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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
いつだって自分自身の為に
しおりを挟む「あ、そうえば、忘れてたんだけどさ。アンタの契約者様が死にそうみたいなんだけど助けに行かなくていいの?」
肩もみで気持ちよさそうにしていたエイルが思い出したかのように俺に尋ねる。因みに契約者というのはシエラの事で、死にかけているということは試練の最中ってことなのだろうか。なんか冷静に考えてしまったが、死にそうってことは俺の命も危ういってことでは?え?それ・・・やばくね!?
「おま!そういうことはもっと早く言えよ!肩もみさせてる場合じゃねえだろ!?」
相変わらず気持ちよさそうな顔でぽわぽわしてる癒しの聖霊様に俺は怒鳴る。どう考えても和んでる場合では無い。とてつもない一大事だ。
「と言われてもねぇ。今ここにいるのはアンタとリュエルしかいないわけで、こんな雑魚パで挑むとか、ラスボスにレベル1で挑むようなものよ?」
エイルの言葉に何も言い返せない。ド正論すぎる。俺はRPGで言う所の村人みたいな雑魚さで、リュエルに関しては病み上がりだし戦闘力も俺よりはあるけどそこまでな気がする。それに、エイルは癒しの聖霊で攻撃向きではない。よってこの編成では必ず負ける。正直、詰んでいる。オマケに先程のように憑依とでも言うのだろうか?あの力は自分の意思でポンポンと出せるもんではない。というかアレに頼るのはなんでか分からないが危険な気がする。そもそも賭けのようなものだし、アテにもならないが。我が家の家訓に『賭け事は死んでもするな』というものがある。よく50パーセントなら半々で賭ける価値はあると言う人もいるが、俺からしたら単なる馬鹿だ。半々?アホか。半分もデメリットの確率があるんだぞ?なぜ、それで賭けに出る?それに99パーセントならいけるだろ?って。これもアホだ。1パーセントデメリット確率があるのだ。何があるか分からない。よって、必ず手に入る100パーセント以外はクソだ。
「まぁ、そんなわけで私たちは詰んでる状態。よって、助けに行っても足でまといだし、祈っても無駄だし、足掻いても無駄。でも、契約者が死ぬと主も死ぬ。なので、アンタの中に眠る【戦技】を司る聖霊の力を擬似的にだけど肉体に覚えさせる。但し、私が許可しない限りは使用しないこと。もし、許可なく使用したら--」
「…したら?」
「死ぬ。私達、聖霊の力は今のアンタじゃ、一度に複数は使えない。よって、擬似的に起動した【戦技】と【治癒】を同時に召喚出来ない。それに擬似的という事は正式な召喚ではない。要するに、アンタの意思で起動させたら最後、私とアンタを繋ぐゲートは閉ざされ、擬似的【戦技】の力の代償で損傷する全生命機能を治癒することが出来なくなる。でも、私の許可ありで起動すれば、私が戦技と自分の回路の連結を切り替えることが出来る」
エイルの説明に俺は唾を飲み込む。確かに彼女の言う通り、正しい行程がない時点で、擬似的【戦技】の力に大きなデメリットがあるのは想像できた。しかし、余りにもそのデメリットが大きすぎた。
「強大な力を得るには、大きな代償が付きモノってことか…」
俺は苦笑する。きっと前までの俺なら醜く喚いていただろうに、今は何故か冷静だ。何度も死にそうになった事も相まって、嫌々でも適応してきたのだろう。まぁ、まだ体は死に振るえているが、武者震いとでも思い込むことにする。
「そんじゃ、もう行く?」
エイルが立ち上がり、俺を覗き込むような体勢で尋ねる。その質問に俺は--
「あぁ、行こう。アイツを助けるためじゃなく、あくまで俺の命を守るために」
答えた。
助けるなんてらしくない。救うなんてらしくない。 俺はアイツの勇者でも英雄でも救世主でもない。
だから、この行為は自分自身の為だ。
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