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第三章 揺れる、夏の光の中で
重なる気持ち
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美術室の窓からは、夏の日差しがまぶしく差し込んでいた。
絵の具のにおいと、扇風機の回る音だけが、静かに流れている。
「こっち、どう思う? ちょっと色、濃すぎ?」
陽菜が筆を止めて、キャンバスを航太に見せる。
「んー、でも陽菜の色づかい、俺は好きだけどな」
「え、ほんと? うれしー!」
陽菜はくるっと振り向いて、無邪気に笑った。
(……その笑顔、やっぱり、好きかもしれない)
気づけば、航太は陽菜といる時間がいちばん自然で、落ち着いていた。
最初はただの部活仲間。
けれど、陽菜の明るさ、まっすぐさに、だんだんと心を引き寄せられていった。
美術部のスケッチ旅行の話をしながら、二人で中庭のベンチに座っていたとき。
航太は、ふと口を開いた。
「……なあ、陽菜」
「ん?」
「最近、なんか、気になるんだよ。……陽菜のこと」
一瞬、風が通り過ぎる。
「前までさ、憧子に気持ちが向いてて、それがうまくいかなくて……。でも、陽菜といると、不思議と落ち着く。お前の笑ってる顔、……好きだって思うようになった」
陽菜は、一瞬ぽかんとしたあと――
にっこりと笑った。
「うん。……わたしも、同じ気持ちだよ」
その笑顔は、どこまでもまぶしくて、やさしかった。
「だから……よかったら、
陽菜、俺ともう一度、
付き合って下さい!」
「……うん」
二人の間に、照れくさい沈黙が流れる。
でも、言葉がなくても伝わる何かが、たしかにあった。
やわらかい風が、二人の間をふわりとすり抜ける。
長い長い、夏の午後――
少しずつ始まっていた、新しい恋の予感が、ようやく形になった。
絵の具のにおいと、扇風機の回る音だけが、静かに流れている。
「こっち、どう思う? ちょっと色、濃すぎ?」
陽菜が筆を止めて、キャンバスを航太に見せる。
「んー、でも陽菜の色づかい、俺は好きだけどな」
「え、ほんと? うれしー!」
陽菜はくるっと振り向いて、無邪気に笑った。
(……その笑顔、やっぱり、好きかもしれない)
気づけば、航太は陽菜といる時間がいちばん自然で、落ち着いていた。
最初はただの部活仲間。
けれど、陽菜の明るさ、まっすぐさに、だんだんと心を引き寄せられていった。
美術部のスケッチ旅行の話をしながら、二人で中庭のベンチに座っていたとき。
航太は、ふと口を開いた。
「……なあ、陽菜」
「ん?」
「最近、なんか、気になるんだよ。……陽菜のこと」
一瞬、風が通り過ぎる。
「前までさ、憧子に気持ちが向いてて、それがうまくいかなくて……。でも、陽菜といると、不思議と落ち着く。お前の笑ってる顔、……好きだって思うようになった」
陽菜は、一瞬ぽかんとしたあと――
にっこりと笑った。
「うん。……わたしも、同じ気持ちだよ」
その笑顔は、どこまでもまぶしくて、やさしかった。
「だから……よかったら、
陽菜、俺ともう一度、
付き合って下さい!」
「……うん」
二人の間に、照れくさい沈黙が流れる。
でも、言葉がなくても伝わる何かが、たしかにあった。
やわらかい風が、二人の間をふわりとすり抜ける。
長い長い、夏の午後――
少しずつ始まっていた、新しい恋の予感が、ようやく形になった。
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