上 下
94 / 117
第一章:神聖リディシア王国襲撃編

休みと誓い

しおりを挟む

「さて、後は兵士達が玉座の間に来るまでここで待ちましょう」

「はい。それと姫様はお休みしていてください。周囲は私が警戒してますので」

リレウは私にそう言って、【奇跡剣アロンフェグラル】の柄に手を添え、いつでも抜剣できる様にして、返事を聞かずに周囲の見回りを始めた。

「・・・ありがとう。休ませてもらうわね」

私はそう小さく零して、はぅー、と息を吐いた。されに伴って、情けない事に緊張の糸が途切れヘタリと座り込む。両手が震えている。それは無理もない。あんなにも痛い目にあい、お父様を失ったのだ。こんな戦争みたいなことにまさか自分が予期せぬ参加をするとは思わなかった。
  普段は城内に敵が侵入することなんて事はなかった。いや、そもそも有り得なかった。私達の国には、賢者様や審判神様、神使徒様、最強の騎士団がいる。この防御の壁をそうそう容易く抜け出すことは出来ない。

だから、今回の出来事は国にとって初めてのイレギュラー。

こんな事ができるのは、我が国に内通者がいない限り不可能。

「でも、誰が・・・」

この国の人々は皆優しい心を持っている。だからそんなことありえない。自分が暮らす国を敵に売るなんて。信じたくない。裏切り者がいるなんて。だけど、それ以外に思いつくことがなくて、国民を信じるといいながら、信じれていない弱虫な自分に嫌気がさす。

「はぁ。とりあえず内通者がいることも仮定して、皆が揃った後に襲撃者達の対処を考えなくては」

私はそう一言呟いて瞼を閉じた。少しでも寝ておかなければ身体がもたない。今はリレウが周囲を見回っている為、少しでも体を休めることが出来る。

「おやすみなさい、リレウ」


そう言い残し、私の意識は微睡みへと呑まれた。そして、周囲の見回りを一通り終え、異常がなかったことを報告しにちょうど戻ってきたリレウは穏やかに眠る自分の主の姿を見て、

「貴女の笑顔だけは守ってみせます。この剣と世界神ユノグリア様に誓って。必ず」

と、世界神ユノグリアと奇跡剣アロンフェグラルに再度誓った。
しおりを挟む

処理中です...