転生した俺、弱虫勇者の保護者(えいゆう)になりました

雪鵠夕璃

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第一章:神聖リディシア王国襲撃編

化け物

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バケモノ対バケモノ。赤い絨毯の敷かれた床が爆ぜたり、壁が崩落する。鳴り止まない爆発音。その音を奏でるのは、二人のバケモノ。

「くははは!!さっきまでの威勢はどうしたよ!剣竜《そうりゅう》!!」

『--吠えるな、雑魚』

殺し合いを楽しむ【虚空創士ヴィレナズ】のアクトと、どこか落ち着いてる【剣竜】アグラスド・ヴェインが魔法を撃ち合う。その度に耳障りな衝撃音が奏でられる。魔法の打ち合いを初めて十分以上がすぎた。どちらも底知れない魔力の持ち主なのか疲労の表情が見られない。ただ、素人目で見てもわかるが、このままではどちらかが魔力切れを起こすまでの耐久戦になる。早く勝負は決まらない。

「ちっ。魔法の打ち合いじゃ埒があかねえ。こっからは近接戦だ!剣竜!!」

先に魔法攻撃をやめ、近接戦に切りかえたのはアクト。彼は、アグラスド・ヴェインが放つ何本もの炎剣を避けて接近してくる。やがて手の届く範囲まで距離が縮まり--

「もらったぜ!剣竜!!」

ギリッと拳を握り振り抜く。当たれば一溜りもない一撃。しかし、アグラスド・ヴェインは避ける動作をしない。アクトの拳が肌に触れる瞬間、アグラスド・ヴェインが動いた。回避動作ではない。

『--遅い』

ベギッという木をへし折るような音が廊下中に響いた。一瞬、何が起きたのかわからなかった。あの音は何だったのか? その答えは直ぐに公開された。

「・・・つぅ。さすが神使徒。俺の腕を大して力を込めずに簡単にへし折りやがった」

ダランと垂れる右腕を押さえながら、アクトは引きつった笑みを浮かべる。

『我に勝てないと理解したか? 雑魚』

アグラスド・ヴェインは表情を変えずに、強者の発言をする。今の神使徒《アイツ》は、リンゲルにフルボッコにされた時とは別人だ。恐らくというよりリンゲルが強すぎただけ。本当は強いのだろう。神使徒と呼ばれる存在だ。人間と神使徒では強さの基準が大幅に違う。

「ただ勝つだけじゃつまんねぇだろ?俺はこの時間を長く堪能してえんだよ。だからよお、もう少し前戯と行こうぜ!!」

アクトが告げる。片腕を折られたというのに、この余裕。まるで神使徒アイツに勝つ方法があるかのように。

『ふっ。これが前戯? 我にとってはこんなもの前戯にもならん。自惚れるな、雑魚』

アグラスド・ヴェインはそう告げ、アクトの懐に瞬間移動し、がら空きの腹部に連続で拳を打ち込む。あまりにも耳にしたくないような苦鳴と骨が砕けるような音が響き渡る。何十何百と叩き込まれる拳に為す術もないアクトはサンドバッグ状態。

『--終わりだ』

強烈な一撃をま下から上へと打ち込み、アクトを浮かせたアグラスド・ヴェインの右拳が黒い焔に包まれる。 そして--

『【獄葬焔拳刃インフェ・ヴィジェグ】』

アクトの腹部に打ち込まれた。すると、対象物に触れた事で黒焔が細かな刃へと姿を変え腹部を斬り裂き始めた。

『その刃は対象に触れる事でそいつの内部へと侵入し、臓器をズタズタに斬り裂く獄焔魔法だ。泣きわめくのは構わんが、喚けば喚くほど死は早くなるぞ』

アグラスド・ヴェインは先程使った魔法を説明する。あまりにも恐ろしく残酷な魔法だ。さすがに腹部を貫かれても生きていたアクトでも死ぬだろう。

「・・・うぐぅ…いぎゃぁ…は、はははっ。ははははは!!んだよ、こりゃあよ!めちゃ痛え!!はははっ、はははははははははは!!」

とち狂ったのか(?)アクトが突然、笑い声を上げた。痛みによる作用で頭がおかしくなったのだろう、。あまりにも不気味だ。今も臓器を斬り裂かれている状態だと言うのに。なぜ、笑っているんだ、こいつは。

「・・・気持ちわりぃ」

『不覚にもお前と同じ感情を抱くとはな、アクツ・エイタ』

俺の口から零れた言葉に、実に残念そうに告げるアグラスド・ヴェイン。 

余計なお世話だ、と心の中で毒づく。

「ところで、俺に構ってる暇あんのか? アイツなんかしてんだけど」

何故かこんな状況下で冷静でいる自分に軽く驚きながら、アクトを指さす。

「くはははっ! 俺もとっておきの一発をくれてやんよ!!」

両手から色違いの立方体を大量に生み出しながら笑う。その立方体は徐々に形を変えていく。ペキパキと乾いた音をあげながら。

「--完成だ」

そう告げるのと同時に、色違いの立方体が巨大な長銃へと姿を変えていた。大きく暗い銃口が俺とアグラスド・ヴェインを捉えている。

『初めて見る魔法だ。ぜひ見たいものだ』

アグラスド・ヴェインは焦るわけでもなく楽しそうに初めて笑みを浮かべた。

「あぁ、お望み通り見せてやるよ!!」

アクトが手を空にかざし、

「穿て!【空穿弾アド・ヴィーネス】!!」

地に向けて振り下ろした。

そして、それと同時に--蒼い光の奔流が、俺とアグラスド・ヴェインめがけて放たれた。
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