お腹の弱いショタは頼れないので、気づけばお父さんは心配しすぎて過干渉

Sora

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 五時間目が終わり、教室では次の授業の準備が進む頃。静まり返った校舎の一角にある保健室。その扉が静かに開き、スーツ姿の父が姿を見せた。ネクタイを少し緩めた様子から、仕事の合間に急いで駆けつけたことがうかがえる。  
「お世話になっております。」  
 落ち着いた声で保健の先生に軽く頭を下げる。先生は優しく微笑み状況を説明した。  
「昼休み中に体調を崩されて、保健室で休ませていたのですが、まだ回復していません。一度お家でゆっくり休まれるのが良いかと思います。」  
 父は景介の顔をじっと見つめ、少し考えるように視線を落とした。
「本当に大丈夫か?」
 景介は枕に頭を沈めたまま、小さく「…うん、大丈夫」と答える。だが、その声は頼りなく、父の鋭い視線は変わらない。
 先生が書類を手渡しながら、「今日は無理せず、しっかり休んでくださいね」と穏やかに声をかける。
 父は景介の鞄を手に取り、静かに言った。「立てそうか?」
 景介は試しに体を起こそうとするが、ふらつき、布団に手をついて支える。その様子を見た父は短く息を吐き、「帰るぞ」と言い、景介を軽く支えながら保健室を出て行く。


 保健室を出ると、静まり返った廊下が広がっていた。授業は続いていて、教室の奥からかすかに先生の声が聞こえてくる。
 父は何も言わず、景介の隣を歩く。その歩調は少しだけ遅く、景介の様子を気にしているのが分かった。
 景介はふらつきながらも、できるだけ普通に歩こうとする。数歩進むと、揺れる視界に気付き、壁際を頼るように指先をかすめる。
 校舎を抜けると、昼間の明るさとは対照的に、静けさが漂っていた。生徒たちは教室にいる時間で、校庭にも人気はない。遠くで鳥の鳴く声が響く。
 父は黙ったまま車のドアを開ける。景介はシートに身を預け、ゆっくりとシートベルトを締めた。
 エンジンがかかる音が響き、父は短く言った。「病院、寄るか?」
 景介は軽く首を横に振る。
「別に…いいよ。大したことないし。」
 父は少し考えるようにハンドルを握り直したが、それ以上は何も言わなかった。車は静かに発進し、景介は窓の外に視線を投げた。
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