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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
神使徒の力 ③
しおりを挟む『・・・て』
声が聞こえた。男なのか女のか分からない声。そもそもそれが人の声なのかも分からない。
『・・・きて』
さっきよりハッキリとした誰かの声。てか、俺死んだのか?死んだよな?【アグラスド・ヴェイン】に焼かれたよな?焼かれて死んだってことは、この声は神様の声か?天国にでも誘ってくれるのか? というかこの世界で俺が死んだら新しい転生者を呼べるって言ってたけど、それって俺は死体として元の世界に帰るってことか?
そんなの・・・
『起きてって言って--キャッ!?』
「ふざけんなよ!ク・・・痛っ!?」
そんな大声と共に、俺の視界を火花が散った。痛む額を押さえながら、衝撃の原因に目を向けた。
「・・・なんでお前が?」
俺の目の前にいたのは、ミリアーナの家にいるはずのシエラ。恐らく俺の居場所を調べてここに来たのだろう。てか、いま思い出したんが、俺焼かれたよね? 【アグラスド・ヴェイン】にお姫様と共に焼かれ・・・
「おい!シエラ! お姫様はどうした!?」
俺と同じように額をさするシエラに尋ねる。お姫様を盾にした俺が何言ってんだと思うもしれないが、こっちは別に身代わりにするつもりなんてなかった。てか、本当に神使徒が撃つとは思わないだろ。
「いたた…。お姫様ならそこに」
シエラが指さす方向に視線を向けると、そこでは--【アグラスド・ヴェイン】と対峙するお姫様がいた。
『我の邪魔をするか?レティリア』
【アグラスド・ヴェイン】は掌に浮かぶ黒い炎を脅すように見せびらかしながら、不機嫌そうに告げる。
「いいえ、違います!私は貴方様に人間を殺して欲しくないのです!」
お姫様は【アグラスド・ヴェイン】の問いに否定を告げる。だが、その返答に神使徒《あいつ》は納得するのではなく、呆れたと言わんばかりの表情で、
『・・・目障りだ、消えろ』
そう吐き捨てると共に、黒い炎をお姫様に向かって放った。高速で迫る黒い炎。触れれば身体が一瞬で灰になるほどの威力を持っているであろう炎。そんなものを防ぐ手がお姫様にあるのだろうか?
「アイツ、バカなのか!?」
お姫様に黒い炎を放った【アグラスド・ヴェイン】の行動に俺はそう叫んだ。まさか代々契約してきた神聖リディシア王国のお姫様を殺そうとするなんて。頭がおかしい!!
「【守盾眼】!!」
突然、お姫様が謎の呪文を叫んだ。すると、お姫様の右眼が蒼く輝き、自身を守るように巨大な盾が姿を現した。そして、お姫様へと向かって放たれていた黒い炎がその盾に触れた瞬間、元々その炎が存在しなかったように消滅した。
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