冒険者狩りをしている青年の表稼業

雪鵠夕璃

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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編

【煌炎女王】

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「・・・いっつぅ。んだよ、今度はてめぇが俺の遊び相手になってくれんのか?」

ガヴォットは頭を押えながら立ち上がる。五代姫の一体である【煌姫リーゼ】の攻撃を受けてほぼ無傷に近い様子に、ユリセスはシエルに治癒を施していた手を止め、得物を構える。

「ふっ。頑丈な男だな。ならば、遠慮せずに斬り伏せてやる!!」

そういうとユリセスは【煌姫剣リーゼレイド】を地面に突き刺し、言葉を紡ぐ。

「かつて世界に君臨せし五代姫の一柱であり、煌炎の女王【煌姫リーゼ】よ。汝、偽りの仮面を捨て、真なる素顔を晒しだせ」

すると、地面に突き刺さる【煌姫剣リーゼレイド】が真っ赤な炎に覆い尽くされ、そして1振りの剣から二本の剣へと分離した。ユリセスはその二本の剣を握り、

「いくぞ、【煌姫双剣リーゼレイド】」

そう告げた。すると、その声に呼応する様に刀身の炎が威力を増す。

「・・・へぇ。お前も影使いと同類かよ。おもしれぇ、さっきは萎えちまったが、アンタは俺を萎えさせてくれんなよ!!」

ジャリッと地面を踏み蹴った音がし、

「--っ!?」

ユリセスの脇腹部分の鎧が砕け散る。そして、トンっと着地する音が背後から響く。ユリセスはすぐに背後を振り返ると、

「遅せぇよ」

「--かっ!?」

ドゴッと衝撃音が響き、今度はユリセスの鳩尾部分の鎧が砕け散った。あまりの衝撃に彼女の体が微かに揺れ--灰に変化した。

「--は?」

先程まで蹂躙を楽しんでいたガヴォットの頭に疑問符が浮かぶ。それも当然。数刻前まで嬲っていた獲物が突然、灰に変化したのだ。驚かない方が無理がある。そんな状況を把握出来ないガヴォットの背後、そこに殺気が生じた。ゾクリとした寒気にシエルは唾を呑み込む。普段のユリセスからは感じられない燃え盛るような殺気。その殺気は一つから二つ、否、さらに数が増加していく。その全てが最初に生じた殺気と同等。分身といえば簡単な話だが、優に百を超えた分身一つ一つに同等の殺気を生じさせるのは相当疲労するはずだ。簡単に出来ることではない。

「・・・へっ。真っ向勝負じゃ、俺に勝てねえと判断したって事か」

百をも超える殺気に全身を突き刺されている状態のガヴォットは状況を理解し、獰猛な笑みを浮かべる。

「どこからでも来いよ。全て払い落としてやる」

その一言と共にガヴォットの圧が増す。まるで重力によって体に負荷をかけられているような。シエルはそんな二人の動きから目を離さない。そして--


煌姫千刃こうきせんじん!!」

灰燼蒼雷かいじんそうらい!!」

灼熱の炎と蒼きいかづちが激突した。それらは木々を焼き、砕いていく。あまりの勢いに、吹き飛ばされないようにシエルは咄嗟に足に力を込めた。バチバチとぶつかり合う必殺の一撃。やがてその競り合いは終わりを迎えた。両消滅という形で。

「へぇ…結構楽しませてくれるじゃねえか」

ガヴォットは戦いを心の底から楽しむ様に笑う。その気味の悪さにユリセスは「仕方ないか」と呟き、覚悟を決めたかのようにリーゼレイドを地面に突き刺した。そして目を瞑り、

「美しき煌炎の城は女王の領域。この世の炎は女王の剣。そして--我が身は女王の依代となる」

言葉を紡ぐ度に、ユリセスの背後に煌炎の城が、炎の剣が次々と現れる。そして--

「顕現せよ、【煌炎女王リーゼ】!」

最後の言葉が紡がれ、日輪の様に無数の剣を背に浮かせた美しき煌炎のドレスを纏いし女王が降臨した。
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