転生した俺、弱虫勇者の保護者(えいゆう)になりました

雪鵠夕璃

文字の大きさ
55 / 117
第一章:神聖リディシア王国襲撃編

【小さな太陽】 ユルゲン・アステイラ ③

しおりを挟む

激突する拳。クソ親父を殴ったのは初めてだ。それは恐れていたから。クソ親父の全てに。

太陽ムルクスノ右腕】は触れたものを焼き尽くす代物。普段は封印しているため、周囲のものを焼く心配はない。だけど、クソ親父への一撃は焼き尽くさんほどの威力を込めていた。無意識に近い。反射的に繰り出された【灼焔轟拳ジオ・バース】。これを受けて死ななかった魔獣はいなかった。竜だってこの拳の前には赤子と変わらなかった。だから--

「いっつぅ。少しチリっとしたな」

顔面に灼熱の一撃を受けたはずのクソ親父が、蚊に刺された程度の反応をしたことに絶句した。そして、衝撃。あまりにも強い一撃が俺の顔面を撃ち抜いた。歯が数本欠け、瞼が微かにしか開かない。どうやら、腫れてるらしい。通りで視界が見にくいわけだ。

「大したことねえなぁ、その右腕。何年経っても成長しないなんて情けねえぞ、馬鹿息子」

地面を蹴り、こちらへと高速で迫るクソ親父。避けようとする頃には手遅れ。鉄のように硬く重い拳の嵐が俺の全身を打つ。反撃や防御の暇は貰えない。一方的な暴力。やがて、拳の嵐は止まる。

「・・・ぅ」

意識は朦朧とし、見える世界が二重になっている。死は身近。あと少しで死は俺に訪れる。だけど、俺は諦めない。1回負けたならまた挑んで、それでもダメなら何百何千何万回と俺は立ち上がり挑む。

『負けを恐れるな。負けても死ななければそれでいい。死ななければ何度でも立ち上がり挑むことが出来る。だから、死ぬな』

恩師に言われた言葉。恩師から授かった意志。
クソ親父に処刑されてきた亡き国民達の無念をはらす為。 俺はこんな所で負けられない。偽物のクソ親父に勝てない時点で、本物のクソ親父に勝てるわけが無い。

これは、俺が国民達を救う物語の最初の1ページ。

これは、俺がスタートラインに立つまでの過程。

だから--死なない。いや、死ねない。

「・・・ぁ・・ぐ」

重りが乗っているかと思うくらいに重い身体を無理矢理起こす。少し気を抜くだけで、足がガクンとなり、倒れるだろう。それでも俺は諦めない。

「ぐっ・・・ラァァァァッ!!」

気合いの雄叫びを上げ、俺はクソ親父に反撃を開始する。

拳と脚を駆使した連撃。その動きは徐々に加速する。その連撃は、地を穿つ流星に近い。俺の持つ運動量をフル稼働することで可能となる技術の一つ、【流星乱穿レシド・セーノ】。万全の状態ならスピードもパワーも高いが、この状態の俺が繰り出せるスピードとパワーは本気の半分か、それ以下だ。

「そうだ!怒れ!憎め!俺に全てをぶつけろ!母親譲りの太陽ムルクスの輝きを黒く染めろ!愛なんて捨てろ!優しさなんて捨てろ!殺して奪って蹂躙しろ!馬鹿息子!!」

俺の連撃を全て躱しながら、クソ親父は笑い叫ぶ。声を聞く度に、頭を心をドス黒い【憎悪】が支配していく。【太陽ムルクスノ右腕】の美しい輝きはほとんど黒く染まっている。このままではクソ親父の思い通りだ。だけど、止まらなかった。いや、止めれなかった。この拳を。

「くたばれ!クソ親父ぃぃぃぃ!!」

黒い輝きを放つ【太陽ムルクスノ右腕】の一撃が、クソ親父の顎を打ちぬ--

「遅いな、馬鹿息子」

そんな声と共に、鮮血が舞った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

テンプレ最強勇者に転生したら魔女が妻になった

紡識かなめ
ファンタジー
七つの大陸、それぞれを支配する“七大魔女”── 魔力あふれる世界《アルセ=セフィリア》は、魔女たちによる統治と恐怖に覆われていた。 だが、その支配に終止符を打つべく、一人の男が立ち上がる。 名はルーク・アルヴェイン。伝説の勇者の血を引く名家の出身でありながら、前世はただの社畜。 高い魔力と最強の肉体、そして“魔女の核を斬ることのできる唯一の剣”を手に、彼は世界を平和にするという使命にすべてを捧げていた。 ──しかし、最初に討伐した《闇の魔女・ミレイア》はこう言った。 「あなたの妻になります。魔女の掟ですから」 倒された魔女は魔力を失い、ただの美少女に。 しかもそのまま押しかけ同居!? 正妻宣言!? 風呂場に侵入!? さらには王女や別の魔女まで現れて、なぜか勇者をめぐる恋のバトルロイヤルが始まってしまう!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...