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保健室のドアがゆっくり開く。白い壁に囲まれた空間は静かで、カーテン越しの柔らかい光が差し込んでいる。いくつかのベッドが並び、部屋の隅には体温計や救急箱が整然と置かれていた。消毒液のほのかな香りが漂い、どこか安心感を与えてくれる。
「先生、こいつ腹痛です。」
直樹が手短に告げると、保健の先生がすぐに振り返った。先生は40代くらいの女性で、短くまとめた髪と落ち着いた眼差しが印象的だ。白衣のポケットにはペンや体温計が差し込まれており、動きには無駄がない。
「顔色がよくないね。ちょっと横になりましょう。」
先生は優しい声でそう言いながら、ベッドへと案内する。景介は「大丈夫だから」と弱々しく抗議したが、先生は慣れた様子で「そうは見えないよ」と言い切り、さっと毛布を広げて寝かせた。
その間、直樹は保健室のカウンターへ歩み寄る。カウンターには、来室者の記録をつけるための用紙が置かれている。先生の視線を感じながら、彼は面倒くさそうに書き込んでいった。
「一年のときもこんな感じだったわね。」
先生がさっとメモを取りながら言う。小学校のころから、体調を崩すたびに保健室へ来ていた景介にとっては、もはや決まりきった流れだった。
「…まあ、いつも通りです。」
景介は布団の上から軽く腹を押さえた。先生はくすりと笑いながら、棚から体温計を取り出す。
「念のため、測っておこうか。」
景介は、慣れた手つきで体温計を脇に挟みながら、ぼんやりと天井を見つめる。数分後、体温計のピッという電子音が響き、景介はゆっくりとそれを取り出した。先生が手を伸ばし、「見せてね」と言いながら体温計を受け取る。
画面の数値をちらりと確認し、小さく頷いた。
「平熱ね。でも顔色はよくないから、念のため血圧も測っておきましょう。」
先生は景介の腕に血圧計を巻き付ける。
「力抜いて、いつも通りでいいから。」
ゆっくりと空気が抜け、数値が表示される。
「うん、少し低め。でも、まあ、これもいつもの範囲ね。今日はゆっくり休んだほうがいいよ」
と穏やかに言った。
「早退する?」
「帰るなら鞄持ってくるか?」
「いや、もうちょっといる。」
景介は力なく答える。その声には、小さな抵抗が込められていた。
先生は軽く頷き、「じゃあ、少し様子を見てからね」と優しく毛布を掛けた。保健室の静けさの中で、景介は次第に体の重さに身を委ねていった。
「先生、こいつ腹痛です。」
直樹が手短に告げると、保健の先生がすぐに振り返った。先生は40代くらいの女性で、短くまとめた髪と落ち着いた眼差しが印象的だ。白衣のポケットにはペンや体温計が差し込まれており、動きには無駄がない。
「顔色がよくないね。ちょっと横になりましょう。」
先生は優しい声でそう言いながら、ベッドへと案内する。景介は「大丈夫だから」と弱々しく抗議したが、先生は慣れた様子で「そうは見えないよ」と言い切り、さっと毛布を広げて寝かせた。
その間、直樹は保健室のカウンターへ歩み寄る。カウンターには、来室者の記録をつけるための用紙が置かれている。先生の視線を感じながら、彼は面倒くさそうに書き込んでいった。
「一年のときもこんな感じだったわね。」
先生がさっとメモを取りながら言う。小学校のころから、体調を崩すたびに保健室へ来ていた景介にとっては、もはや決まりきった流れだった。
「…まあ、いつも通りです。」
景介は布団の上から軽く腹を押さえた。先生はくすりと笑いながら、棚から体温計を取り出す。
「念のため、測っておこうか。」
景介は、慣れた手つきで体温計を脇に挟みながら、ぼんやりと天井を見つめる。数分後、体温計のピッという電子音が響き、景介はゆっくりとそれを取り出した。先生が手を伸ばし、「見せてね」と言いながら体温計を受け取る。
画面の数値をちらりと確認し、小さく頷いた。
「平熱ね。でも顔色はよくないから、念のため血圧も測っておきましょう。」
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景介は力なく答える。その声には、小さな抵抗が込められていた。
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