙ってください」


「……上手く行くと思うか?」


「それはあなた次第です。……でも大丈夫。いきなりの事で面食らいましたが、冷静に見ればあのムカデよりもよっぽど弱っちいですから」


じゃあお前がやれよと思うのはこれで何度目なんだろうか。
だが今日のエルはいつもより協力的だ。
あのぐねぐねラフレシア、やっぱりそこそこ強いんだろうな。


「……分かった、やるよ。可能な限り、バックアップは頼むぞ」


決意を固め、少しずつ、少しずつ、ラフレシアに近付いていく。
触手の射程は、なぎ倒された樹木の位置から把握する。
大体、巨大な花弁の倍くらいの直径だろう。


「びっくり根っこの射程はどんなもんなんだ?」


「びっくり根っこ……?試してみますから、ちょっと待っててください」


エルが触手の射程より多少外れた位置を魔法で燃やし、人頭程度の石を俺が投げつける。
これは温度や振動で敵を見つけているんだろうという予測のもとだ。


「おぉっ!?」


予想は的中、火中に飛び込んだ石をめがけてびっくり根っこが飛び出した。
いくらなんでも炎は……と思っていたが、例え炎であっても飛び出してくる辺り、危機管理能力は低そうだ。
……植物にそんな概念無いかもしれないが。


「根っこの射程はちょっと長めですね。ギリギリの範囲での観察は危険です」


「魔法で遠くから撃ちたいところだけど、俺じゃあ届かないだろうな」


「じゃあもう選択肢は一つだけ。突撃あるのみ!」


「死ねと」


より正確に射程を図るため、足踏みを繰り返しながら少しずつ前に出る。
結果、大体触手の射程プラス3m程度だと分かった。
そして……。


「気を付けてるとアレだな。飛び出す前にちょっと振動みたいなの、あるな」


「長物振り回しながら気付けるといいですけれどね。ユーマくんには難しいですが」


「そうでもない。びっくり根っこ、アレたぶん動き回ってる相手には使えないんじゃないか?」


というのも、足踏みだけの地点には飛び出してきたが、ドタドタと諸手を上げて絶叫しながら走ったところには、届きもしない触手を振り回すことはあっても、根っこが飛び出すことはなかったからだ。


「なら、根っこ問題は常に動いていれば攻略可ってことですね。次は触手ですけど……見切れます?」


「ムリ☆」


「うわぁ、死んで欲しい笑顔」


笑顔が祟ったのか、エルは真顔で俺を触手の射程ギリギリまで引きずって行く。
そして一言。


「見切れるようになるまで根っこの射程から逃げるな」


そんな怒ることある?
と不満を口にする前に根っこが飛び出す。
俺は必死にそれを避けつつ、触手から目を離すこと無く動き続けた。


「ユーマくんがもうちょっと強ければ良かったんですけどねぇ……。地道に作戦考えるしかないですね」


俺はエル式スパルタ訓練で何度も死にかけながら、必死に攻略のために走り続けた。
魔王の野郎、出会ったらとりあえず同じ目に遭わせてやる……。
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