婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢は国を相手に戦います

タンペンおでん

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 由緒ある公爵家令嬢の私には変わった力がある、それは女性の血筋にだけに現れる能力。

 私の名前はブリジット・ガンデブルグ。

 私は今、学園の卒業パーティーの席で皇太子であるヴィクトゥルや取り巻きの貴族の方々からいわれの無い罪の糾弾を受けている。

 なんでも一般推薦で入学された平民の黒髪の麗人アリシア・ホーデリアにたいして数々の無礼を働いたと言うのだ。

 平民相手に無礼と言うのもおかしな話だが、皇太子からでる数々の私の罪はすべて身に覚えがないものばかりなのである。
 そして、そのアリシアは皇太子の後ろで背中の裾を掴み私を嘲笑いながら見ているのだ。

「と言うわけだ、私はお前との婚約の破棄をここに宣言する」

 婚約破棄を言い渡されたのはショックと言うよりも、私との結婚を蹴って平民に落ちるつもりなのだろうかと言う心配である。

 この婚約は国王陛下の申し出により行われた。それも長年続く王室と私の家との取り決めで、私が断ればこの婚約はそもそも成立さえしなかった。
 だけど国王陛下が自ら公爵家の子弟でしかない私に地に頭を擦り付けて頼むのだ。
 それを断るほど私は冷酷ではないし皇太子を嫌ってもいなかった。

 そこまでして、この婚約を成立させた国王陛下は皇太子をお許しになら無いだろう。
 なぜなら求心力を無くした王の地位を私を取り入れることで取り戻したかったからだ。

 私の家の能力を知っているのは国王陛下と六大公爵家のみ、そして六大公爵家はこの能力を持ったものには絶対服従しなければいけない。

 だけど、このまま言われっぱなしも面白くないし、なにより否定しないことは事実を認めたことと同義なのだ。
 汚名返上のために私が弁解をしようとした瞬間、私たちを取り巻く野次馬から化粧瓶が投げられ私の頭を直撃した。

 その衝撃で私はその場に倒れそうになるのを必死にこらえた。
 血がポタポタと垂れドレスを朱に染める。

 新進気鋭の裁縫師テイラーに頼んで作ってもらった服が台無しになってしまった。
 気に入っていたのに。

「国王陛下がご来場いたします」
 会場に入ってきた国王陛下が私を取り囲む皇太子達を見て何事かと訪ねる。

 だがその言葉に誰も答えない。それだけでも不遜なのだが、言えるわけがない。まだ婚約を正式に破棄されていない公爵家令嬢を糾弾していたなどとは。
 なにも答えない者達を不振がり、その中心にいる血を流す私を見て国王陛下の顔が青くなった。
 それは見事なほどに急激に。

「何をしておるのだ!」

「父上違うのです、これはブリジットが不貞やアリシアをイジメていたことを糾弾していたのです」

 その言葉に国王陛下は怒り持っていた杖で皇太子を何度も何度も殴る。

「父上おやめください、おやめください」

 何度も叩かれ皇太子の腕はあらぬ方向を向く、その異様な光景に会場が静まり返る。

「国王陛下おやめください」

「すまないブリジット嬢、こやつにはそれ相応の罰を与えるゆえ、此度のことは寛大な気持ちで許してはくださらぬか」

「残念ですが、私は皇太子様から婚約破棄を言い渡されました。そのような侮辱をされ婚姻など結べません」

「どうか、どうか」
 国王陛下は貴族子弟の前だと言うのに恥も外聞もなく地面に頭を擦り付けて私に許しを乞うのである。

「残念ですが国王陛下様、私は家と私の名誉のためこの国に宣戦布告いたします」
 その言葉に会場は爆笑の渦に包まれる。唯一人国王陛下だけは自分達がすでに泥舟の上だと言うことに気がつき腰砕けになると杖を落とした。

 その様子を見ていた皇太子が私を怒鳴りつける。
「貴様、公爵家の分際で国王陛下に無礼な!」

「そうですね、私を傷つけたものは誰かわからない。そして皇太子の愚行を止める者もいなかった。つまりこの会場にいる者達は皆私の敵と言うことですね?」

 その言葉にまた会場が爆笑の渦に包まれた。

「発現:M4 PATRIOT」
 その鍵言葉ワードと共に私の手に電動エアガンが現れる。
 会場の人間は誰一人としてそれがなんなのかが分からない。

 私は銃をフルオートにすると会場にBB弾を放った。

 ”ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ”

 振動が私の体を揺らす。ドラムマガジンから供給される弾は無限とも思える量のBB弾をばら蒔く。
 360度クルクル周り銃から弾が出なくなるまで打ち続けると、BB弾は会場にいる人間をすべて吹き飛ばし失神させた。

「快感ですわ」
 我慢していた私の感情が溢れ。ガクガク震える国王陛下の横を通り開戦は明朝ですと告げ、私は会場を後にした。
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