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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
【煉火の華】キリカ・如月 ③
しおりを挟む「・・・ぁ」
私は言葉が出なかった。
なんで私は血にまみれている?
なんでこの男が死んでいる?
吐き気がした。嫌悪感がした。自分自身に。
「・・・ひぃうっ」
遅れて恐怖がやってきて、私はたどたどしい足取りで部屋を飛び出す。きっとこの時の私の顔はすごく醜かっただろう。口から漏れるのは嗚咽。どこに向かって走っているのかわからない。でも、あの場所には長くいられなかった。どれくらい走ったのか。恐怖に襲われている身体に限界が来た。強い衝撃に火花を散らす。顔を床にぶつけたのだから無理もない。
「・・・ぅあ」
綺麗に磨かれた床に両手を起き、立ち上がろうとして・・・止まる。まるで鏡のように綺麗に磨かれた床から目が離せない。ただ床の綺麗さに見惚れていたわけじゃない。そこに映る自分の顔から目を離せなかった。
自身の顔が可愛くて目が離せないとか。
自身の顔が美しいから目が離せないとか。
そんなくだらない理由ではない。
右眼が燃えていた。額の右にだけ角が生えていた。口元から覗く歯は牙のように鋭くなっていた。
それは、まるで、炎の鬼。
その時、ある御伽噺が頭をよぎった。
『炎鬼に愛された少女』と言う題名の御伽噺。
信用していた男性に裏切られた美しい少女が、炎の鬼に気に入られて、その炎の鬼に体を奪われるという内容。
きっと、これは運命。 徐々に侵食していく炎。私の身体を、心を炎が埋めつくしていく。
燃える。燃える。燃えていく。
人間としての確かなる証明が焼かれていく。
自分がここにいたという証明が焼き消えていく。
全てを諦めて、この運命を受け入れていた時、
「キリカ!?」
声が聞こえた。それは母の声。
その声が聞こえて、顔を上げる。その先に母がいた。そして、父が札を手にしていた。
「くっ、鬼に魅入られたか。少し苦しいが我慢しろよ、キリカ!!」
父は札を私の胸目がけて投げた。その札は綺麗に私の胸に張り付く。すると、全身から力が抜けた。支えにしていた両腕がカクンと折れ、床にうつ伏せで倒れる。そして次に襲ってきたのは、焼けるような痛み。胸の中心が熱い。全身に回っていた炎が胸の中心へと集まっているらしい。声が出せないほどの痛み。その中で、母と父を見ると、二人はとても辛そうな表情を浮かべていた。
そこまでの記憶。ここからの記憶はない。忘れたわけじゃない。意識を失っていた。
だけど、目が覚めた時に聞かされたのは、『黒銅熾調の死』と『自分の中に鬼がいる』という事だった。
それから数年経って、私は勇者候補に選ばれた。
勇者には言い伝えがあり、世界を救った際に願いを1つだけ神が叶えてくれるという。
だから--
「過去の亡霊が今になって私の邪魔をしないで!!」
こんな所でつまづいてる訳にはいかないのだ。
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