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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
【煉火の華】キリカ・如月 ④
しおりを挟む掴まれた拳の嫌悪感を振りほどく為に拳に灼熱の炎を生み出す。ボウッっと音をあげて黒銅熾調の手のひらを焼き、その痛みに掴む力を抜いた。それを見計らい、私は距離をとる。これで距離は元通り。次は油断しない。全力で挑む。
「力を貸して、【炎妃エレミラ】」
【煉火燐絶】を鞘から抜くと共に、心の中に潜む鬼を喚び覚ます。
そして現れたのは、
炎で作られたドレスを身に纏う、オレンジ色の髪に血のように赤い瞳をした少女。
『ふわぁあぁ。 寝てる時に喚ぶのはやめてって何度も言ってるでしょ』
その少女、エレノラは少し苛立ったように告げる。
「そんなことはどうでもいい。早く、力を貸して」
『はァ。相変わらず可愛くない。ホントに可愛くない』
エレノラは頬を膨らませながら、私の握る【煉火燐絶】に触れる。すると、刀身が燃える。その炎は次に私の背後で輪を作り始める。それは日輪。全てを焼き尽くす炎の輪。さらに変化は続く。額の右側に角が生える。牙が生える。右眼が燃える。
しかし、あの頃のように心を支配されることは無い。
「【炎妃燐天】」
そう呟くと共に、全身が炎と化した。これが私が鬼の力を掌握することで編み出した、【【炎妃燐天】と【炎妃エレノラ】の融合魔装【炎妃燐帝】。
全身を炎に変えることで、物理攻撃を無効化し、圧倒的な熱量で対象を灰塵と化すのに特化した魔装。
「くくく。昔から見込みはあると思ってたが、まさか鬼の力を手に入れていたとはな」
黒銅熾調は醜い姿のまま、笑った。
そして、
「融合魔装【黒屍卿】」
彼も融合魔装を喚び出し、身に纏った。黒いローブのようなまるで死神に似た魔装。その死神は、大鎌を構えて、
「久しぶりに遊んでやろう。来い」
もう片方の手で手招きする。
「昔の私とは思わない事だ。黒銅熾調」
炎に包まれた【煉火燐絶】を構え、突撃する。黒銅熾調が先程使用した瞬歩。あれは最初の頃に教えられた歩術。当然、私も使える。一呼吸と共に私は黒銅熾調の懐へと姿を現す。
とった!!
「--甘い」
黒銅熾調のその言葉と共に顔面に強い衝撃。それは膝の打撃。視界に火花が散る。更に続けて頭を掴まれ、壁へと投げつけられる。
なんで…
「掴めるのか、って顔してるなぁ? キリカ」
黒銅熾調は禍々しい闇に染った右腕を撫ぜて笑う。
「特別に教えてやるよ。こいつぁ、この世にある全てのものに干渉することの出来る腕。という事は、当然お前の魔装を掴むことも可能だ」
「くっ…!?」
私は壁に強打する際に炎化していた為、衝突のダメージはゼロ。1度、体制を整える。
「もう諦めたらどうだ? キリカ。昔のように先生と遊ぼうじゃないか?」
昔と同じ笑顔は--その笑顔の意味を、私は知っている。だから--嫌悪しか感じない。こんなやつが私と同じ人間だったなんて思いたくない。
だからここで、もう一度殺す。
「エレミラ、アレいくわよ」
わたしがそう語りかけると、それに応えるように刀に纏う炎が揺らめく。
これから繰り出すのは如月一族に伝わる秘技。【炎妃エレノラ】を従えるものにだけ扱うことの出来る剣技。
「・・・ぅ」
目を閉じ、深呼吸をひとつ。この耳に聞こえる全ての雑音を遮断。意識だけを研ぎ澄まさせる。風の音も地面をふむ音も、あの男の声も聞こえない。感じるのは気配だけ。
「煉火の舞、壱ノ型--」
刀を構える。燃え盛る炎を刀身の先端に集中させる。そして--
「【焔一閃】」
黒銅熾調めがけて斜めに振り抜いた。
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