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第二章 すれちがいの、その先に
まっすぐって、まぶしい
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4月中旬。
部活の仮入部期間も終わり、正式入部が決まったころ。
体育館のバスケコートでは、憧子が初めての練習に汗を流していた。
「はい、パス!」
「……っ!」
憧子は受け取ったボールを素早く返す。
中学では引退していたけど、体が少しずつ思い出してきていた。
ふと、コートの外から視線を感じた。
見ると、和真がグラウンドの帰りらしく、汗だくのユニフォーム姿でこっちを見ていた。
目が合うと、ニッと笑って、親指を立てる。
(……見てたの? ちょっと恥ずかしい……)
でも、なぜだか、うれしかった。
***
放課後。
昇降口で靴を履いていると、和真が声をかけてきた。
「おつかれ、今日のバスケ、かっこよかった」
「えっ、そんなこと……ないよ」
「あるって。ボール運び、すごいスムーズだった」
「ありがとう……」
憧子の心臓が少し速くなる。
「てかさ、俺、LINEまだ聞いてなかったよね?」
「えっ?」
「え、ダメ?」
「ううん……いいよ」
ふたりでスマホを出し合い、QRコードを読み取る。
(……こんな風に誰かと交換するのって、なんか変な感じ)
それでも、和真のまっすぐな目がまぶしくて、画面の中で通知が鳴った瞬間、心が少し跳ねた。
***
そのころ、美術室では。
「……でさ、その和真ってのが、最近よく憧子のとこに来てんだよ」
筆を動かしながら、航太がぽつりと言った。
隣の席の男子が、「へえ~、気になるわそれ」と軽く返す。
「ま、どうでもいいけどな」
(……どうでもよくなんか、ないだろ)
言葉と心が、かみ合わない。
筆先がにじんで、花の色が少し濁った。
***
一方そのころ、音楽室。
「先輩っ、楽譜、これですよね? あ、違いました!? ごめんなさいっ!」
陽菜は部活でも大忙し。
入部早々、本田先輩のいる吹奏楽部に飛び込み、あの手この手で接近中。
「橘さん、落ち着いて」
「はいっ、すみませんっ、でも先輩がかっこよくて……あ、違います、そういう意味じゃ……!」
「そういう意味だよね?」
「はい!」
吹奏楽部の仲間たちに笑われながらも、陽菜はまったくへこたれない。
(恋って、体力勝負!)
なんて思いながら、譜面台を抱えて走っていった。
***
それぞれが、それぞれの場所で。
恋に、部活に、勉強に。
大忙しで、ちょっとだけ切なくて、でもどこか楽しい――そんな、春の始まりだった。
部活の仮入部期間も終わり、正式入部が決まったころ。
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「はい、パス!」
「……っ!」
憧子は受け取ったボールを素早く返す。
中学では引退していたけど、体が少しずつ思い出してきていた。
ふと、コートの外から視線を感じた。
見ると、和真がグラウンドの帰りらしく、汗だくのユニフォーム姿でこっちを見ていた。
目が合うと、ニッと笑って、親指を立てる。
(……見てたの? ちょっと恥ずかしい……)
でも、なぜだか、うれしかった。
***
放課後。
昇降口で靴を履いていると、和真が声をかけてきた。
「おつかれ、今日のバスケ、かっこよかった」
「えっ、そんなこと……ないよ」
「あるって。ボール運び、すごいスムーズだった」
「ありがとう……」
憧子の心臓が少し速くなる。
「てかさ、俺、LINEまだ聞いてなかったよね?」
「えっ?」
「え、ダメ?」
「ううん……いいよ」
ふたりでスマホを出し合い、QRコードを読み取る。
(……こんな風に誰かと交換するのって、なんか変な感じ)
それでも、和真のまっすぐな目がまぶしくて、画面の中で通知が鳴った瞬間、心が少し跳ねた。
***
そのころ、美術室では。
「……でさ、その和真ってのが、最近よく憧子のとこに来てんだよ」
筆を動かしながら、航太がぽつりと言った。
隣の席の男子が、「へえ~、気になるわそれ」と軽く返す。
「ま、どうでもいいけどな」
(……どうでもよくなんか、ないだろ)
言葉と心が、かみ合わない。
筆先がにじんで、花の色が少し濁った。
***
一方そのころ、音楽室。
「先輩っ、楽譜、これですよね? あ、違いました!? ごめんなさいっ!」
陽菜は部活でも大忙し。
入部早々、本田先輩のいる吹奏楽部に飛び込み、あの手この手で接近中。
「橘さん、落ち着いて」
「はいっ、すみませんっ、でも先輩がかっこよくて……あ、違います、そういう意味じゃ……!」
「そういう意味だよね?」
「はい!」
吹奏楽部の仲間たちに笑われながらも、陽菜はまったくへこたれない。
(恋って、体力勝負!)
なんて思いながら、譜面台を抱えて走っていった。
***
それぞれが、それぞれの場所で。
恋に、部活に、勉強に。
大忙しで、ちょっとだけ切なくて、でもどこか楽しい――そんな、春の始まりだった。
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